gap PRESS MEN vol.78
2025.03.22.
Posted on 03.22.25
gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter PARIS メンズコレクション特集号です。
表紙は、スパイク・ジョーンズが手掛けた映画『かいじゅうたちのいるところ』からイメージしたというsacaiのコレクションのものです。
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sacai
阿部千登勢さんがデザイナーを務めるsacaiは、生粋の日本のブランドです。
もともとはニットが得意なブランドで、僕もsacaiがまだコレクションとかしてなかった駆け出しの時代にニットを購入したことがありますが、とても面白い素材の使い方をしてて当時愛用していました。
その頃は、まだkolorなどを手掛けていた旦那さんの阿部潤一さんの方が断然有名で、商業的にもkolorとsacaiでは格差があったと思います。
ですが、ヨーロッパで広く受け入れられたのは結果的にsacaiの方でした。
コレクションを見ると日本人からすれば、sacaiはヨーロッパ的なデザインに思う方の方が多いかも知れませんが、ヨーロッパの人達からみればsacaiのクリエイションは“ジャポニズム”だと見られるわけです。
西洋のルーツでは出せない独特の感覚がsacaiにはあって、それがパリでも面白いと評価されている大きな要因です。
僕、個人的には折衷主義でもドリス・ヴァン・ノッテンのようなよりクセの強いブランドに魅了されていたので、sacaiの洋服はそれ以降買わなくなりましたが(今の方が当初より良くも悪くもコンテンポラリーになったというのもあります)、今ではsacaiはパリでも世界のバイヤーが注目する日本を代表するブランドのひとつに成長しました。
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LOUIS VUITTON
sacaiもそうでしたが、ここでファレルのヴィトンを取り上げるのも初めてです。
今シーズンは、KENZOやHUMAN MADEでデザイナーも務めるNIGOとコラボレーションしてのコレクションを発表。
ファレル・ウィリアムスもNIGOも、完全にアメリカンカルチャーをバックボーンとするクリエーターで、ヨーロッパのファッション史の長い歴史を継承しながらさらに新天地を開拓していくパリコレクションの舞台では、少し前の時代までは彼らのようなタイプの人物はパリコレのトップブランドにはいませんでした。
彼らが今、パリの主要メゾンのデザイナーに起用されているのは、ルイ・ヴィトン メンズデザイナーの前任である故ヴァージル・アブローの功績が大きく影響していると思います。
特にファッションにおいては強い自信とプライドを持っているヨーロッパの文化を中心とするモード界において、アメリカンカルチャーをパリに本格的に持ち込んだヴァージル(その少し前にGIVENCHYでアメリカンカルチャーを取り入れたコレクションを発表したリカルド・ティッシの存在も大きかったです)はあまりにも偉大だったと思います。
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DIOR
上でファレルやNIGOの話をした時により先駆者のキム・ジョーンズがおるやんけ、と思われた方もいらっしゃるかも知れません。
キム・ジョーンズは、NIGOなどが牽引していた90’s当時の日本の裏原ブームにもバックボーンのあるデザイナーですが、キムの提案するストリートスタイルは気品があって口の中でとろける高級チョコレートのようにラグジュアリーブランドでも浸潤するものでした。
キムは今シーズンでDIORを退任することが既に発表されました。
モード界はきっと彼を無職で放っておかないと思うので、近いうちにまた別のブランドに就任するニュースがあるかも知れません。
DIORでのキムのキャリアも本当に素晴らしいものでした。
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という感じのパリコレ雑感でした。
本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!