Vegyn – The Path Less Travelled
2024.02.08.
Posted on 02.08.24
Posted on 02.08.24
Posted on 02.07.24
Posted on 02.07.24
イタリアンヴォーグの最新号が届きました!
とても美しく素晴らしい表紙です。
モデルはイタリア人の若手女優,Benedetta Porcaroliです。
右側に光跡がありますが、これはデジタル処理ではなくアナログな手法であえて光跡を作っているのでしょう。
どこかヒューチャリスティックなイメージのスタイリングに、背景や光跡などを巧みに操ってノスタルジーなムードを漂わせています。
本当に素晴らしい。
もしお時間のある方は、これらの写真をSNSを見る時のように一瞬だけ見て流すのではなく、それぞれの写真を注意深く観察してみてください。
そうすることで感性というのは磨かれていくものだと思っています。
一瞬一瞬を見流すだけで、自身の糧にすることはとても難しいです。
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先日、センス抜群の素晴らしいセレクトショップを経営されているお客様から教えてもらったのですが、久々に関西の重鎮みたいな(ファッションの)トップスタイリストの方とお仕事する機会があったらしく、その時に最近面白いお店や気になるようなお店があるか聞いてみたらしいです。
そしたら、その方は最近は薄っぺらいお店ばかりだと言っていたそうです。
こだわりを持ってやっていたお店も、時代の流れとともにその軸がブレていっているところばかりだと。
僕も最近のお店事情には全く詳しくないですが、そんな気がしています。
でも、とても残念なことに、そんな薄っぺらいお店の方が流行ってしまうんですよね。。
だから、こだわり持って続けているようなお店も、どんどん軸がブレていくのだと思います。
欲を出し過ぎずに、自分の本当に良いと思うことだけ信じて続けてる方が、今来てくれている顧客様と長期的な付き合いができると思うし、絶対そっちの方がカッコイイと思うんですけどね。個人的には。
当店に来てくださっている10代~20代の若いお客様達には、強制的に本誌をお席に用意している雑誌の中にしれっと忍び込ませておこうと思います笑
ということで、本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ!
Posted on 02.06.24
Posted on 02.04.24
Posted on 02.04.24
Posted on 02.03.24
Posted on 02.03.24
Posted on 02.02.24
先日発表されたジョン・ガリアーノによるMaison Margielaの2024 アーティザナル・コレクションが素晴らしかったのでご紹介させていただこうと思います。
今でも神格化されるほどの創業者デザイナー,マルタン・マルジェラが去り、その意志を継ぐデザインチームによって継承されていたマルタンイズムの中に、ジョン・ガリアーノがクリエイティヴ・ディレクターとして加入したのが今から10年前の2014年。
それからモード界もメゾン・マルジェラも、そして世の中も大きく変貌しました。
今、日本においても、そのブランドを手掛けているデザイナーを知らないで洋服やバッグを買う層が以前に比べてかなり増しています。
大部分と言っても良いかも知れません。
街でもマルタンの名作,Tabiブーツや、その派生系みたいな靴を履いている方をよく見かけます。
それらの方の多くが、そのデザインが生まれた背景についてなんて知らないでしょうし、そもそもそこまで知りたいなんて思わないでしょう。
でもそれを自身が買ったことはSNSとかに載せている方も多くいると思いますし、それが“メゾン マルジェラ”の人気商品であることに購買意欲を増す方が多いのでしょう。
それはマルジェラだけじゃなく、もともとモードが好きな人しか買っていなかったであろうバレンシアガやセリーヌ,その他諸々のラグジュアリーブランドでも同じような現象が起きています。
モードの世界は、SNSの普及や資本主義社会の拡大によって、その価値観と美学を愛する人達が憧れる存在から、一気にマス層へと浸透していきました。
その弊害は色々なところに出てきています。
世の中も、人の思考も、とても薄っぺらいものになってきているなと感じます。
モード界さえも目先の売上に魂を売りました。
僕自身も以前よりもモードに対する興味は少し薄れ、限定的なものとなってきていましたが、そんな時に今回のガリアーノのショーを観て、「モードってこういうものだったよな」って久しぶりに思いました。
ガリアーノはもともと、Diorのデザイナーとして素晴らしいコレクションを発表していました。
現在、モード界にいる全てのデザイナーの中でガリアーノを超える才能を持つデザイナーがいるのか?と問われたら、そんなに多くの名前は挙がらないでしょう。
もしかしたらナンバーワンかも知れません。
ある日の夜、酔っ払った彼はユダヤ人を差別する発言をしてしまいました。
今のようにSNSの普及していない時代でしたが、その様子が記録された映像は関係者の目にも留まり、ガリアーノはDiorを解雇されました。
それから数年後、モードの世界から追放されて粛々と生きていたガリアーノに救いの手を差し伸べたのはアナ・ウィンターだったそうです。
モード界に強い影響力を持ち、顔の広い彼女は、懸命にガリアーノのデザイナー復帰を手助けしました。
ガリアーノの才能をこのまま眠らせておくのは、何よりの損失だと思ったのかも知れません。
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今のモード界は、これまでモードを見てきた目の肥えた人達から見るとガッカリさせられるような状況です。
それは経営陣以外の、モード界の中枢でクリエイティヴに関わる人達は声には出さないけど多くの人が感じていることだと思います。
そんな人達にとって、今回のガリアーノによるショーは、“モードな人達”の渇いた心に久しぶりに感動を与えてくれるような素晴らしいものでした。
モードという精神が窮地に立たされた今、一度はモードの世界から追放された人物が今度はそれを見事に救ってくれたような気がしました。
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ガリアーノが描く少し歪んだ美的世界観。
今まで見たことのない美しいシルエットの洋服、振付師,パット・ボグスラウスキーによって監修されたモデルの演技のようなウォーキング、まるで陶器のようなメイク、ゴシックで不穏な気配を漂わせるスモーク、ショーの空気を彩る音楽、細部まで作り込まれた素晴らしいロケーションと映像のフレーミング…
息を呑むとは、まさにこのことです。
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こんなデザインの服、街で誰が着ますか?
こんなメイクや顔に誰が憧れますか?
でも、これこそが正真正銘のモードなんです。
ルブタンとコラボしたTabiブーツはきっとセレブ達のSNSには登場するのでしょうけど、ガリアーノ自身が見てほしいのはきっとそんなところではない筈です。
今は、このショーの素晴らしさが理解できるような人の感性の方が片隅に追いやられて、ルブタンのTabiブーツを買ってSNSでアップする人やマルジェラの四つ打ちステッチの入ったアイテムをこれ見よがしに上げる人の方が“オシャレ”と一般の人には認識されてしまうような世の中ですが、このガリアーノのコレクションがそんなつまらない世界を変えるきっかけになってくれることを願っています。
Posted on 02.02.24
Posted on 02.02.24
Posted on 02.01.24
Apple Music playlist “v:olta”を更新いたしました。
少し不吉な2024年の始まりでしたが、月日は常に流れていきますし、僕達は日々前に進み続けなければなりません。
ということで、今月は元気の出るようなロックな楽曲を先頭に持ってきました。
でも、僕は年齢的な若さをとっくに失っているので、次の2曲目はいきなり休憩モード。
で、3曲目はまたボチボチと頑張りますか、という感じで繋げているので、そのあたりの部分も一緒に体感していただければ幸いです。
Posted on 01.31.24
Posted on 01.31.24
Posted on 01.30.24
昨日のお休みは、ヴィム・ヴェンダース監督の新作『PERFECT DAYS』を観に映画館へ行ってきました。
今作の制作の背景には、ユニクロでお馴染みのファーストリテイリング社の柳井康治氏が発起人となったプロジェクト, THE TOKYO TOILET (以下,TTT)があります。
TTTは、渋谷区にある公共トイレを世界的な建築家やクリエーターにデザインを依頼して、それぞれの視点でリニューアルされている公共プロジェクトです。(現在までに17ヶ所が完成)
これらのトイレには専門の清掃員がいます。
「その清掃員を主人公にした短編映画を撮ろう」
そこからこの企画は産まれ、監督としてヴィム・ヴェンダースにオファーを出したそうです。
今作の主人公,役所広司さん演じる平山(小津安二郎の名作『東京物語』で笠智衆が演じた主人公と同性)の仕事はトイレ清掃員。
正直、このプロジェクトの背景を知った時は、エリートで裕福な大手企業や自治体が協賛した映画なんて分かりやすくて薄っぺらいものにされているんじゃないか(色々と協賛企業から変なお願いされたりetc…)とヴェンダースを心配しましたが、そこはさすがはヴィム・ヴェンダース、素晴らしい作品を完成させていました。
一人のトイレ清掃員の特に何も起こらない日常を通じて、人生における哲学を投げかけています。
しかも小難しい作りではなく、普段邦画やエンタメ作品に慣れ親しんでいる日本人にも観やすい作品に仕上げているのは、本作でヴェンダースと共に共同脚本を手がけた高崎さんを始め日本人スタッフの参加がプラスに働いている部分なのだろうなと思いました。
この映画で、ヴェンダースは“木漏れ日”というワードをひとつのテーマにしていました。
「森林などの木立ちから太陽の日差しが漏れる光景」を指すこの言葉は、翻訳して表すのがとても難しいらしいです。
樹木に風が吹き込めば、枝や葉が揺れ、地面に映し出される影と光は細やかに交差します。
僕が住んでいる大阪市西区地域はとても住みやすく、近隣にも安心して子供を遊ばせることができる公園がたくさんあります。
天気の良い日には、そこにはたくさんの子供たちやその保護者の姿があります。
しかし、その同じ空間にいても、本作の主人公のようなトイレ清掃員のことや、そのベンチに佇んでいるホームレス風の人物のことをどれだけの人が気にかけるでしょうか?
中には、小綺麗にしている自分達とは住んでいる世界が違うのだと、どこかで線引きする気持ちを持ったりしている人もいるのではないでしょうか?
僕自身も、それなりに安くない金額をいただいて、ヘアデザインを楽しんでくださる比較的恵まれた環境のお客様を相手に仕事させていただいているという現実の中で暮らしています。
自分の趣味も、ファッションやアート、映画や音楽など、購買意欲を強く刺激されるようなものが多いです。
本作の主人公,平山の趣味は、読書と音楽鑑賞,フィルムカメラで、自分にも共感する部分が多かったですが、それらを満たす為には古本屋の100円文庫と安物のコンパクトカメラ,そして随分昔に買った好きなアーティストのカセットテープで十分でした。
とても質素ですが、それでも十分に満足できる暮らしにも思えました。
自分の考え方や暮らしにも、多くの矛盾を突きつけられているようでした。
僕は現代において、今の10代後半~30歳くらいの若い世代の子達が(大衆的ではない)カルチャーに益々興味を持たなくなっているように感じているのですが、それはただ単に彼らの近くでそれらの存在を伝えられるような環境が少なくなっているだけなのかも知れません。
自分自身もネットで本を注文することも増えましたが、それでもやはり週に一回は本屋に行くようにしています。
それは、ネットだと自分のテリトリの情報しかキャッチできない時が多いからです。
本屋に行くと、グルリと見て回るだけでも、新しく発見できるものが毎回必ずあります。
本作のタイトルである『PERFECT DAYS』は、ルー・リードの名曲“Perfect Day”から取られています。
作中では、他にもパティ・スミスの“Redondo Beach”など、主人公,平山の性格やセンスの良さが垣間見れるような素晴らしいプレイリストが構成されています。
本編を通じて主人公の生き方やこれまでの人生のバックグラウンドを観客に理解,想像させてのラストシーン、目に涙を溜めながら必死で笑おうとする平山の表情の長回しには、とても考えさせられるものがありました。
作品を観終わって、売店でパンフレットを買って、僕はエレベーターに向かわずに誰も使っていない階段を使って下へ降りました。
涙が今にも流れそうに込み上げてきていたからです。
階段まで何とか泣くのを我慢できて安心したのか、溢れてくる感情が涙となって現れてしまいましたが、僕は階段を降りながらラストシーンの平山を見習って他のパーツで必死に笑顔を作り、一階に辿り着く頃には何事もなかったかのように道行く人に溶け込み、ひとり静かに帰宅しました。
少しでも多くの現代人に観てほしいと思う作品でした。
まだご覧になられていない方は、ぜひ映画館で観てみてください!