今年もコロナ禍の一年となってしまいましたが、そんな中でもV:oltaは顧客様を始め、たくさんの方に支えていただき、今年も無事に一年を締めくくることができました。
V:oltaをご愛顧いただき、本当にいつもありがとうございます。
世界はコロナを経験して、今また新しく歩き出そうとしています。
自分たちもコロナを経験したことで、自分たちができること, すべきことを改めて見つめ直せるきっかけになりました。
社会は、コロナによってデジタル変革が7年早く進んだらしいです。
V:oltaにも様々なお仕事のお客様が通ってくださっていますが、リモートワークやデジタル化など働く環境が変わったという声も少なくありません。
美容師はどうかというと、感染対策をより徹底するようになった以外はやるべきことはそんなに変わっていません。
むしろ僕なんかは、機械化, 簡素化が進む中で、手仕事という職業により魅力や誇りを感じるようになりました。
その割にSNSとかで髪型を調べても、日本人のヘアスタイルでは同じようなテイストのものばかりが出てくるのではないでしょうか?(僕は日本人のスタイルは調べないですが)
美容師もせっかく手仕事の職業なのに、もっとそれぞれが違っててもいいのにとか思ってしまいます。
例えばお皿とかでも工場で作られた一分の狂いもない綺麗なお皿よりも、たとえデコボコでも職人の手作りの温かみが感じるようなお皿の方が、僕個人的には魅力を感じます。
自分もそんな仕事がしたいと思ってこれまで取り組んできました。
僕自身のカットは誰にでも必要とされるようなものではないと思います。
ですが、万人受けするようなものには決して備わっていない、“独特の風合い”みたいなものは年々出せるようになってきたのではないかと思います。
日本には古くから“乙”という言葉があります。
“乙”の上には“甲”があります。
有名な茶人に千利休という人がいますが、利休は豊臣秀吉の筆頭茶人を務めていました。
大名や皇族など、身分の高い人に茶を出す場合、“甲”のしきたりに沿った茶の入れ方をします。
最上級の茶碗や棗、掛け軸や花瓶であしらわれた茶室で、「これが最上級」だと決められた手順に則って茶を入れます。
茶を飲む側の偉い人は、それが満足で、それより劣るもてなしをされようものなら切腹を言い渡すくらい無礼なことになるので、茶人たちは最上級のもてなしができるように腕を磨きます。
しかし、利休をはじめ古田織部など、既にその域に達した優秀な弟子たちにとっては、もはや形式的な“甲”のもてなしばかりでは退屈で、芸術肌が多い茶人達同士のお茶会ではその“枠からはみ出た”もてなし方で互いに腕を競っていました。
例えば、柱にかける花入れには立派な竹を切ったものが使われますが、利休はある日、竹藪で雪割れをした竹を見つけます。
雪割れとは、雪が降るほど寒い日には、その冷気によって竹がパーンと割れ、その節と節の間に割れ目ができることを言います。
利休が見つけた雪割れの竹はあまりにも立派な割れ方をしていたので、それをあえて花入れにして使いその割れ目が表になるように配した(本来なら雪割れした竹は花入れには不良品なので使えない)と言います。
利休に招かれた茶人たちは、その裏を書いたような発想を目にして感服するわけです。
これが“乙”のおもてなしです。
今でもたまに使われる「乙だね」というのは、こういうところから由来がきています。
僕が“甲”のカットができるかと問われたら、筆頭茶人になれるような自信は決してないのですが、それでも基礎のカットもしっかりと教えてもらったので、今“甲”以上の“乙”を狙うことができているのだと思います。
まだスタイリストになれていないアシスタントの子や美容学生には、早くスタイリストになることが決して重要ではないと言いたいです。
スタイリストとして平均より上を目指せるような基礎の技術をしっかりと身につけた上でデビューする方が、美容師としてのキャリアを長く成功させる為には大切なことだと思います。
こんな美容師としての教訓みたいなことを言いだしてるあたり、自分も歳を取ったのだなと痛感している今日この頃です。
少し話がずれてきましたが、僕が理想のヘアスタイルを追求していくにつれて“正攻法”の枠を越えたようなカットにも日々挑戦できているのは、お客様が僕を信頼して任せてくれているということもありますが、それ以上に、僕自身がV:oltaに通ってくださっているお客様の知性や感受性を絶対的に信頼してるからこそ、自分が「良い」と思ったスタイルを臆することなくお客様に提供できています。
今までお店をやってきて何よりも誇れるものは、ヘアデザインの技術でもモードな感性でもなく、V:oltaに通ってくださっているお客様の“質”です。(言い方が良くないかも知れないですが)
そう心から思えるようなお客様方に通っていただいていることが、自分が少しだけ自信を持つことができているほぼ唯一の要因です。
まだまだ道半ばですが、これからも美容師として、美容室として、もっと高みを目指せるよう、来年以降も精進して参ります。
今年も一年間、本当にありがとうございました。
また来年もV:oltaをどうぞよろしくお願いいたします。
みなさま、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
V:olta 代表 中田 大助