Posted on 01.20.21

先日の休みにギャスパー・ノエの新作『ルクス・エテルナ 永遠の光』を観てきました!

 

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このテの映画は、ここ大阪ではお客さんあまり入らないだろうなと思いつつも、上映している映画館が家から自転車で10分もかからない場所だったので、直前まで鑑賞しようと思ってた上映時間のネット予約画面で座席の埋まり具合をくまなく確認していたのですが、結局同じスクリーンで観たのは4人だけでした。

 

作品自体も1時間と短いです。

 

本作は、サンローランのクリエイティヴ・ディレクター, アンソニー・ヴァカレロが「様々な個性の複雑性を強調しながら、サンローランを想起させるアーティストの視点を通して現代社会を描く」というコンセプトのもとスタートさせたアートプロジェクト『SELF』の第4弾でもあります。

 

鑑賞前の事前情報で「激しい光の点滅に注意」というのを得ていて、映画の中で無茶苦茶しまくるギャスパー・ノエのことだから極度の心配性の僕は相当に警戒して、まさかのサングラス持参(鞄の中にそっと忍ばせる)で向かいました。

ちなみに昔、マイ・ブラッディ・バレンタインのライブに行った時は、直前にハンズで耳栓を買って行きました。

 

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冒頭 、ベアトリス・ダルとシャルロット・ゲンズブールの会話から始まります。

カットは2分割に分かれ、撮影舞台裏のドキュメンタリーのようなストーリーは次第にカオスと化していきます。

 

パンフレットにあるような、十字架に磔にされたシャルロットが火炙りになる描写は、カール・ドライヤーの『怒りの日』から引用されています。

僕は“カールドライヤー”と聞いて、クルクルドライヤーの形状よりもカール・TH・ドライヤーのことが頭に浮かぶ少数派の美容師なので、劇中に『怒りの日』の映像が使われているのはすぐにピンとくることができました。

 

そして、映画は終盤のクライマックス、光と音の洪水が観る者を攻撃してきます。

僕は『ポケモン』の映画は観ていないですが、当時社会問題になってたピカチュウの光の点滅がロールプレイングゲームの序盤の村に出てくるボスだとするなら、本作は文句なしにラスボス級です。

 

 

光の点滅が始まって、僕より後ろの座席に2人座ってることもあって、さすがに用意していたサングラスをかけだしたのを見られたら、僕ならそんな人がいたら息を殺して爆笑してしまうと思うので最後まで使うことはできなかったのですが、それでも「これで明日以降体調悪くなったら」とか心配してしまう僕は、片手で目元を覆いながら座席の中でズルズル下の方にしゃがみながら丸くなって、全盛期のマッチが“ギンギラギンにさりげなく”を歌ってる時みたいなポーズ(あくまでイメージなので全然違うかも知れないですが)でなんとか無事鑑賞できました。

 

 

ラストの畳み掛けるような光と音の中、映し出されるシャルロット・ゲンズブールの映像は、苦悩を超越して、高揚感すら感じる美しいものでした。

 

しかもビックリすることに、こっちはサングラスせずにギンギラギンしながら観てるのに、劇中の激しい点滅を浴び続けているシャルロットはいつの間にかサングラスかけてる!

(ズルいぞ、シャルロット!)

 

帰りは、「ギンギラギン・ポーズ」で鑑賞してた人だと失笑されないように、マフラーで顔の2/3をグルグル巻きにしてから席を後にしました。

ここでもサングラスかけようかと一瞬考えましたが、もし万が一、僕の行動の一部始終を見ている人がいたら、さんざん辛そうな姿勢で耐えてた人がここで今さらサングラスかけるのは究極の笑ってはいけないシチュエーションになってしまうと思うので、結局最後までサングラスは使わずに帰りました。

 

 

ギャスパー・ノエの作品はいくつか持ってますが、映画館で鑑賞したのは今回初めてでしたが、映画館で観た方がその漲るエネルギーを全力で体感できるのだなと思いました。

 

ご興味のある方は、ぜひチェックしてみてください!

 

 

年末のご挨拶

2020.12.30.

Posted on 12.30.20

みなさま、本年もV:oltaをご愛顧いただき、まことにありがとうございました!

 

今年は、新型コロナウィルスがあって、今まで経験したことがない本当に大変な一年となりました。

ですが、同時に美容師をしてて、V:oltaを経営してて本当に良かったと、今までで一番思うことができた一年でもありました。

 

そう思わせてくださったのは、V:oltaに通ってくださる顧客の皆様でした。

普段、美容室でシャンプーなどの商品を買わない方が、急に「おすすめのシャンプーとかないですか?」と聞いてくださったり、いつもトリートメントされない方でも「髪の毛のパサつきが気になるからトリートメントもお願いしたい」と言ってくださったり、(お客様が本当にそう思ってたタイミングだったのかも知れないですが)その時はこちらもその解決法を考えるのに一生懸命で、その少しでも助けてくれようとしてくださってる顧客様の気遣いのお気持ちに全然気付かなかったのですが、今考えると、たくさんの救いの手を差し伸べていただいてたのだと思います。本当にありがとうございます!

もちろん、V:oltaに通ってくださることが何よりもありがたいことでもあります。

 

大阪の感染状況が少し落ち着いてきた秋頃には、緊急事態宣言などによる自粛や警戒心で足が遠のいていたお客様にも久しぶりにご来店いただきました。

そのうちの何人かのお客様に、最後、お会計の時に「近所で何回か行ってみたけど、ここはやっぱり全然違う」と言う言葉をいただきました。

自分自身、お客様にそう感じていただけるように日々切磋琢磨しているわけですが、そんな言葉をいただいた時はジーンとした気持ちになりました。

美容師を続けてて良かったです。

 

自分は若かりし頃から恐らくは世間で言うところの偏屈なタイプの人間だったと思うので、もともと(俺イケてる系)美容師に対してもネガティブな印象を持ってて、それなら世間のイメージとは少しタイプの違う美容師がいても、それで救われる人もいるのではないか、と思って美容師の道に進みました。

 

「美容師って凄いんだ、素晴らしいんだ」ということを胸を張って伝えることができる美容師には自分はタイプ的になれないですが、「所詮、美容師は美容師」という考えで謙虚な気持ちを持って、でも仕事にはこだわる地味な美容師も自分以外にももっといてもいいんじゃないかと思っています。

そっちの方が安心できるという方も、世の中には少なからずいます。

 

「オシャレな人ばかり通ってそう」とか、まだ通いはじめのお客様とかにたまに言われることがあるのですが、まだ自分が独立して間もなかった頃は正にそう思われるようなお店にしたいと思っていました。

色々経験した中で、今考えるのは「オシャレな人にもしっかりと対応できるお店」であれば、それで十分だと思っています。

 

僕自身、今まで散々ファッションだ、カルチャーだ、と言ってきましたが、V:oltaはあくまで美容室で、ファッションやカルチャーにさほど興味がなくても、ただ単純に当店の作るヘアスタイルが好きだと言って通ってくださる方もいらっしゃいます。

所詮、美容師なので、少しでも多くの方に当店の髪型を気に入っていただけるように努力するだけです。

(ただ、その切り手側の感性にファッションやカルチャーの要素が含まれてるということが、当店のヘアスタイルの特徴でもあります)

 

 

先日、ヘルムート・ニュートンという写真家のドキュメンタリー映画を観てきました。

ニュートンは素晴らしい写真家で、僕も大好きなのですが、インタビュー映像の中でニュートンは「被写体の内面になんて興味はない、興味があるのは顔や胸や脚だけ」と言い切っていました。

写真には被写体の性格や考え方、趣味などの内面のものは映らないですが、僕はお客様をカットする際、そういう内面の部分こそ大切にして髪型に反映させたいと思っています。

 

服装と髪型は、その人の生き方や考え方を表します。

 

“SNS映え”ありきの今の時代とは逆行していくような経営方針ですが、V:oltaはV:oltaらしく、これからも地道に謙虚に、みなさまのお役に立てるよう、日々精進して参ります。

 

来年もどうぞV:oltaをよろしくお願いいたします。

(年始は5日からの営業となります。)

 

それでは皆様、良いお年をお迎えくださいませ!

 

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V:olta 代表  中田大助

 

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年度代表盤2020

2020.12.25.

Posted on 12.25.20

今年も、もうすぐ1年が終わります。

今年はコロナのこともあって忘れられない一年になりそうです。

 

多くの音楽メディアや音楽好きのリスナーは、年末になると年間ベストアルバムを発表していますが、僕も毎年『年度代表盤』と題して、一応、個人の年間ベストを紹介させていただいてます。

 

「年度代表盤」は、もちろん日本中央競馬会が発表するその年の競走馬の頂点を決める権威ある賞「年度代表馬」からとっています。

 

音楽は好きですが、年末はいつも仕事に追われてて、半ばやっつけでやってたのを反省して、今年は例年よりは少しだけ真面目に取り組みました。

今の競馬会と同様、個人的には今年は女性アーティストの活躍が印象に残りました。

 

 

よろしければ見ていって、聴いていって、(レコード店で)買っていってください!

 

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【Best Album of the Year】

Kelly Lee Owens – Inner Song

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Kelly Lee Owensは1st.もレコード買ったのですが、今作はさらに素晴らしかったです。

彼女自身、デビュー作に次ぐ今作を創り上げるのが相当困難だったと語っています。

大きなプレッシャーを感じず、ただひたすらに自身の夢や希望を詰め込む1stと違って、世間の注目が増す中での2nd.というのは、アーティストにとって真価の問われるところなのだと思います。

そして、彼女はその難しい2nd.で、世間が期待しているハードルの高さよりも遥かに上を越える作品を完成させました。

 

 


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2nd.

Haim – Women In Music Pt. III

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今年は女性アーティストの1.2フィニッシュです。

Haimは、もともとライブが凄いと評判でしたが、今作で遂にコーチェラとかでも堂々とヘッドライナーを張れるくらいの格になったのではないかと思います。

アートワークの撮影は、素晴らしき映画監督のポール・トーマス・アンダーソン。

 

 

 

 

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3rd.

Oneohtrix Point Never – Magic Oneohtrix Point Never

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O.P.N.の新作が出る年は、ほぼ毎回年間ベストに挙げてたくらいロパティン好きの僕ですが、今年はその気持ちをグッと堪えて3位に。

オジュウチョウサンも負けたことだし。

でもやっぱり O.P.N.は好きなんです。

今作は、O.P.N.の原点への振り返りであり、現時点までの集大成的な作品になっています。

嫌いなわけがない。

 

 

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4th.

HMLTD – West of Eden

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過去に素晴らしい歴史を築いてきたUKロックシーンですが、近年はエレクロトニックやラップなどに勢力を奪われ、バンドは下火となっていました。

ですが、最近はまたロンドンを中心に面白いバンドが次から次に出てきて活気づいてきています。

かのインディ・ロック好きデザイナー,エディ・スリマンもサンローラン時代はわざわざのデザインチームの拠点まで移すほど愛していたL.A.を離れ、現在のCELINEではロンドンを拠点に活動しています。

エディも現在のロンドンのバンドや音楽シーンに新しい魅力を感じているのだと思います。

サウス・ロンドンを拠点とする、このHMLTDもそのロンドンの音楽シーンに新たな風を吹かせているバンドの一組です。

バンド再興の願いも込めて。

 

 

 

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5th.

SAULT – Untitled(Black Is)

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同じくロンドンの3人組。

SAULTは、本作以外にも同名のアルバムをもう一枚リリースしています。(そちらのサブタイトルは“Rise”)

力強い拳のアートワークの本作「ブラック・イズ」は、今年世界に広がりをみせたブラック・ライヴズ・マター運動に呼応したものになっています。

今年はコロナばかりが注目されますが、自分達は他に起こっている物事にも目を向けないといけません。

SAULTは、自身の情報をあまり明かしておらず、謎多きアーティストです。

ローファイ・アフロ・ファンク~ディスコっぽいダンス・ミュージックまで、SAULTの作品は本作以外もとても好きなものばかりです。

 

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6th.

Eartheater – Phoenix: Flames Are Dew Upon My Skin

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本作は、有名な“ケツ噴射アルバム”として後世に名を残すでしょう。

Eartheaterは、前作もとても良かったんですが、今作も素晴らしかったです。

ギター、ピアノ、ハープ、ストリングスといったアコースティック・サウンドと妖艶なエレクトロニクスとの絶妙のハイブリット。

もうちょっと上に順位付けても良かったかなと思いつつも、もうそれもめんどくさくなってきてて、ここで許してちょんまげとなってる今現在であります。

 

 

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7th.

Yves Tumor – Heaven To A Tortured Mind

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前作で完全にメインストリームに躍り出たYves Tumorですが、今作も素晴らしかったです。

Flying Lotus然り、L.A.はこういうタイプの素晴らしいアーティストを定期的に排出しているイメージです。

Yves Tumorは、WARPの新世代の看板となっていくアーティストだと思います。もう既になっているのかも知れません。

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8th.

Crack Cloud – Pain Olympics

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Crack Cloudもエディお気に入りのバンドですが、こちらはロンドンではなく、カナダのバンクーバーを拠点とするポスト・パンク集団。

本作がフルアルバムとしてのデビュー作となります。

メンバーは7名のコアメンバーを中心に、総勢なんと40人(くらい)!

彼らは、依存症の回復プログラムで出会ったらしいです。

これもまた新時代のバンドの形で、面白いなと思います。

 

カッコイイ音出してます。

 

 

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9th.

Helado Negro – This Is How You Smile

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今から10年くらい前、アフリカ系の血を引くToro Y Moiが出てきて人気アーティストの一人になりましたが、今年はこのエクアドルの血を受け継ぐアーティスト,HELADO NEGROの新作が素晴らしかったです。

ローファイと言うには、あまりにも心地の良い力の抜け加減。

異国の血×U.S.インディの配合は、鉄板のインブリードだと思います。

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10th.

Perfume Genius – Set My Heart On Fire Immediately

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Perfume Geniusはデビューの頃から知ってて、新作が出たらチェックするけど、今までは正直年間ベストを考える時に候補に上がるほど特段好きな訳ではなかったのですが、そういう意味でも今作は一番驚かされた作品でした。

素晴らしいです。

Perfume Geniusこと、マイク・ハドレアスは自身がゲイであると公表していますが、トランスジェンダーのANOHNIや「男でもなく女でもない、ストレートでもゲイでもない」と語るMoses Sumney(今年の年間ベストに加えようか迷いました)など、性的少数者の社会的地位が守られるようになってきたから彼ら彼女ら(もしくはどちらでもない方達)の活躍も場もさらに広がってきたのだと思います。

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10位まで書くだけでも、10km走った時以上に体力消耗しました。

来年はきっとここまで真面目にやらないと思います。

誰か褒めてください。

それか褒めなくていいので、帰り際にシャンプーとか買っていってください!

 

 

今年もたくさんの良い音楽に出会えたことに感謝いたします!

 

先日の休みに、ドイツ人写真家Helmut Newtonのドキュメンタリー映画『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』を観てきました。

 

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最近はファッション系の映画よりも、他に観たい映画が死ぬほどあるので、わざわざ映画館で観るかどうか迷ったのですが、好きな写真家ですし、前売り特典でイヴ・サンローランが女性用のスモーキングジャケットを発表した時の有名なポートフォリオを使用したクリアファイルが付いてきたので、まんまと策にハマって前売り券を購入してしまっていました。

ちなみにこういう映画にしては珍しく上映してたパークスシネマで観たのですが、初めてスクリーンに自分ひとりだけという状況を経験しました。

非常に完成度の高い造本を実現し、世界中の写真ファンを魅了し続けているドイツの出版社STEIDLを運営するシュタイデル氏の「ベストセラーで儲けたお金で、利益を重視しない作品を作る」という言葉を思い出しました。

僕も心の中で「鬼滅さん、ありがとうございます」と感謝しました。

 

 

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ヘルムート・ニュートンは、ユダヤ人の両親のもとドイツのベルリンで産まれました。

若い頃から写真に興味を持ち、同じくドイツのユダヤ人写真家, エルゼ・ジーモンのアトリエでアシスタントとして働きながら写真の技術を習得していきました。

 

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当時のドイツは、ナチスが権力を拡大し、ユダヤ人が迫害されていたので、ニュートンはドイツを離れシンガポールへと渡ります。

ニュートンの師匠だったエルゼ・ジーモンは、同じ頃、強制収容所に送られ、生涯を閉じました。

あまりにも残酷な時代です。

 

ニュートンはその後、オーストラリアに渡り、女優ジューン・ブラウンと結婚。

ここから写真家として頭角を表していきます。

 

VOGUEと契約しイギリスに渡ったニュートンは、ファッション誌をはじめ幅広い媒体で活躍し、世界的なフォトグラファーとして有名になりました。が、同時に彼の挑発的な作品は時に物議も醸しました。

 

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この写真の男性は、若き日のデヴィッド・リンチです。

 

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こちらは、シャーロット・ランプリング。

映画タイトルにある「12人の女たち」というのは、ニュートンのミューズたちを指すわけですが、ランプリングもそのうちの一人です。

 

途中、ランプリングのインタビューも出てくるのですが、この撮影の時は映画『愛の嵐』の公開直後だったらしいです。

 

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本作は、強制収容所のナチス高官とユダヤ人捕虜の禁断の愛を描いた作品で、ランプリングは演出的にも度胸のいるユダヤ人捕虜役を見事に演じていました。

ナチスの帽子を被り、軍パン姿で挑発的にダンスするシーンは、映画史における名シーンのひとつだと思います。

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ニュートン自身へのインタビューでは、レニ・リーフェンシュタールの名前も出てきました。

レニ・リーフェンシュタールは、ドイツの映画監督兼写真家で、ヒトラーから直々に自身のスピーチやベルリンオリンピックなどの撮影を依頼された人物です。

ニュートンは主に女性のヌードを撮影していましたが、レニが撮影した男性競技者の力強い映像も本当に素晴らしいものでした。

ちょうど彼女のドキュメンタリー映画『レニ』を観たところだったで、ニュートンの話していることがよく理解できました。

 

このドキュメンタリー映画の中でも、ランプリングの『愛の嵐』や、『レニ』など、それを知っていればより理解できることも増えますし、当時のドイツのことを勉強すればする程にその2作品のこともより深く理解できるようになります。

 

自分ももっと勉強してもっと知識を増やしたいな、と思う今日この頃です。

 

『レニ』はアマゾンプライムでも観れるので、ご興味のある方は、そちらもぜひご覧になってみてください!

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少し本題から話が逸れてしまいましたが、本ドキュメンタリーも、ファッション写真がお好きな方なら、ぜひオススメの作品です。

アナ・ウィンターが「ニュートンは、イヴ・サンローランやカール・ラガーフェルドのようなファッションが全盛の頃に産まれてきて幸運だった」と言っていましたが、本当にそう思います。

 

そして、その幸運によって齎された写真を楽しむことができる自分たちも、また幸運です。

 

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2020.12.05.

Posted on 12.05.20

冬に入り、新型コロナの感染拡大が各地で深刻な状況になってきています。

 

ここ大阪でも重傷患者用の病床の使用率が切迫してきており、今月15日までの外出自粛要請が出されました。

当店では、引き続き感染防止対策に努めて、粛々と営業いたしますので、どうぞご遠慮なさらずにご来店くださいませ。

 

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春の緊急事態宣言の時に、一度自粛生活中にオススメの映画をご紹介させていただいたのですが、また今回の自粛生活においても、ヨード入りうがい薬を超える貢献度を目指して、新たなオススメ作品をご紹介させていただこうと思います。

前回のブログを書かせていただいた時は、その後、たくさんのお客様から「オススメ映画観ました」と言ってもらえました。

ありがとうございます!

 

ちなみに、前回のオススメ映画を書いた時は、自分自身、映画に関してはまだまだ知識が浅かったのですが(かと言って今も全然映画好き方達の中では観てる数も質も上の方ではないと思いますが)、この半年間はかなり映画欲が増して(少ない自由時間の中では)それなりに本数も観ましたし、映画世界は(今の僕のレベルから見ると)宇宙のような広がりがあることに気づくことができました。

だから逆にオススメする映画に、前よりも更に自信が持てないのですが笑

 

何でもニッチになり過ぎないくらいの方が、良いと伝わる人数は相対的に増えていくのだと思いますが、自分自身もニッチな方を好みますし、当店はもともとニッチな感性の方の為に作ったサロンですので、今回はそういった作品も多くピックアップしています。

ゆえに誰もが共感するような作品ばかりを紹介するわけではないことを予め断っておきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

ステイホームを求められる状況を考慮して、映画のサブスクリプション・サービス(Netflix,U-NEXT,Amazon Prime,シネマメンバーズ等)で観られる作品の中からなるべく選んでいます。

それでは、ここ最近観た映画から中心にオススメ作品をご紹介させていただきます!

(比較的観やすいものから順にご紹介しています)

 

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『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』  ウッディ・アレン

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まずは、ダチョウ倶楽部なみに皆様の心を掴めるよう、ウッディ・アレンの最新作から。

オシャレ女子達が大好きなティモシー主演です!

 

ハーベイ・ワインスタインのセクハラ暴露をきっかけに起きた「#MeToo」運動で、アレン自身も過去の養女への性的虐待疑惑でアンジャッシュ渡部ばりに業界から干されましたが、その騒動以降初となる本作。

本人も作品で見返してやろうと内心相当気合いが入ってたのではないかと思います笑

 

アレンのしたことが本当だとしたら、それは決して許されないことだと思いますが、個人的にはだからと言って彼の作品の価値が損なわれるものではないと思います。

本作もウディ・アレンのセンスと、映画愛、ジャズ愛の詰まった、本当に素晴らしい作品でした。

本作は、雨のニューヨークが舞台で、そんな雨さえも愛おしく思えるようなロマンチックなストーリー。

現在、日本でもコロナの感染拡大がまた深刻さを増していますが、そんな暗くなりがちな心をホッと温めてくるような作品です。

アレンは、ジャズ愛好家としても有名ですが、本作でもジャズの選曲と使い方が本当に素晴らしい。

今、世界の女子達のアイドル, ティモシー・シャラメの役柄も、イケメンなのに懐古趣味でジャズと映画を愛するナードな主人公として使うところも実にアレンっぽくて、自分のような気難しいナード気取りの心も鷲掴みされました。これならティモシーでも許せるどころかブルーレイまで購入した次第であります。

インスタの写真で感性磨いてるような今の若い世代の人達には、特に観てほしいと思う作品です。

 

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『ナイブズ・アウト』   ライアン・ジョンソン

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コメディを織り交ぜつつ、質の良いミステリー映画です。

ブリティッシュなムード仕立てのアメリカ映画。

ダニエル・クレイグの役柄も、作品に良い味を出しています。

サスペンスやミステリーがお好きな方で、まだご覧になられてない方は、ぜひ観てみてください!

 

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『ジョジョ・ラビット』   タイカ・ワイティティ

 

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ビートルズの“I Want To Hold Your Hand”(ドイツ語ヴァージョン)の軽快なイントロで始まる本作。

舞台は第二次世界大戦中、ナチス親衛隊に憧れを抱く愛国心溢れるジョジョ少年の心境の変化を通じて当時のナチスドイツの過ちを伝える作品です。

本作とは別で最近、『シカゴ7裁判』というアメリカの社会派映画を観たのですが、どちらの作品も誰でも観やすいようにエンタメ性も取り入れながらも歴史風刺してて、こういう伝え方の映画も良いなと思いました。

 

ここ日本では、まず歴史風刺の映画も少ないように思いますし(そもそも戦争の反省に真摯に向き合っていないようにも思います)、それらを取り扱った作品は重たいものが多くて、今の時代の人達はなかなか観る選択肢に入らないんじゃないかなと思います。

そんな中でも、片渕須直監督の『この世界の片隅に』はとても観やすい内容の反戦映画で、こちらも超オススメです。

 

 

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『ケス』 ケン・ローチ

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こちらも社会派です。

観やすい作品を上から紹介していこうと思って書いてるのですが、このあたりからもしかしたら作品を「あまり知らない」という方も出てくるラインなのかなと思っています。

 

『私はダニエル・ブレイク』や『家族を想うとき』など、ケン・ローチ監督の作品は最近のものも社会問題を扱いながらも素晴らしいものばかりですが、初期の頃に作られた本作は特に傑作だと思います。

 

1960年代のイギリス,ヨークシャーを舞台に、労働者階級の家庭に生まれた少年ビリーとハヤブサ“ケス”との出会いとその暮らしを描いた作品。

イギリスの労働者階級社会のことを知るのにもオススメの作品です。

心を抉られるような社会風刺と、あまりにも美しい映像との対比。

ラストまで救いが無いですが、登場人物の中でも数少ない良心を持った大人である“少年に優しく接してくれる担任”と“肉屋の店主”に、こちらの心まで救われるような気持ちになりました。

日本でも、これからコロナによる不況と戦っていく必要がありますが、そんな時こそギスギスするのではなく、優しく穏やかな気持ちで周りと接したいと思います。

 

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『都会のアリス』   ヴィム・ヴェンダース

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ヴィム・ヴェンダース監督初期のロードムービー3部作の1作目。

ジム・ジャームッシュとかのモノクローム映画がお好きな方は、特にオススメします。

「少女とオッサン」の組み合わせでは『レオン』が有名ですが、レオン(22歳くらいまでの若い世代にはレオンがオススメ)も良いですが自分はこちらの方が断然好みです。

(注:僕はウッディ・アレンみたいな少女趣味は持っていません)

 

 

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『凱里ブルース』   ビー・ガン

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こちらは最近、アップカミングな若手監督,ビー・ガン監督の長編デビュー作。

最新作『ロングデイズ・ジャーニー この世の涯てへ』も観たのですが、そちらは映画後半で映像が2Dから3Dに変わり(僕は全編2Dで観ましたが)、さらにそこから60分驚愕のワンカットというのが話題になった作品で、個人的にはそんなアクロバティックなことしなくとも十分にセンスのある監督だと思うので、今回はこちらをご紹介いたします。

上記のような大胆なアイデアにも意欲的にチャレンジする監督ですが、タルコフスキーに影響を受けたというビー・ガンの作風は叙情的で抽象的です。

そして、そこに更なる革新性を感じます。

映像の色調などはウォン・カーウァイっぽくもありますし、タルコフスキー好きな方にもオススメです。

 

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『LETO -レト-』    キリル・セレブレンニコフ

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80年代のソ連でカリスマ的な人気のあったバンド,Кино(キノ)のストーリーをモデルにした音楽映画。

当時のソ連は、西側諸国の文化に触れることを政府が禁止していました。

本作ではそんな当時のソ連の若者達の抑圧された生活の様子も垣間見れます。

モノクロの映像に、時折カラーで色付けする「オシャレな」演出は、『コントロール』などのよりストイックな作りをしている作品を好む自分にはちょっと馴染みにくかったですが、“サイコキラー”のカヴァーなどサントラもよかったですし、これはこれで良い作品でした。

どちらかというとロック好き女子の方が好みそうな演出に思えました。

T-Rex, デヴィッド・ボウイ, ヴェルヴェッツあたりの音楽が好きな方も、それなりに楽しめるのではないでしょうか。

ただ、それらの単語やLPやポスターなどのアイテムを作中に詰め込み過ぎなキライも少しありましたが…とあくまで自分には少しキャッチー過ぎたと念を押しておきます笑

 

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『暗殺のオペラ』     ベルナルド・ベルトルッチ

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ベルトルッチ監督では『暗殺の森』の方がファンには人気が高いと思いますが、自分は本作の方が世界観がより好みでした。

素朴ながらセンス抜群の映像と、それをさらに高みへと誘う秀逸なカメラワークがとても印象に残っています。

ストーリーはミステリアスで、あえて掴みどころを外しているような作りなので、少し難解に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、圧巻の映像美だけでも観る価値があると思います。

 

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『嘆きのピエタ』   キム・ギドク

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韓国映画も一本。

債務者に無惨な暴力を振るい、障害者にしてまで借金を取り立てる主人公のもとに「あなたの母親だ」と名乗る人物が現れる、という話ですが、ラース・フォン・トリアー級にヤバい胸糞映画です。

韓国は、ドラマはアジア向けなのが多いですが、映画は素晴らしい作品が多く世界レベルだと思います。

ちなみに 「ラース・フォン・トリアーでヤバイやつください」と言われたら、問答無用で『アンチクライスト』をオススメします。

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『女は女である』    ジャン・リュック・ゴダール

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ゴダール映画の中では個人的に好きな作品は、もっと他にたくさんあるのですが、ただでさえ「コロナ鬱に注意」とか言われてるのに紹介映画のラインナップがどんどん陰鬱なものになってきてたので、ポップでオシャレで明るいものを。

主演のアンナ・カリーナのファッションやヘアスタイルは、現代において改めて注目度が再燃してきてると思います。

本作は、軽快なミュージカル仕立てで、カリーナに恋したゴダールがカリーナを美しくキュートに魅せる為に作った映画と言っても過言ではなく、特にオシャレを愛する女性の皆さまにオススメの作品です。

オシャレを愛する男子には『勝手にしやがれ』がオススメで、カオス好きな方は『ウイークエンド』、その3つの要素全て入ってるのが『気狂いピエロ』です。

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『ヘンリー・フール』    ハル・ハートリー

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「ポエムを嗜む素人」を題材にした映画では、ジム・ジャームッシュの『パターソン』を好む人が多いのだと思いますが、本作も名作です。

本作に登場する詩人は、ごみ収集車作業員のサイモン。

ハイソなイメージのポエムとは真逆に思える生活をしている彼が創作するポエムは決して万人受けするような「美しい」ものではない。

作中にも詩的なセリフがたくさん出てきますが、怒りや煩悩に溢れてて決して品が良くないものばかり。

しかし、品は良くない詩でも素晴らしくあることもできる。

そんな映画です。

 

 

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『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より- 』  ロベール・ブレッソン

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ロベール・ブレッソン監督の作品は、DVDやブルーレイを買わないと観れないものも多いですが、本作はU-NEXTに入っています。

僕自身の好みでは、サブスクの中ではU-NEXTが一番質と量の総合点が高いと感じています。

 

ロベール・ブレッソン監督の作品はDVD化されていない『やさしい女』を除くと、既に(ブルーレイがあるものはブルーレイで)フルコンプしました。

好きな映画監督を3人挙げろと言われたら、ブレッソンは間違いなく入れたい監督です。

かと言って、作品が手元にあっていつでも観れるのに、まだ半分も観てないのが現状です。

(5000円もする書籍とかは買って読んでるのですが)

 

自分は学生時代だけでCDを3000枚以上収集したくらい、好きなものはちゃんと買って手元に置いておきたいタイプなのですが、最近はCDをあまり買わなくなった(レコードは買います)変わりに映画のBDやDVDを収集することに心血を注いでいます。

その結果、映画を観れる時間(需要)と収集スピード(供給)のバランスが、供給過多の状況に追い込まれてて、ブレッソン以外にも「手元に置いておきたいけど、まだ観れていない作品」が少しずつ増えていっています。

そして、自分はその羅列したBDやブルーレイを見るたびに、この上ない幸福感を感じています。

(自分はお酒が使われてるケーキを食べただけでも平行歩行が困難になるくらい、お酒はからっきしダメなのですが)その感覚は家にワインセラー置いてヴィンテージワインを貯蔵している人の感覚に似ているように思います。

 

ブレッソンは既に他界してるので、今ある作品を観てしまったら、もう新作は観れない訳です。

だからブレッソンに限らず、過去の名作を観る時は、なるべくこちらの心・技・体が完璧に整ってる状態で鑑賞したい、と思うから、特に好きな監督の作品は、どうしても「ここぞ」というタイミングが来るまで残しておきたいとなるのです。なんなら、今から老後の楽しみに取っておくのもアリだと思っています(積み立てNISAみたいに)。

 

ブレッソン監督は、自分の作品を“映画”と呼ばずに“シネマトグラフ”と称して、プロの俳優や女優の芝居がかった演技を嫌い、自身の作品でも“モデル”と称した素人を起用することを好みます。

本作、『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より- 』も然り。

本作は、ナチス・ドイツによって収監されたレジスタンス闘士の脱獄劇を描いているのですが、作りは主人公フォンテームにのみフォーカスしたカメラワークで、セリフも必要最小限。

ブレッソンの手法は、無駄を極限まで削ぎ落とした(限定的に伝わってくる情報の)中で、観る側に文間を読ませるわけです。

得られる情報は少ないですが、しっかりと理解して観ないと、そこに映像やセリフとして映し出されていない監督の意図を汲み取ることはできません。

現代ではクリストファー・ノーランの作品が「頭を使う映画」としても有名ですが、ノーランとブレッソンでは“マンガ”と“純文学”くらいジャンルが違います。もちろんブレッソンが“純文学”です。

しかも本作はまだブレッソン初期の頃の作品で、さらにこの先、ブレッソンはその手法を洗練させ、確立させていくわけです。

 

1950年代の作品ですが、最後の脱出シーンはとても静かですが緊張感があって非常にスリリングです。

 

本作が面白かったという方は、同じ脱出サスペンスものでジャック・ベッケル監督の『穴』もオススメです。

こちらも昔のフランス映画で、実際に起きた脱獄事件をもとに作られており、なんと本作には実際の脱獄を試みた囚人の一人が俳優として起用されています。

ただ延々と穴を掘るだけの映画で、こんなにも面白いのかと思わせられました。

 

他にもご紹介したい作品はたくさんあるのですが、長くなってきたので、今回はこのあたりで終わりにさせていただこうと思います。

ご興味の湧いた作品が少しでもあれば幸いです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

2021 S/S COLLECTION

2020.10.14.

Posted on 10.14.20

新型コロナウィルスの影響で、世界の主要コレクションでは無観客のデジタルコレクションが主流となっています。

 

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SNSが一般に浸透して以降、SNSを利用してコレクションをライブ配信するブランドも次々と増えました。

 

家にいながらにしてパリコレをリアルタイムで観れるなんて、一昔前では考えられないことでしたが、今やそれも当たり前の世の中となりました。

 

お気に入りのブランドをフォローすれば、コレクションや新作などの最新情報も気軽に見ることが可能ですし、ニッチな世界に位置していたモードというものが一般に開放されたような感覚です。

 

コレクションをリアルタイムで鑑賞できたり過去のアーカイヴも簡単に閲覧できるなど、便利になって良かった部分もたくさんありますが、世界中のより多くの人達がマーケティングターゲットになった為、ブランド自身の価値観も大きく変わっていき、素晴らしい歴史を気づいてきたモード界全体の様式もここ数年で大きく変化したと思います。

 

デザイナーを外部から起用するラグジュアリーブランドは、近年、矢継ぎ早にデザイナーの入れ替えを行っています。

それはまるで、しけったマッチ箱からマッチを取り出し、無闇矢鱈に擦って、火が点かなければすぐに次のマッチを取り出すという一連の動作と同じような印象を受けます。

火がつきやすいように風上に背中を向けることも、片手でマッチの火を大切に覆うこともせず、無事に火が点いたものでもその炎が弱まればまだ火が点っていても捨てる。

今の時代のファッションデザイナーは、短期間で結果を出さなければいけません。

ファッションの本質を追求したいと考えるデザイナーにとっては、本当に大変な時代だと思います。

 

そして新型コロナの激震がありました。

現在、ブランドが新作コレクションを発表する為に求められる場所は、オンライン上でのデジタルコレクションとなっています。

 

今シーズンの目玉は、ラフ・シモンズが加入したプラダです。

 

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ベールを覆うようなケープが落ちないように、モデルが胸元で握り締めた拳が印象的でした。

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ロングスカートにセーターを合わせるスタイルは、最近のミウッチャ・プラダの「ユニフォーム」スタイルに着想を得たらしいです。

 

ミウッチャ・プラダもラフ・シモンズも、今の商業性を極端に重視したモード界に染まらずにいるデザイナーだと思いますので、応援したい気持ちも強いです。

 

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今シーズンで一番印象に残ったコレクションは、ジョン・ガリアーノによるMaison Margielaのコレクションでした。

 

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人と人との繋がりにフォーカスし、パートナーと信頼し合ってステップを踏むタンゴから着想を得たという本コレクションは、ガリアーノの持っている類稀なファンタジー性と洗練されたユーモアが存分に発揮された素晴らしいコレクションでした。

 

マルジェラは、現在日本ではタビブーツ(及びタビシューズ)が「モード界における残念な流行番付」において堂々の東の横綱(全盛期の白鵬並みの強さ)に君臨していますが、ガリアーノのクリエイションはその残念な日本の流行とは反比例するかのように益々研ぎ澄まされています。

 

ジョン・ガリアーノは、もともとジバンシィ、そしてクリスチャン・ディオールにおいてデザイナーとして素晴らしい才能を発揮してきました。

現在、ラグジュアリーブランドのデザイナーと言っても、縫製はおろかファッションスケッチも書けないという人も少なくなく、洋服を一から作れる人というのは意外なほど少ないのですが、ガリアーノはその数少ない「服作りのできるデザイナー」のうちの一人です。

しかも類稀な創造性を兼備した、天賦の才を持った正真正銘のデザイナーだと思います。

 

最近の僕は、日本でマルジェラがタピオカみたいな流行り方をしてるのを見て、過去に買って所有しているマルジェラの洋服を着ることも気が進まないくらいでしたが、このガリアーノのコレクションを観ると、マルジェラの洋服のひとつでも買ってリスペクトの気持ちを示したい気分になりました。

 

コロナで「今は洋服なんて」という方も多いかと思いますが、デザイナーが魂を込めて作ったような洋服にはそういう時にこそ気持ちを前向きにさせてくれる魔力のようなものがあるように感じています。

 

こういう時だからこそ、ファッションを楽しんで、前を向いて日々を歩んでいきたい気持ちです。

 

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2020.09.14.

Posted on 09.14.20

新型コロナウィルスの影響で、自粛して暫く映画館にも行ってなかったですが、久々に映画館で映画を観てきました。

 

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実力派俳優でもあるジョナ・ヒルの監督デビュー作『mid90s』

監督自身の10代の思い出をもとに作りあげられた、素晴らしい青春映画です。

 

 

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家では嫁の全面協力のもと、三度の飯より映画ウォッチャーと化してる自分にとっても、年明けに観に行った『ミッドサマー』以来の映画館。

コロナで映画館自体も閉館してたり、再開してからも自分は接客業をしてるので映画館に行くのは少し様子を見てからにしようと思って、本当はウッディ・アレン監督の『レニーデイ・イン・ニューヨーク』とかも観に行きたかったのですが、もう少しだけ我慢して、本作は前から楽しみにしてたので、ドリンクも飲まず,マスクを着けたまま一時も取らず,一言も発さずに,一人で(これに関してはほぼ常にですが)感染予防対策を徹底して観に行くことにしました。

 

いつも映画館に着いたら、まずチケットを発券して、たいていの場合においてパンフレットを購入します。

入場時間までの間、待合席に座ってパンフレットをパラパラと見ていると、これから鑑賞する作品への期待が高まっていきます。

気持ちがワクワクしてきたところで一旦クールダウンしてパンフレットを仕舞い、持参した本を読みながら時間をつぶします。

 

入場時間が来ると入り口でチケットを提示して、鑑賞する作品のスクリーンへと向かいます。

エスカレーターに乗りながら、気持ちがまたワクワクしてきてるのが分かります。

 

ひとつ飛ばしで設定された座席の中から選んだ席を探して、シートを下におろしてゆっくりと深く腰を降ろした瞬間、あまりの充足感から早速、名映画評論家の水野晴郎さんみたいに「いやぁ、映画館って本っ当にいいもんですね〜」と独り言が出そうになりましたが、一人で来てるのにいきなりその言葉を本当に発してしまったら、只でさえソーシャルディスタンスを遵守してひとつ飛ばしに割り当てられた間隔が自分の周りだけ更に広くなってしまう事態になるので、心の中に留めておきました。

 

レイトショーで観客もまばらでしたが、場内の照明が落ちいよいよ映画が始まります…

 

自分はスケーターでもなく、青春時代にヒップホップも聴かず、怖くて不良グループに近づく度胸もなかったですが、本作と同じように90年代に学生時代を過ごした世代だったからか、青春時代カルチャーに心を奪われてたからか、それとも単純に本作が素晴らしかったからなのか、とても心に滲みました。

自分は若い頃は、主人公,サンバーンの兄とほぼ同じタイプだったので、そちらに感情移入もしましたが。。

 

当時は、今みたいにスマホもなく、インターネットもなく、SpotifyもNetflixもない時代でしたが、アナログだったからこそ輝きを放ってたものもたくさんあったと思います。

 

トレント・レズナーとアッティカス・ロスによる本作の為に手掛けたオリジナル・スコアも奇跡が舞い降りたのかと思うくらい美しかったです。

 

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コロナの感染が心配で映画館も自粛しているという方もいらっしゃるかと思いますが、映画館側も席を間引くなど感染対策をちゃんとしてくれていましたし、客側も感染対策を順守しマナーを守れば、映画館はそれほど感染リスクが大きいところではないと感じました。

 

自分は映画が好きだし、映画館も無くなってほしくないと思うから、コロナ禍においても今のように経済活動が求められてるうちは、これからも観たい作品があれば感染対策をしっかりして映画館にもまた行こうと思います。

 

映画館に行きたいけど心配で行けてないという方がいれば、予約が空いてそうな時間帯なら割と安心して観れましたということはお伝えしたいです。

 

コロナに対する考え方は人それぞれだと思うので、ぜひ映画館に観に行ってみてくださいとは言えないですが、とてもオススメの映画でした!

Posted on 08.27.20

今日はSNS時代のファッションとカルチャーと、そして、それを着る人との関連性について最近思うことを少し書かせていただこうと思います。

 

今までもファッションブランド(特にデザイナーズ系)が、特定の音楽のアーティストや映画をフューチャーしたTシャツやその他のアイテムを発表する、ということはありましたが、SNSが多くの人々にとって日常になった昨今、ファッションにカルチャー性を出そうとする動きが顕著になってきたように感じています。

 

ファッションブランドのマーケティングにおいても近年では、イケイケのギャルがバレンシアガのキャップを被っていたり、1988年にマルジェラがデビューコレクションで発表したタビブーツが現在になって保守的な服装を好む人達にもメガヒットしたり、SNSによって今までニッチだったものの知名度が急速に一般に広がるようになったことで、高価なファッションブランドも「そんな儲かるなら、俺も一発当てたる」的な発想で考えたであろうアイテムをたくさん発表するような流れになりました。

そういう考えの浅はかなものは大概ダサいし芯を食わないので、数シーズン後には何事もなかったかのように消えていくのですが、かといって「さすがデザイナー」と思わせられるような感性の宿った素晴らしい洋服でも購買層が限定的になり過ぎたらそれはそれで生き残っていけない、という反面もあって、ファッション界がコロナに先駆けて『新たなファッションビジネス様式』を迫られる何ともカオスな時代に突入してきたなと思っていたのですが、今度は「私(俺)イケてる」アピールの為に遂に音楽や映画などのカルチャーが標的にされだしてて、SNS時代におけるカオスはさらなるステージへ進もうとしています。

 

生活範囲が極端に狭い自分でも、そのような危険が近づいてるなと思うようなことが最近になっていくつか目にするようになってきたので、その一例をいくつか挙げます。

 

・“人気デザイナーズブランド” サカイによる「ビッグ・リボウスキ」Tシャツ

・“ハイセンス雑誌” アンドプレミアムの音楽特集の表紙の一番目立つ位置に「ザ・スミス」の“Hatful Of Hollow”

・SNSで偶然見かけた千原せいじの着ていたTシャツが「ジョイ・ディヴィジョン」の“Unknown Pleasures”

 

 

特に3つ目の案件は、この危機が既に水際まで来ていることを示す重要事案です。

アンドプレミアムなんかは、ザ・スミスでもオリジナル盤だとちょっと「いかにも」と思われるのを嫌ってコアなスミスファンにも人気の高い編集盤“Hatful Of Hollow”と捻りを加えています。

サカイの“ビッグ・リボウスキ”も、コーエン兄弟による名作ですが、「ファーゴ」「ノーカントリー」のツートップをしっかりと外しつつ、映画オタクの心を掴んだ作品をちゃっかりとチョイスしています。

千原せいじ氏がジョイ・ディヴィジョンを好きなのかどうかは知らないですが、ジョイ・ディヴィジョンを神格化しているような人は性格がせいじさんのそれとは真逆というのが今までの相場です。

そのジョイ・ディヴィジョンTシャツを威風堂々と着てらっしゃった(威風堂々と不倫もしますが)せいじさんが、この3つの中では一番輝いてるなと個人的には思いました。

そして一番心が濁ってるのは、こんなディスり記事を書いてしまう自分であるということも理解してて、誠に申し訳ないと思っています。

 

ザ・スミスやジョイ・ディヴィジョンのTシャツなんか、少し前は自分のようなネクラな音楽好きしか着てなかったですが、もう今や立派な「オシャレアイテム」になってしまうんです。。

ザ・スミスTシャツ着てる人に「モリッシー好きなんですね?」と話しかけたら「え?誰それ?ってかあなた誰なの?マジで」って不審者がられる時代が、もうそこまで来てるんです!

 

もう悔しくて、海外のサイトで“Current 93”とか“CHRIS AND COSEY”とかのTシャツをヤケ買いしました…

サカイとかなら一枚2万円くらいつけるところを、海外サイトならなんと破格の一枚2000円弱でした。

個人的にはバンドTは変にブランドのものでないのを着てる方がカッコイイと思います。

(好きなバンドのTシャツをどこかが出したら、それはそれで欲しくなる時もあるのですが)

 

NAMACHEKOというブランドは、SS2020においてゴッドフリー・レッジョ監督の『コヤニスカッツィ』という映画をインスピレーションにしたコレクションを発表しました。

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本作は、『平衡を失った世界』を映像と音楽で表現したドキュメンタリー映画です。

自分もカッツィ三部作は一番有名な本作しかまだ観てないですが、この映画をインスピレーションにコレクションを完成させるという発想はさすがデザイナーだなと思いました。

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デザインもカッコイイです。

 

ラフ・シモンズやアンダーカバーなんかもよく映画や音楽をインスピレーションにコレクションを発表しますが、どちらも直接的な表現の服が多く、自分はそこからデザイナーが自身の解釈を加えているようなデザインの洋服の方が凄みを感じます。

 

ですが、今の時代そんな真のクリエイティヴ精神に溢れたものよりも、“いいな”と思ったものをカット&コピーしただけのような表面的で直接的なものの方がハイブランドであってもウケてしまうんです。。

そういうことは別の島でやってくれたらいいのですが、今はミーハーな人でもコアな人が好きな映画や音楽の領海まで侵入してきてて、これはもう中国船と同じくらい由々しき事態です。

 

アメリカ原住民の気持ちに少しだけ近づくことができた今日この頃です。

Posted on 08.09.20

いつもV:oltaをご利用いただき、まことにありがとうございます。

 

8/10(月)~13(木)の4日間、V:oltaは夏期休暇をいただいております。

14日(金)より通常営業いたします。

 

来週、17(月)18(火)も連休となっておりますので、ご注意くださいませ。

スタッフ一同、休暇中も感染防止対策を心がけて過ごします。

 

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お休み期間中は、みなさまにご迷惑をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

お休み明けのご予約は集中することが予想されますので、ご来店をご検討の方は、お早めにご予約くださいませ。

 

それでは皆様、コロナの感染が蔓延する中でも暑い日が続きますが、どうぞお体ご自愛くださいませ。

 

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Posted on 06.06.20

音楽ライターの宮谷さんから、コロナ自粛期間中におすすめの音楽と映画を紹介してほしいとのご依頼をいただき、この度記事にしていただきました!

 

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“SENSE OF MODE”をテーマに、今回は、渋谷にあるCAFE:MONOCHROMEさんと同列で取り上げてくださいました。

 

自分の書いた文章は拙いものですが、ライターの宮谷さんもCAFE:MONOCHROMEの川村さんも本当に素敵な文章を書いておられますので、よろしければぜひご一読ください!

 

https://note.com/staytuned99_9mhz

 

Posted on 05.13.20

先日、映画のエンドロールで流れる曲のみで構成したAPPLE MUSIC のプレイリスト“End Roll Magics”を公開したのですが、

 

 

このプレイリストをチェックしてくれた人でさえ、かなり少ない人数であろうことが想像に易しいですが、今回はなんとそれぞれの曲が何のエンドロールで流れるものなのかの正解を発表するという、アベノマスクもビックリなどうでも良い内容のブログですので、在宅ワークを一生懸命されている方などは、どうぞ読まずに仕事に戻ってください。

 

ちなみに、映画の寸評付きです!

 

 

E.L.O. – Livin’ Thing

『ブギーナイツ』 監督: ポール・トーマス・アンダーソン

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1970年代末~80年代にかけてのアメリカのポルノ業界が舞台ですが、当時のアメリカのトレンドを再現した長回しの映像と当時の音楽がとてもクールでした!

ポール・トーマス・アンダーソンの本作が気に入ったという方は、CANの“Vitamin C”の軽快なイントロで幕を開ける『インヒアレント・ヴァイス』もぜひご覧になってみてください!

 

Sidney Bechet – Si tu vois ma mère (Slow)

『ミッドナイト・イン・パリ』 監督: ウディ・アレン

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セクハラ問題で一気に名声を失墜させたウディ・アレンですが、その手掛けた作品は素晴らしいものが多いです。

本作は、1920年のパリを舞台にタイムスリップした主人公がヘミングウェイやピカソなどの偉人たちに出会うという、なんともロマンティックなもの。映像も美しく、長引く自粛生活で同じ景色しか目にしなくなってきたという方の目の保養にもなるのではないでしょうか。

 

April March – Chick Habit

『デス・プルーフ』 監督: クエンティン・タランティーノ

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こちらの作品は、タランティーノが好む1970年代から80年代のB級映画のオマージュとして製作された作品で、元スタントマンのマイクが改造車“デス・プルーフ”を使って超サイコな殺人を楽しむという、何ともタランティーノらしいもの。

血や身体の一部が無残に飛び散る様子をスローモーションを用いながら丁寧に描くという、監督のサイコっぷりもビシビシと伝わってくる映画です。

 

David Bowie – Modern Love

『フランシス・ハ』  監督:ノア・バームバック

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映画に音楽が合ってる作品は、観てて楽しいです。全編モノクロで繰り広げられる本作は、主人公のキャラとこのデヴィッド・ボウイ の曲との相性が抜群でした!

タイトルの意味は、映画を最後まで観ればわかる仕組みです。このあたりにも監督のセンスの良さが現れています。

 

 

The Korgis – Everybody’s Got to Learn Sometime

『エターナル・サンシャイン 』  監督:ミシェル・ゴンドリー

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自分は、恋愛映画はまずそういうカテゴリであると分かった時点で観るのをやめるくらい本来苦手というか優先順位の低いジャンルですが、本作は一度は別れた二人がお互いに失恋が辛すぎて「特定の記憶のみを除去する」という処置を二人とも受けるという、とてもロマンティックなもので、こんなラブストーリー嫌いの自分でもとても素晴らしい映画だと思えたので、むしろ好きという方はぜひご覧になってみてください。

ちなみに、エンドロールはThe KorgisではなくBECKによる同曲のカバーが使われています。

 

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Bob Dylan – Like A Rolling Stone

『アイム・ノット・ゼア』  監督:トッド・ヘインズ

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こちらはボブ・ディランの伝記映画。6人の俳優がそれぞれ異なる6つのイメージのボブ・ディランを演じています。

中でも紅一点ケイト・ブランシェットの演技は性別を超えて一番ディランらしいのではないかと思うほど目を見張るものがありました。

 

 

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Gigi D’Agostino – L’Amour Toujours (L’Amour Vision)

『アンカット・ダイヤモンド』  監督:ベニー・サフディ&ジョシュ・サフディ

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この兄弟監督の作品は、どれもオススメです。

本作は主演のアダム・サンドラーの演じる怪しげな職業のオッサンに無駄にハラハラドキドキさせらるストーリーなのですが、アダム・サンドラーの役柄が怪演過ぎて最高でした!

この最後の曲は違いますが、この映画のサントラはOneohtrix Point Neverが手掛けています。O.P.N.は、その映像に潜む感情を音として表現するのがとても上手で、自身名義の音楽作品が一番素晴らしいのはもちろんですが、映画音楽でもその素晴らしい才能を存分に発揮していて、映画そのものが引き締まります。

このエンドロールで流れるチャラチャラした曲は、サンドラー演じる主人公にピッタリな曲だと思いました。

サフディ作品では、『グッドタイム 』もとてもオススメです!

 

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Ry Cooder – Dark Was the Night

『パリ、テキサス』  監督: ヴィム・ヴェンダース

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ヴィム・ヴェンダース監督の作品は、自分もまだまだ観ていないものも多いですが、今まで観たもので外れを引いた試しがありません。

その今まで観た中で1本挙げるとすれば本作が一番好きです。

まずタイトルが洒落てます。この“パリ”はフランスの花の都パリではなくアメリカはテキサス州の素朴な町パリのこと。

本作もヴェンダースの得意とするロードムービーなのですが、美しい映像にライ・クーダーの哀愁漂う音楽が絶妙にマッチした傑作だと思います。

 

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Lana Del Rey – Born To Die

『Mommy』  監督:  グザヴィエ・ドラン

 

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グザヴィエ・ドラン作品は、どれも映像に独特の強烈さと美しさを感じます。そのストーリーも斬新。

本作の印象に残るシーンとして、主人公がヘッドホンをしてスケートに乗りながら街中を徘徊するシーンがあるのですが、とても気持ちが良さそうで、先日のSupreme×My Bloody Valentineアイテムを悩みつつ購入して遂にSupremerデビューしてしまった僕も、腹を決めてスケボーも買って年甲斐もなくなるべく人目につかない川の土手とかでやるしかないと思いだしてきていて、自分を見失ってしまいそうで怖いです。

 

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Omitir – Fase VII  “Belle Indiference”

『イレイザーヘッド』  監督: デヴィッド・リンチ

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過去に働いてくれてた女性スタッフが退社する時に、この映画のTシャツを送ったことがあります。

デヴィッド・リンチ作品は、自身のドキュメンタリー映画を含めてほとんど観ましたし、大好きな監督です。が、先日Netflixで公開された猿のショートムービーだけはハマらなかったです。

これをご覧のそこのあなたも夜道を歩く時は、イレイザーヘッドTシャツを着ていれば安心安全です。

 

 

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Björk – New World

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』  監督:ラース・フォン・トリアー

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主題歌だけでなく、主演もBjörkが務めています。当時公開初日に本作を映画館に観に行った自分は、ロンドロールの頃には身体中の血を失ってしまったような感覚になってしまっていました。

ラース・フォン・トリアー監督は、人間の心の深部にあるような感情を映像化するのがとても上手いです。

 

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BEN.E.KING – Stand By Me

『スタンド・バイ・ミー』  監督: ロブ・ライナー

 

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この映画に関しては、だいぶ小さい時に観て、それから観返してもないので、大筋しか覚えてないですが、子供心に心を揺さぶられた記憶があります。

このベン・E・キングによる主題歌も好きで、プレイリストの最後に入れたいと思い選びました。

 

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と全て終わりましたが、途中、この過酷な労力に対して、このブログを見てくれる人の絶対的な少なさを想像したら、ドアーズの“ジ・エンド”が脳裏に流れて、急にパソコンを叩く10本の各指に1kgの重りを乗せられてるような感覚になって、今日の午前から書き始めたこの記事は途中休憩やら仕事やら柔軟体操やらを挟んで完成させた今の時刻は気づけば、とうに残業時間です。

 

早く帰って今日は『ファスビンダーのケレル』を観る予定です。

Posted on 05.01.20

自分もとてもサポートしている場合ではないのですが…

おそらく自分たちよりも状況が厳しいであろうミニシアターの皆様へ

コロナが終息したら今まで以上に映画観に行くので、どうか頑張ってください!

 

 

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End Roll Magics

2020.04.29.

Posted on 04.29.20

映画のエンドロールに流れる曲のみで構成したプレイリスト、その名も“End Roll Magics”を公開いたしました。

 

自粛生活中の部屋の片付けの際などに、よろしければご視聴くださいませ。

 

映画好きの方は、どの曲がどの映画のラストか、何問正解できるでしょうか?

(最後の曲はもの凄いサービス問題です)

 

 

 

新型コロナウィルス感染拡大に伴い、政府は緊急事態宣言の適用を全国へと拡大しました。

 

自分たち国民に課される自粛生活も、まだまだ長期戦になりそうです。

接客業の方など、長期の休業期間をもらって外出自粛で一日中家で過ごされている方もたくさんいらっしゃるかと思います。

 

自分はもともと映画が好きでこれまでの人生においてもそこそこは観てきてたのですが、去年あたりから、空前の映画鑑賞(主にV.O.D.)ブームが到来してて、Amazon Prime,Netflix,U-NEXTの3社と桃園の誓いクラスに熱い兄弟の契りを交わし、そのまま現在に到るのですが、まだまだ大した数観てないですが、こんな時ですし、自分なりのオススメ映画をご紹介することで少しでも自粛生活が続く皆様の気分転換になればと思います。

とりあえず、アベノマスク よりは役に立てるように頑張ります!

 

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【こんな時こそ家族の絆を】

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“マリッジ・ストーリー”  監督:ノア・バームバック(Netflix)

今、自宅で過ごす時間が増えている中で「コロナ離婚」というようなフレーズも耳にするようになってきました。

自粛生活で外へ出かけることができず家にいる時間が増えてくることは、多くの人々にとってどうしてもストレスを感じることも増えてくると思います。

本作は、まだ小さな子供がいるのに夫婦の関係が上手くいっていないという、現代の子育て世代におけるひとつのテーマを題材としています。

この一見幸せそうな写真の内側に、この家族の抱える問題が潜んでいます。

夫婦を演じているアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンの役柄も本当に素晴らしいです。

アダム・ドライバーは、今まさにピークを迎えつつある俳優で独特の魅力があります。

スカーレット・ヨハンソンは、若かりし頃は、その美貌も大きな武器だったのだと思いますが、30代も半ばに入り円熟味が出だしてきた本作における演技は、「ロスト・イン・トランスレーション」の頃とはまた全然違う素晴らしさを感じました。

夫婦関係が良好な方も、まだこれから子供が欲しいと考えている夫婦の方も、ぜひご覧になっていただきたい映画です。

Netflix制作の映画は、最初は(誠に申し訳ないですが)「エンタメ会社の作る映画だし、どうせ薄っぺらい作品ばかりだろう」と思ってしまっていましたが、『ROMA』『二人のローマ教皇』、アカデミー賞受賞で話題のポン・ジュノ監督の『Okja』、コーエン兄弟による『バスターのバラード』など、素晴らしい作品がたくさんあって、本当にアイム・ソー・ソーリーという感じです。

それらの作品もとてもオススメなので、ぜひご覧になってみてください!

 

 

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【アクション映画が好きな方に】

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“ドライヴ” 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン(Netflix)

『ラ・ラ・ランド』で真のスター俳優の仲間入りを果たしたライアン・ゴズリングですが、彼に大仕事が舞い込むきっかけになったのはこの映画『ドライヴ』の成功だと思います。監督のニコラス・ウィンディング・レフンは、最新作『ネオン・デーモン』がなぜか最もヒューチャーされてるように思いますが、代表作は間違いなく本作だと思います。それより今風でミーハーに仕上げたのが『ネオン・デーモン』で、よりニッチさを求めたのが『オンリー・ゴッド』だと思います。僕は、『オンリー・ゴッド』に出てくる極悪警察のオッサンが仕事し終わった後に歌うカラオケの生声が劇中は聞こえないのだけど最後のシーンでようやく聴けた時の「思ってたのと違う感」といったらなかったです。僕の一番のレフンとの思い出です。

 

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【カルチャー好きオタク女子に(男子でも)】

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“20センチュリー・ウーマン”  監督:マイク・ミルズ(Netflix, U-NEXT)

今作にエル・ファニングが出ていますが、同じエル・ファニング出演作で『パーティーで女の子に話しかけるには』というカルチャー推ししてそうな映画がありましたが、自分は断然こっちをオススメします。本作でも劇中でレインコーツ推しのシーンがあったり、もうちょっとサラッとしててほしいなと思うところもありましたが、カルチャーを入れ込みながら映画としても素晴らしい作品に仕上がってるのは間違いないです。同じくカルチャーを得意とするソフィア・コッポラも、この映画を観てもう一度初心に帰ってもらいたいです。

 

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【ストーリーの展開重視の方に】

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“21g”  監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(U-NEXT)

『バードマン』や『レヴェナント』でも有名なアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の作品は、それ以外の作品もどれも本当に面白いです。

本当は、『BIUTIFUL(ビューティフル)』という作品の方がオススメしたいですが、V.O.D.には無いのと、話もだいぶ重たいので、こちらの方がまだオススメしやすいかなと思いました。かと言って、こちらもかなりの重さで21g以上は確実にあります。

パズルのピースのように散らばっていた3人の人生が、映画の進行と共に徐々に繋がっていきます。

そういう展開は、サスペンスでよくありがちですが、本作はそれが繋がった時にスッキリ感ではなく逆にズッシリとくる展開です。

 

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【映画の持つ芸術性に浸りたい方へ】

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“ノスタルジア”  監督:アンドレイ・タルコフスキー(U-NEXT)

映画史にその名を刻むソ連の天才映画監督アンドレイ・タルコフスキーが、初めてソ連以外で制作した作品。

『惑星ソラリス』や『鏡』など、タルコフスキーは他にもたくさんの映画史に残るような作品を遺していますが、本作はイタリアのトスカーナ地方の素晴らしい景色を舞台にした本当に美しい作品です。

タルコフスキーの作品は、よく詩的だと表されますが、本作はまさにひとつひとつのシーンにおける会話や動作が時間をかけて丁寧に描かれており、その芸術性が遺憾無く発揮されております。

今の時代は映画を作ろうと思ったらスポンサーがつかないと良い映画が撮れません。そして、そのスポンサーに豊富な資金を捻出させるには“売れる”映画である必要があります。

当時、タルコフスキーが商業性など一切考えることなく自身の「精神の自由」に沿って通好みの映画を作り続けることができた背景には、旧ソ連政府がタルコフスキーの映画制作に対して全面的なバックアップをしていたからに他なりません。

 

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【実話に基づいた話】

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“牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件”  監督:エドワード・ヤン(Netflix)

1960年代の台湾で実際に起きた殺人事件を基にした傑作。4時間あるので、視聴のタイミングはどうぞお気をつけください。

殺人事件がテーマですが、サプペンスというよりはとても悲しい青春映画です。

当時の台湾の情勢や格差も描かれています。光と影のコントラストがとても印象的です。

 

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【韓国映画の凄さを見せつけられるサスペンス】

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“殺人者の記憶法”  監督:ウォン・シニョン(Amazon Prime, Netflix, U-NEXT)

「主人公がアルツハイマーで定期的に記憶を無くす」という設定は、クリストファー・ノーランの傑作『メメント』と似てますが、映画自体は韓国映画らしさが存分に発揮されています。続編で『殺人者の記憶法:新しい記憶』という別編集バージョンもあって、そちらはまだ観てないのですが、この映画の終わり方で十分満足してるので、そっちも観るかどうか迷い中です。

韓国映画は、今までほとんど観てこなかったのですが、去年からだいぶ観だして、他にも『殺人の追憶』『親切なクムジャさん』『哭声/コクソン』『バーニング』『タクシー運転手』『母なる証明』『弁護人』など、本当に素晴らしい作品が多いです。ちなみに『パラサイト/半地下の家族』はまだ観ていません。

 

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【心が洗われるような作品】

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“希望のかなた”  監督:アキ・カウリスマキ(U-NEXT)

アキ・カウリスマキ監督の作品は、まだ僕自身はそこまで多く観てる訳ではないですが、素朴で優しくて、どれも観賞後に余韻が心地よく残ります。色使いも洒落ててセンスを感じます。上で紹介した作品が内容の重たいものが多くなってしまったので、優しい気持ちになりたい方にはカウリスマキ監督をぜひオススメします。

 

 

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長くなってきたので、今回はこれくらいで終わりにしようと思います。

結果的にAmazon Primeで鑑賞できる作品が少なくなってしまってスミマセン。

でも個人的に3つのV.O.Dのオススメ順では、

U-NEXT>>>>>>>>>Netflix>>>Amazon Primeくらいの差があります。

 

G.W.が過ぎても、まだまだ国民に強いられる自粛生活も長引きそうなので、また頃合いをみて今回紹介できなかったオススメ作品もご紹介させていただければ、と思います。

 

 

そして、髪の毛が限界を迎えた際には、どうぞV:oltaもご利用ください。

感染防止対策を徹底してお待ちしております!

Short Hair

2020.04.05.

Posted on 04.05.20

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