Posted on 01.19.20

年末年始は何かとバタバタとしてまして、毎年しれっと公開しているその年のベストアルバムを去年は書けなかったので、今になってやっぱり一応書かせていただこうと思いました。

 

去年で2010年代が終わるということで、俗にいうところのテン年代のベストアルバムを発表するメディアも多かったですが、その上位を見るとヒップホップやソロのシンガー, エレクトロニックの人達がほとんどで、ロックバンドで上位に入ってるのは本当に少なくなったなと感じました。

 

僕自身もロックも今も変わらずに好きですが、他の面白いなと思う音楽の幅が年々広くなってきたように思います。

僕も10年代のベストも考えてみましたが、何分、他の10年代ベストランキングを見てもこれもあったなと思うものが多過ぎて、ちゃんとお気に入りを全部思いだすだけでも困難を極めそうなので、早々に諦めました…

 

去年のアルバムだけでも、前半に何が出たかを何も見ずに記憶だけで思い出そうとしても、悪徳政治家の答弁のようなコメントになってしまいそうなくらい最近では僕の痴呆も進んできているので、ある程度他のランキングや自身のプレイリストも見返してからランキング付けしました。

 

大したものではないですが、よろしければ読んでみてください。

 

 

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1st.

FKA twigs – MAGDALENE

 

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デビューアルバムである『LP1』から5年の歳月をかけて発表された本作で、彼女はBjörkに次ぐ世界の歌姫として地位を確立したのではないかと思います。

BjörkもFKA twigsも近未来チックで、何か通ずるものを感じます。

本作のプロデューサーにエレクトロニック界において稀有な才能を持つNicolas Jaarを迎えたことは、BjörkがArcaと組んだ以上にコラボレーションのセンスを感じます。

彼女とNicolas Jaarの相性は双方の価値を間違いなく高めるものだったと思います。

 

マグダラのマリアから引用された本作は、婚約者との別れや子宮筋腫の摘出を経験するなど、彼女が受けた精神的,肉体的ダメージにおける感情の機微が繊細に表現されています。

 

 

先日行われた、Valentino Menswear Fall/Winter 2020-2021のパリコレの舞台において、ショーにおける生ステージを披露し、その美しいコレクションにより一層素晴らしい感情の彩りを加えていました。

 

彼女自身まだまだ若いですし、今後の進化も本当に楽しみです。

 

 

 

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2nd.

Andy Stott – It Should Be Us

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ミニマル・ダブ~ディープ・テクノにおいてシーンを牽引するUK・マンチェスターの素晴らしきレーベル〈Modern Love〉のオーナー, Shlom SviriがAndy Stottと出会って早15年以上。

Andy Stottは、Modern Loveにおいて確固たるエースの座まで昇り詰めるだけでなく、今では彼の新作を楽しみにしているファンが世界中にたくさん存在しています。自分もその中の一人です。

昨年末に発売された音楽誌ele-kingにおいて『21世紀DUB入門』とのタイトルが表紙に踊っていたように、今、エレクトロニック・シーンだけではなくアンダーグラウンド・シーンのいたるところでダブが姿形を変えて生み出されています。

音楽界では、それだけダブが アツい。

ファッション界でもトレンドがあるように、音楽界でもトレンドというものは常に存在します。

そういうトレンドが生まれる瞬間は、こういうのを今作りたいんだという作り手の創作意欲と、こういうのを今求めてたんだという聴く側の気分がうまくマッチした時です。

このAndy Stottの新作も、そういったトレンドの波の中にいるようなコアな音楽ファンの気分を見事に捉えたものだったと思います。

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3rd.

Thom Yorke – Anima

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10代後半はレディオヘッドが最も好きなバンドで、中でもその中心人物であるトム・ヨークはかなりのリスペクトを抱いておりましたが、そこから自分の音楽の知識が増えていくほどにレディオヘッドやトム・ヨークへの興味は以前よりは薄れてきていましたが、最近のトム・ヨークの動向にはまた興味が惹かれています。

僕も大好きな映画監督ポール・トーマス・アンダーソンの同名短編映画への楽曲提供のサントラとしてアナウンスされた本作ですが、映画を観ると、それはP.T.A.と言うよりはトム・ヨークの思想に近い映像作品に仕上がっていたように思いました。

かつてデヴィッド・ボウイは、ロンドンからアメリカに渡りロックスターとなった後、アメリカを離れベルリンに移住しました。

ドイツでデヴィッド・ボウイが影響を受けたものの一つにドイツ表現主義舞踏であるノイエ・タンツがあります。

トム・ヨークは、前作でも映画「サスペリア」(リメイク版)において楽曲提供を行っていますが、ルカ・グァダーニが手掛けた「サスペリア」もノイエ・タンツにリスペクトを捧げた映画でした。

今作Animaの映画の中で、トム・ヨーク自身もコンテンポラリーダンスを踊っていますが、それもノイエ・タンツの影響が強いものでした。

きっとトム自身も、近年、ノイエ・タンツに強く影響を受けだしたのだと思います。

トムがこれからもこのような道の進み方で歳を重ねていけば、もしかしたらあと20年後くらいにはまた自分にとって学生時代と同じくらいの熱量をその時の自分はトムに注いでいるかも知れません。

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特別賞

Burial – Tunes 2011-2019

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このアルバムは、新譜ではなくBurialのこれまでの活動において発表されてきたEPの曲を纏めたもので、年間ベストアルバムの順位の中に入れていいものなのかもわからない作品ですが、ここで紹介させていただきます。

 

今回も自分が気に入った音楽のベストアルバムを発表させてもらいましたが、普通に音楽が好きというくらいの人達からすれば、こんな自分でも相当詳しそうに思う方もいらっしゃるかと思いますが、v:oltaというお店を通じてコアな音楽好きのお客様とも沢山出会えたことで自分なんかよりもずっとコアに音楽を聴いている人は本当にたくさんいて、そういう人達と自分とのレベル差はロープレで言うと最初のステージクリアくらいとラスボス前くらいの歴然とした開きが知識的にも感性的にもあるなと痛感させられます。

それらのお客様のお陰で僕の音楽の幅も少しずつ広げることができ、それに応じて音楽から得られる楽しみも格段に増えました。

 

ひとつ、もしくは少数のアーティストを長年に渡ってずっと好きで応援し続けるような音楽の楽しみ方も大変素晴らしいことだと思いますが、星の数ほどいるアーティストを多角的に知って、さらにそこから掘り下げていくような音楽の聴き方は、疲れますがその分物凄く好みの音楽に出会えた時の喜びは格別です。

Burialに出会ったことが、自分の中ではアンダーグラウンドを掘り下げるきっかけになったように今では思います。

自分がそれまでアンダーグラウンドだと思っていたものが、実はオーバーグラウンドの中のアンダーグラウンドで、真のアンダーグラウンドはもっと下層に存在することを、Burialが出てきたあたりからそういう意識を持ちだしました。

その頃は、まだスマホもストリーミングサービスもなく、今よりも遥かに音楽を掘ることがスムーズにできない時代で、CDの価値もまだ高かったです。必死に音楽を調べてCDを買い漁ってましたが、今はCDは本当に買わなくなりましたし、自分よりとひと回り下くらいの世代以降の音楽の聴き方は自分とは全く異なるように思います。

 

そういう音楽界とリスナーとの関係性においても時代が大きく変わっていったその関節部分に存在して重要な役目を果たしたアーティストの一人がBurialだったと思います。

Burialの中で好きな曲のひとつに“Come Down To Us”という曲があるのですが、Burialの曲は10分以上ある長いものも多く、この曲も13分あるのですが、前半部分と後半部分で曲の構成が大きく変わります。

なんかそういうのも、時代が大きく変化していく狭間の時間の経過や環境の変化を、Burialが音楽を通じて表していた部分もあるのかな、とふと考えさせられたりします。

Burialは姿を表さないので、インタビューもほとんど受けず、ライブとかも一切しないですが、いつか表に出てきて来日するならぜひ観に行きたいと思っています。

 

 

 

 

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長くなりましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました!

1位より下位の方がコメント数が増えていくっていう……

 

去年あたりから、映画を観る本数も格段に増えたので、また機会があればそちらのレビューも書こうと思います。

No Music, No Life!!!