gap PRESS MEN vol.58 MILAN/LONDON 2020-2021 A/W
2020.03.25.
Posted on 03.25.20
コレクション誌 gap PRESS の最新号は、2020-2021 AUTUMN&WINTER MILAN/LONDON の特集号です。
gap PRESSのメンズ版は、先シーズンのS/Sコレクションが発売されなかったので、今回はどうなのかなとちょっと心配してましたが、秋冬号はミラノ,パリともに発売されるということで、とても嬉しいです。
最近では、最新のコレクションから過去のアーカイヴまで手軽に見ることができる無料アプリの存在や、メンズコレクションをウィメンズのコレクションで合同で発表するブランドが増えたりと、紙媒体でのgap PRESS MENの存在意義も過去よりも薄れてきているのだと思いますが、だからこそ応援したいなと思う気持ちもあります。
中のコレクションも一部ご紹介させていただきます。
.
PRADA
PRADAは先日、ラフ・シモンズを迎え入れてミウッチャ・プラダと協業でクリエイションを行なっていくという趣旨を発表しましたが、PRADAにラフのエッセンスが加わるのは個人的にはとても面白いと思います。
プラダ・グループは、同じラグジュアリービジネスでLVMHグループやケリンググループが近年急成長を遂げている中で、少し伸び悩んでいる印象でした。
このメンズのコレクションを見ても、個人的には中途半端に写ります。
PRADAでも、コートなど多くのアイテムにロゴが目に付くようになりました。
ミウッチャ・プラダというデザイナーは、本来そういうことが嫌いなデザイナーだったように思います。
ミウッチャ・プラダは、クラシックやトラッドなコレクションを作らせたら天下一品のデザイナーです。
どこか昔ながらの伝統的な趣のあるムードを感じさせながらも、彼女の手にかかれば、それがモダンに洗練され、服が感情さえ持ち出したのかと思うほどの、ため息が出るくらい素晴らしい洋服を作ることができます。
PRADAは、ウィメンズのコレクションは常に素晴らしい印象を受けますが、メンズは過去の方が変な流行に囚われてなくて今より良かったように思います。
そういった僕のような一癖も二癖もあるモードを愛するメンズ達にとって、ラフ抜擢は期待せずにいられない人選です。
デザイナーとしても人としても頑固そうなミウッチャとラフは、長く続きそうな関係とは言い難いですが、ファッションに対する捉え方や考え方は互いにリスペクトし合えるような感覚を持ってると思いますし、その化学反応は今から本当に楽しみです。
.
GUCCI
GUCCIを牽引するアレッサンドロ・ミケーレは、デザインチームの一員として発表したファーストコレクションでモード界の度肝を抜いて以来、今日まで大変素晴らしいコレクションを発表し続けていますが、その期間の中でも変化を感じます。
最初の頃は、非常に現実離れした洋服だけどその世界観が素晴らしいという印象でしたが、最近のコレクションではどこか相変わらずブッ飛んでるけどスタイルはリアルに近づいているように感じています。
超上質のメルヘン思考から、リアルクローズの中に潜む猟奇的なハズシへと、デザイナーとして更なる進化を遂げているように思います。
かと思えば先日のウィメンズコレクションで、ティム・バートンも白旗を挙げざるを得ないくらいの超ド級の頭の中メルヘン全開のコレクションを持ってくるから、本当に凄いデザイナーだなと心底感心させられます。
描く世界観は全く異なりますが、同じく現在のモード界を牽引するデザイナーの一人であるエディ・スリマンとは、ほぼ同時期の時代にあった異なるファッションをインスピレーションにしているという点もとても興味深いです。
.
Jil Sander
現在のデザイナーであるメイヤー夫妻が就任した頃のモード界は、ストリート旋風が吹き荒れていました。
その頃の二人のクリエイションはストリート寄りのエレガンス・スタイルを軸としていました。
そしてストリートブームが収束した今は、綺麗めなスタイルの中にストリートライクな抜け感を出しているようなクリエイションに変化させています。
これは、Supremeのヘッド デザイナーを務めるなどストリートが得意なルークと、バレンシアガやディオールといったラグジュアリーブランドで経験を積んだエレガンスを知り尽くしているルーシーという、異なる畑出身の二人だから成せることだと思います。
二人の得意分野をその時のトレンドに合わせてデザインに振り幅を持たせることで、高いレベルで自在に時代に合わせることができます。
ここまで計算して2人を抜擢していたなら、経営陣も天晴れです。
.
ミラノばっかりじゃあれなので、ロンドンのブランドもひとつご紹介させていただきます。
CHALAYAN
もうすっかりベテランデザイナーとなったフセイン・チャラヤンですが、個人的にユニクロとコラボしたら面白いデザイナーだと思っています。
ユニクロとコラボするデザイナーは、ジル・サンダーに始まり、今はクリストフ・ルメール(騎手の方ではない)というユニクロ本体も深く影響を受けてそうなミニマルベーシック路線を主軸に、他にもJ.W.アンダーソンなどカッティングエッジなデザインを得意とするデザイナーとも組んでコレクションを発表してます。
このフセイン・チャラヤンは同じくミニマルなベーシックを得意としながらどこか一風変わったデザインに仕上げるのが得意なデザイナーです。
ユニクロがチャラヤンを組めば、今のユニクロが更にモードに一歩近くことができるように思います。
フセイン・チャラヤンが素晴らしいデザイナーの一人であるのは間違い無いですが、今のモード界における彼のポジションを見るとなんだか過小評価されてるような気がします。
チャラヤンにとっても何かきっかけとなるようなことがあれば、もっと多くの人が彼のデザインする洋服を着たいと思うようになるのではないかと思います。
.
以上、ブランドを一部抜粋して個人的なコレクション雑感を書かせていただきました。
また来月にはパリコレ特集号が届くので、その時にはそちらもご紹介させていただきます。
本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方は、待ち時間などにぜひご覧ください!