VOGUE ITALIA N.852

2021.09.16.

Posted on 09.16.21

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

 

トスカーナの美しいビーチに、色彩豊かな洋服のモデル達。

とても絵になる表紙です。

 

今号のテーマは“new beginnings”

コロナ以降の新たな時代への幕開けです。

 

ちなみに表紙は広げると3種類ありました。

 

 

隠れていた真ん中のは、顔がコラージュのアート作品みたいになっていて、右側のはボルタンスキーのパクリみたいになっています。

それぞれ、ファッション界の今後をイメージさせるようなポートフォリオです。

 

 

近年モードはアートと親和性を増してきています。

今から10年くらい前、どこか排他的な世界だったモード界はスポーツブランドに食指を伸ばしました。

幅広い層に人気のあるスポーツブランドとコラボすることでモードの知名度を広めたいという戦略が、そこにはありました。

そして更に、スポーツブランドからストリートブランドにも裾野を広げ、SNS時代の風にも乗り、モードは一気に開放されたものとなりました。

 

モード界(主にLVMHとケリング)をビジネス的に拡大させるという戦略が大成功を収めた現在、モード界が次の戦略として取り組もうとしている一つは、商業的に大きくなったことで以前に比べて少し大衆的になってきたブランドイメージを(売り上げを落とさずに)もう一度上昇させていくということです。

ファッションにおいてモードというものは一つの頂点でありますが、文化としてのヒエラルキーにおいてはファッションの上には芸術があります。

ファッションを芸術やアートと共鳴させることで、ファッション界からすればイメージが更に格調高いものとなり(プライス面においても)特別な価値を持たせることができますし、閉鎖的だったアート界においても(モード界がスポーツやストリートを利用したのと同様に)票田であるファッション層を購買層に取り込むことでアート界も裾野を広げることができます。

実際に近年、アート界の一般的な注目度も飛躍的に上がってきています。

ちょっと長くなりましたが、そんな感じのことを思わせるのが真ん中のポートフォリオです。

 

 

一番右は、とてもわかりやすいですね。

近年、どの企業においてもサステナブルは積極的に取り組んでいくべき時代になっていますし、そうすることが企業イメージの向上にも繋がります。

積み重ねられた古着と新品が混ざったような洋服の山は、服を捨てないで大切に着ようというメッセージや新品在庫の廃棄問題を表しているように思います。

 

惜しくも今年亡くなった、現代アーティストのクリスチャン・ボルタンスキーは、これの10倍くらい大きなサイズ感の古着の山を作って、その上からクレーンで服をつまみ上げては落とすということをやっていました。

上でもファッションとアートの間に存在する“目に見えないヒエラルキー”のことを書きましたが、このVOGUEの写真とボルタンスキーの作品においても、見るものにより深い意味をもたらしているのはボルタンスキーの方だと思います。

ファッションは芸術に比べると、どうしても表面的に寄ってしまうところがあります。

それの最たるところがインスタグラムなどのSNSだと思います。

.

もうこの時点でだいぶ長くなってしまいましたが、もうちょっと書きます。

ですが、今回は表紙以外のポートフォリオは紹介せずに、VOGUEの広告を見て感じたことを少し書きます。

 

 

各国ヴォーグをはじめ、モード誌の広告は今号の9月号が最も数が多くなり、その結果雑誌も分厚くなります。

暖かい春夏よりも寒くなる秋冬の方が着る服にもボリュームが出るので、人々の服に遣う金額も春夏と秋冬では一般的には秋冬の方が多くなるから、その消費を自社に呼び込む為にどのブランドも一番広告をかけるわけです。

 

個人的に、最近映画をよく観るようになって、ファッションの世界も映画からインスピレーションを得ているものが多いことに気づきました。

ファッションはトレンドを扱うので、インスピレーションになっている映画にもトレンドが反映されます。

 

.

わかりやすいところで、これは『地獄の黙字録』

 

 

.

こちらもモロにJ.L.ゴダール

 

 

 

これらは知ってる方も多いかと思いますが、どちらも映画界でも評価の高い作品&監督です。

.

こちらもヌーヴェルヴァーグな空気感です。

 

.

このロレアルの広告もシネマティックな雰囲気がありました。

 

どの監督の作品がインスピレーションになっているのかはわからないですが。

(ケリー・ライヒャルトとフランソワ・オゾンの間くらい?)

 

.

これらがインスピレーションを受けてそうな映画に共通するのは、シネフィル(映画通)が関心を持ってそうな作品で、なおかつ芸術性がありオシャレっぽいということです。

 

ここで重要なのは、コアなシネフィルがガチでフェイバリットに挙げているような作品だとファッション界においては“ウケにくい”ということです。

ファッション界でクリエイティヴ面を任されるような人物は映画や音楽などのカルチャーにおいて逆にコア過ぎる人はそう多くないのではないかと思います。(特に日本においては)

そういう面においてもエディ・スリマン(最先端のロックにも常に精通していながら、過去のニッチな音楽カルチャーも掘り下げている)は凄いと思います。

 

 

.

V:oltaに高校生の時くらいから通ってくださってるお客様で、今は東京でモード誌やブランドの広告などを手掛けているカメラマンの元で修行を積んでいる方がいるのですが、いよいよ独立するということで今のうちにということもあって、コロナ以降で久々に大阪に帰って来て先日カットしにきてくれました。

 

そのお客様が従事していた師匠もおそらく日本のファッション界の中心にいるファッションカメラマンの一人だと思うのですが(お店に置いてあった今月の某有名モード誌の表紙を見て、これも師匠が撮ったものだと教えてくれました)、彼自身も若い頃から類稀な感性を持っていると思っていました。

 

僕なんかは(俗に言うシネフィル系の)映画を本格的に観だしたのは本当に最近のことなのですが、彼は大学の頃は単館系の映画館でアルバイトをしてたくらいで(僕が映画に弱かったので、あまり映画の話はした記憶がないのですが)、今回はようやく映画の話ができると楽しみにしてて、ジャン・ユスターシュの話になった時に彼がユスターシュは一番好きな映画監督で、バイトしてる時に『ママと娼婦』のリバイバル上映に合わせて来日したベルナデット・ラフォンの劇場トークショーのインタビュアーをしたことがある(他のスタッフも彼がユスターシュのファンだから任せてくれたらしいです)と教えてくれました。

 

ユスターシュが一番(もしくはかなり)好きな映画監督だと心から思っているような人が日本のファッション業界の中心にどれくらいいるでしょうか?

おそらく、ほとんどいないのではないかと思います。

(それなのに彼は自分にはバックボーンが足りないと悩んでいる様子でした)

 

彼にはいずれ日本の(とりあえずは)ファッションカメラマンのトップの一人になってほしいと思っています。

 

.

マス層が海面だとすれば、ファッションは少し潜った海面に近いところくらいがインスタ受けするようなオシャレで、モードは更に深く潜ったところに位置するくらいだと思っています。

そこから下の深海はファッションでは光が当たらないところですが、カルチャーにおいてはそこが一番興味深くて面白いところだったりします。

 

.

余談に次ぐ余談で、最後まで読んでくださった方には感謝の気持ちしかないですが、個人的にはファッションやカルチャーを現状の知識ではそんな感じで捉えています。

 

.

最後に、やっぱり誌面のポートフォリオも一枚だけご紹介いたします。

 

 

バレンシアガが53年ぶりに発表したオートクチュールを用いた写真です。

なんだかんだ言って、モードはカッコイイですし、長年魅了されています。

 

僕も(独立した頃には知らなかった)ユスターシュやブレッソンがファッション以上に好きになりましたが、V:oltaのコンセプトがモードだという点はこれからも変わらないと思います。

もっとカルチャーを吸収して、ヘアデザインとしてのモードの質をもっと向上させたいです。

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方はぜひご覧くださいませ!

Posted on 09.12.21

gap PRESS MENのパリコレ特集号が届きました。

 

 

 

まずDIOR MENの美しいコレクションのフィナーレの写真が目につきました。

 

 

ウィメンズのクリスチャン・ディオールは、モード界で最も花が似合う(花を連想させる)ファッションブランドだと思いますが、メンズラインのディオールメンにおいてもランウェイを花意匠で纏うことによってジェンダーの垣根を曖昧にしようとする演出は、いかにもウィットに富んだキムジョーンズらしい流石のアイデアだと思います。

コロナ禍で、空が不気味な雲で閉ざされているような暗い気持ちになっている世界中の人達の心を、ファッションを通じてその雲の隙間から眩しいくらいに輝く光を差し込ませるかのような、そんな気分を感じさせてもらいました。

 

自分たち美容師もヘアデザインを通じて、お客様の心を晴れやかな気分にできるように、こんな時だからこそ、より一層丁寧でクリエイティブな仕事ができるように心がけています。

 

 

.

いくつかのブランドをピックアップして紹介させていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

.

コロナ禍において、ハイジュエリーやバッグなどが強いブランドは売り上げが好調なところが多い一方で、アパレル(洋服)には引き続き厳しい風が吹いていると聞きます。

 

ですが、新しく買った洋服を初めて着て出かける時の高揚感というのは、(その洋服が頑張って買ったものであればある程に)何とも言えない特別な気分にしてくれます。

 

本誌を見ているだけでも、少し華やかな気分になれると思いますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧になってみてください。

VOGUE ITALIA N.851

2021.09.03.

Posted on 09.03.21

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

今号は、“The Napoli issue”ということで、デンマーク人のモデル, Mona Tougaardの後ろに、SSCナポリ時代の若き日のディエゴ・マラドーナが映っています。

マラドーナは去年、惜しくも亡くなられましたが、追悼の気持ちが感じられる表紙でもあります。

ご冥福をお祈りいたします。

 

撮影は、ナポリの美しい景色を舞台にしており、素晴らしいポートフォリオが並んでいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロナ禍で海外にもなかなか行けない現在、こういう写真を見ているだけでもその地を旅している気分にもなって、心が晴れるようです。

 

 

.

私事ですが、昨日ちょうどエリック・ロメールの『クレールの膝』という映画を自宅で鑑賞したのですが、そのロケ地も“アヌシー湖”(フランス東部)という非常に魅力的な風景を持った避暑地で、映画の中ながらその景色の中での物語を観ているだけでも、良い気分転換になりました。

素晴らしい感性の映画でもあります。

 

ちなみに、監督のエリック・ロメールはアヌシー湖をロケハンで訪れた際に、青い湖と緑色の山からなるその風景から、ポール・ゴーキャンのタヒチの絵画を連想して、撮影監督にゴーキャンの絵画のイメージに色彩を似せるように伝えたらしいです。

「なんてハイソな感性なの?」と思われた方は、ぜひ観てみてください。

髭モジャモジャのアラフォーおじさんが主人公の、まさかの“膝フェチ”映画です。

 

人の感性というのは本当に様々で、『プラダを着た悪魔』みたいな映画をオシャレと思う方の方が絶対数では圧倒的に多いのだと思いますが、もっと繊細でモードに近いところで考え方や感性を磨きたいという方には、日本のヴォーグよりもイタリアンヴォーグ, 『プラダを着た悪魔』よりも『クレールの膝』をオススメしたいです。

 

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ。

Posted on 09.02.21

gap PRESS MENミラノ/ロンドン コレクションの最新号が届いたのでご紹介します。

 

 

 

本当はもう少し前から届いてたのですが、パリコレの号と一緒にご紹介しようと思ってたらパリコレ号の発売が遅れるとの連絡が来たので、先にミラノ/ロンドン号をご紹介いたします。

 

 

まず最初にこんな感じでコレクション全体のトレンドや傾向をわかりやすく紹介してくれています。

ここをサクッと見ておくだけでもモード界の大雑把な流れは掴めると思います。

 

今シーズンのコレクションをご紹介する前に、少しミラノコレクションの現状についても触れたいと思います。

 

上のトレンド解説にも“ノンバイナリー・ジェンダー”という文字があるように、近年ではモード界でもメンズとウィメンズの境目というのが薄くなってきています。

そういう流れから、メンズコレクションの発表自体を取りやめて、ウィメンズのファッションウィークで同時にメンズも混ぜて発表するブランドも増えてきました。

 

同時に、近年モード界はニッチな存在から、より商業的にも成長する為に(悪く言えば)どんどんミーハー寄りになっていっています。

 

もともとパリコレというのはトレンドの最先端を競い合うコレクションで、ミラノはというとトレンドに流されすぎないで伝統を大切にした最高級の服作りをするメゾンが多く存在し、ある程度棲み分けができていたと思います。

しかし、マス層にもわかりやすく伝えるには、職人的な服作りよりも、キャッチーで映える方が良いわけです。(残念ながら)

それならミラノよりパリで発表する方がいいんじゃねーの、というブランドが増えても不思議ではありません。

実際にJil Sanderなどは、近年ミラノからパリへと発表の場を移しました。

 

そんなモード界の動きもあって、今ミラノメンズコレクションで大きな注目を集めるようなブランドは、かなり少なくなっています。

.

そんなミラノにおいて、パリコレの中心ブランドばりに注目を集め、輝きを放っているのがミウッチャ・プラダとラフ・シモンズの協業体制になったPRADAです。

 

 

 

バミューダパンツの裾を捲り上げるなんて発想は、おそらくラフの革新性によるものだと思います。

ラフのストリート性とカルチャー性に、ミウッチャお得意のトラッドとエレガンスを融合させて、見事なハイブリットだと思います。

素晴らしい。

 

.

アヴァンギャルドからは少し距離を置いた、落ち着いた男性のエレガントなファッションなら現状のオススメは、エルメネジルド・ゼニア XXXです。

かつてのミラノらしいメンズらしさがあって、今っぽくもあります。

これなら日本の奥様方の、旦那さんにしてほしいファッションの上位に入るくらいのこなれ感と清潔感があるのではないでしょうか。

 

語尾の“XXX”に今後の多少の不安を感じていますが。

 

 

 

.

そして、流行らそうとか今の時代に合わせようとか言う気はサラサラなさそうに、毎度らしさ万歳の世界観でコレクションを発表しているブランドが存在するのもミラノらしさの一つです。

.

ETRO

.

DOLCE & GABBANA

.

GERGIO ARMANI

 

これらのブランドも応援したい気持ちになりますし、これからもそのメゾンの伝統をずっと大切にしていってほしいです。

 

.

ここからは余談になりますが、お客様でミラノにシャツ作りを学びに行かれてるお客様がいて、コロナ以降でようやく日本に帰って来れたと(ちゃんと自主隔離期間を取った後に)久々にカットしにいらしてくださったのですが、ミラノのシャツの考え抜かれたパターンや芸術的なまでの縫製の素晴らしさを学んで理解すると、日本のアパレルで売られているシャツの多くがその価格にクオリティが見合ってなくて、その強気の価格設定にビックリするらしいです。(ユニクロは逆に値段の割に悪くないと言ってました)

それでも日本では、そういうものの方が売れてるわけですから、まだまだファッションにおけるヨーロッパとの差は歴然としているのだと思います。

 

世の中が便利になって、情報に溢れてくると、なかなか細部のこだわりまで目が行きにくくなっているのだと思いますが、こだわりに気付ける目を養うことは一生の財産だと思うので、皆さんも日頃の生活でそういった細部にも注目してみてください。

 

『神は細部に宿る』

 

L’UOMO VOGUE N.850

2021.08.03.

Posted on 08.03.21

L’UOMO VOGUEの最新号が届きました。

 

 

表紙は、まるでタルベーラ監督の映画に出てきそうな彫刻のような皺が美しい御歳83歳の名俳優アンソニー・ホプキンスです。

新作『ファーザー』においても、アカデミー主演男優賞を受賞されました。

 

 

 

この年齢になっても、醸し出す雰囲気にはエレガンスと狂気が未だ健在です。

 

高齢のモデルでは、ニューヨークを代表する現代美術家のアレックス・カッツの写真も掲載されていました。

 

 

 

 

日本の雑誌LEONに対する当てつけなのでしょうか?

“チョイ悪”とは、こういうものなんだと。

 

構図も素晴らしいです。

 

 

もちろん、モード好き必見のポートフォリオも多数掲載されています。

 

 

 

 

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!

VOGUE ITALIA N.850

2021.07.30.

Posted on 07.30.21

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

今号のメインの特集では、ロンドンで活躍している日本人スタイリスト, Ai Kamoshitaさんがフューチャーされていました。

 

 

 

 

彼女は、現在の世界のモードシーンの中心で活躍しているスタイリストの一人です。

 

世界的に見てもファッションへの関心が高いとされている日本人でも、なかなかモードのトップクラスで活躍できる人材はそうそう多くないのが現実ですが、そんな世界から“ブッ飛んだ”感性の持ち主が集結しているモード界の中心での彼女の仕事ぶりは本当に素晴らしいです。

 

ファッションブランドでもそうですが、彼女のスタイリングをみても“ジャポニズム”の精神を感じます。

 

阿部千登勢さんのデザインするsacaiは、日本人からするとヨーロッパ的な雰囲気に感じる方も多いかと思いますが、ヨーロッパからみれば「ジャポニズム」と感じられています。

Yohji YamamotoやMame Kurogouchiがsacaiに比べるとずっと日本的なのは、日本人でも理解しやすいと思います。

そういった議論に値するものが、真の『クールジャパン』だと思いますし、個人的にはそういった世界観のものをオリンピックの開会式でも観たかったです。

 

他でも日本人の写真家Hiromixが担当した特集や、様々な人種や異なる宗教を持ったモデルを起用して多様性を表現した特集があるなど、東京オリンピックに関連させた号なのかなと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ。

VOGUE ITALIA N.849

2021.07.10.

Posted on 07.10.21

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

今号は『the do it your self issue』

 

ということで、D.I.Y.がテーマになっています。

 

当店のお客様でも部屋を少しづつD.I.Y.してるという方がいらっしゃって、いつも写真を見せてくださるのですが、その出来が既製品の遥か上をいっているので毎回驚かされています。

聞くと、素材やパーツを海外のサイトとかで見つけてきて取り寄せてるらしいです。

D.I.Y.の一般的なイメージは、お手頃なパーツを見つけてきて自作することでコストを安くあげつつも自分好みのオリジナルに仕上げる、みたいな感じだと思いますが、その方の作ったものを見てるとD.I.Y.でもお金を惜しまずに投資してさらに抜群のセンスと手の器用さがあれば、イギリス版のELLE DECOに載ってそうなものまで作れるのだなと思わされました。

 

本誌イタリアンヴォーグのD.I.Y.は、主に高級服を使ってスタイリングで表現するD.I.Y.の精神です。

 

 

 

 

 

 

 

小物撮りも流石のセンスです。

 

 

 

雑誌LEONの表紙に毎号「必要なのは“お金”じゃなくて“センス”です」というキャッチコピーが踊っているのですが、着飾る際の注意点としてこんなに的を得た言葉はなかなか他にないのではないかと思ってます。

しかも、チョイ悪オヤジ系として悪名高きLEONが言うから面白いです。

個人的にはLEONという雑誌にはそこまで関心が高くないのですが、チョイ悪で埋め尽くされた誌面の中にあるDIOR MENなどのハイブランドのスタイリング写真が並んだページだけはそこだけ異彩を放つほどにちゃんとモードなスタイリングをしていて、編集部はやればモードもできる上であえてチョイ悪の誌面を作ってるのだなと、関心させられます。

メチャクチャ余談な話ですが。。

 

センスがあってお金もある人は、まさに鬼に金棒です。

逆に、お金がそんなになくとも、センスさえ磨けば、賢いお金の遣い方ができようになると思います。

 

さあ、イタリアンヴォーグで感性を磨きましょう。

(変な宗教の勧誘みたいな持っていき方ですが)

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ。

 

L’UOMO VOGUE N.848

2021.05.25.

Posted on 05.25.21

L’UOMOの最新号が届きました。

 

 

 

テーマは『SKATE OF MIND』

スケーター達の精神がテーマになっています。

 

ここ最近、“mid90s ミッドナインティーズ”, “行き止まりの世界に生まれて”とスケーターに纏わる映画を2つ観ました。

 

僕はスケートボードは全くかじったこともないのですが、それらの作品からもスケーター達の精神というものを少し垣間見ることができました。

 

“mid90s ミッドナインティーズ”は、監督自身が過ごした1990年代という不安定で危なかしくも独特の美しさがあった時代を映し出した青春映画、“行き止まりの世界に生まれて”は、スケートボードを通じて出会った3人の若者の12年間を描いたドキュメンタリー映画、となっています。

 

どちらも素晴らしい映画でしたので、ご興味のある方はそちらもぜひご覧になってみてください。

 

中のポートフォリオも少しご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!

VOGUE ITALIA N.848

2021.05.23.

Posted on 05.23.21

イタリアンヴォーグの最新号が届きました!

 

 

 

天地あべこべの表紙です。

表紙は、ジェンダーレスな雰囲気漂うスペイン出身のモデル, Miriam Sanchezです。

 

彼女は、DSD(Disorders of Sex Development/性分化疾患。体の性に関するさまざまな機能・形・発達が、男性・女性の枠に完全には当てはまらない)を持ったモデルです。

 

近年、彼女のような、かつての“LGBT”の枠からも外れてしまう性的マイノリティのモデルを雑誌の表紙やショーのファーストルック等、注目が集まるところで起用する企業や媒体が増えていると思います。

 

世界基準の性的少数者の概念も“LGBT”から“LGBTQIA+”や“LGBTs”などとより多様性のある表記に変わってきています。

「QIA+」とは、

・Q(クエスチョニング)- 自身の性自認や性的指向が定まっていない、または敢えて定めていない人たち

・I(インターセックス)-  医学用語では、性分化疾患(DSDs)

・A(エイセクシュアル)- 無性愛者。性的指向がなく、他者へ恒常的に恋愛感情などをもたない人たち

を意味します。

 

 

これからの時代の子供達は、こういうことも道徳とかの授業で習うのでしょうか。

世界史ばりに深い理解力と暗記力が必要となってきそうです。

頑張れ子供達。

そして、自分たち大人も今の社会の変化を勉強してしっかりと対応していかないと、若手の教養人などから、どこかの政治家のように「時代遅れの旧式」と見られてしまうことになります。

それは全身ロゴだらけ+ハイカットスニーカー+サングラスの組み合わせよりもダサいことなので、絶対に避けなければいけません。

頑張ろう、大人達。

 

 

疲れた頭に、癒しのポートフォリオ群を少しご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方は、ご来店時にぜひご覧ください!

Posted on 05.12.21

AnOther Magazineの最新号が届きました!

 

 

今号は20周年記念号となっております。

 

だから気合が入ってるのか、ご祝儀で広告が集まりまくったのか、だいぶと分厚いです。

 

だいぶ前に、JHAというヘアメイクアップアーティスト(及び美容師)が参加する(コンテストの中で最も最高ランクに位置する)写真コンテストでグランプリを獲得されるような先生の講義に参加させてもらったことがあるのですが、ありがたいことにその打ち上げにも特別に参加させていただくことになって、その時にその先生が「(インスピレーション源に)イタリアンヴォーグの広告を必ずチェックしている」とお話ししてくださったことがあって、その時は言えなかったですが少し僕の思う部分と相違点を感じたことを覚えています。

 

僕もその当時からイタリアンヴォーグをはじめ他の海外ファッション誌が好きでたくさん買って読んでたのですが、特に当時のイタリアンヴォーグは全てのファッション誌の中で文句なくトップの存在でした。

ですが、ファッション関係者から一目置かれる理由は、各ブランドが掲載している広告が優れているからではなく、フランカ・ソッツァーニをはじめとするイタリアンヴォーグの屈指の撮影チームによる素晴らしいポートレイトでした。

雑誌の前半に並ぶ広告ではなく、中盤~後半あたりのポートレイト作品がとても芸術的で、僕は毎号それを楽しみにしていました。

 

もしかしたら、先生も広告“も”面白いという意味だったのかも知れないですし、そもそもヘアメイクというよりはファッション目線寄りの僕と、ヘアメイクで業界の頂点に立った先生とでは視点が少し異なるのだな、と後々思いました。

 

海外のファッション誌に掲載されているブランドの広告は日本版と違っていてそれだけでも面白いですが、広告の物量なら本誌AnOther Magazineとかの方が広告の数も多く、雑誌としてのクオリティも高くてオススメです。

 

もちろん、ポートレイトも(の方が個人的には)面白いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご興味のある方は、ご来店時にぜひご覧くださいませ!

VOGUE ITALIA N.847

2021.04.23.

Posted on 04.23.21

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

 

表紙はロシア出身のトップモデル, Natalia Supernovaです。

彼女は5人の子供を育てている母親でもあります。

ちょっと信じられないですね。

 

 

今号は外部エディターとしてキム・ジョーンズが編集に参加しているらしいです。

 

遂に天下のイタリアンヴォーグも、日本でたまに見かける“アイドルの一日署長”みたいなことをやりだしたのか、とちょっと複雑な思いです、、

 

その情報を入れて本誌を見ると、全部が全部キムがスタイリングしている訳じゃないと思いますが、全てがキムっぽく見えてくるから先入観って不思議です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特に最後の柔道着みたいなやつなんかまさに「吾輩はキムである」って感じです。

 

その中にイタリアンヴォーグらしさもしっかりとありますが、イタリアンヴォーグ・チームは世界の全てのファッション誌のトップに位置していると思うので、基本的には外部に頼らずに自分たちだけで素晴らしい誌面を構築していってほしいです。

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方は、ご来店時にぜひご覧くださいませ。

Posted on 04.13.21

Dazed & Confusedの最新号が届きました。

 

 

表紙は、アメリカの俳優であり女優でありモデルのIndya Mooreです。

 

ムーアは、トランスジェンダーであり Xジェンダーで、普段はthey/themの代名詞を使用しています。

現代における多様性の権利を主張し、確立させている旗手の一人です。

 

潔いまでに刈り込んだ坊主頭がとても格好良いです。

 

 

Dazedがムーアを巻頭に選んだのは、多様性を求められる現代において積極的にセクシュアル・マイノリティの人物を積極的に起用していこうというような意図ではなく、単純にカッコイイからという理由ではないかと思います。

 

 

先日、テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」のウェブCMに批判の声が寄せられましたが(帰宅した若い女性が「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」と笑う。という内容)、表現の仕方に少し“意識高い感”を感じたり政治的批判が少し含まれていたりと多少やり過ぎな部分もあったと思いますが、言わんとしていることは今号でDazedがやっているようなことと同じベクトルです。

 

Dazed & Confusedは世界を代表するモード誌のひとつです。

モードの最先端を理解しているような媒体やメディアは、当然社会問題にも明るいですし、影響力のあるリーダーとしてもそれらの問題に対して積極的に解決していくような姿勢を国際社会からも求められています。

 

DazedのUK号を普通の書店で見かけるようなことは皆無ですが、街の書店に置いているようなファッション雑誌などでもセクシュアル・マイノリティの人物が(たとえそれが社会的意識の高さをアピールする為であったとしても)起用された表紙を目にすることが珍しくなくなったとしたら、そこで初めて上記のCMのような内容が一般の人達にも多く共感してもらえるようになるのではないかと思います。

 

今、ファッション界では、中国新疆ウイグル自治区で今現在も行われているとされるウイグル族への強制労働問題が大きく取り上げられています。

 

「新疆ウイグル自治区」とは中国の最西端にあり、そこには主にトルコ系の民族を含む多くのイスラム教徒が住んでいます。

中国政府はこの地域に“施設”を設け、2017年から現在に至るまで、約3年に渡り100万人を越えるウイグル人が強制的に収容されてきたと言われています。中国政府は収容所であることを認めていないものの、これは第二次世界大戦以降に作られたもので最大の、民族的および宗教的マイノリティに対する強制収容所と認識されています。

そこに収容されているウイグル人は、強制労働を強いられています。

この強制労働によって生産されたものが、世界中のサプライチェーンで使われています。

 

その中には日本企業の名前もあります。

 

ウイグル族を支援するNGOが今回告発した世界の4社の中にはユニクロを展開する日本のファーストリテイリングも含まれていました。

(他の3社はスペインの“ZARA”, “フランスのSMCP”,アメリカの“SKECHERS” )

 

H&MやNIKEが強制労働が行われている新疆ウイグル産の綿花を使わないとの声明を発表する中、ファーストリテイリング社長の柳井さんは、先日の会見で自社商品にウイグル産のものを使用しているかどうかや今後使うかについても回答を濁していました。

「使用している」と答えれば世界的に非難を受け企業のイメージも大きく下がりますし、「使わない」と答えて中国人が自社商品に対して不買運動を起こされても困るからでしょう。

現在の日本の経済界においても影響力の大きい人物の一人でもあるのに、こういう立ち回り方は如何なものかと思います。

 

ユニクロの商品が安い値段で提供される、というのは自分たち消費者にとっては魅力的なことでもありますが、いくら安く提供する為でもこういうことを正当化してるのは企業努力とは呼べないと思いますし、企業のあり方としても良くないことだと思います。

 

そして大事なのは、政治にしても企業にしても、そのあり方の是非は自分たち国民一人一人の行動で襟を正させることができるということです。

一人一人の力では弱くとも、もっと多くの人が政治や社会に関心を持ち、注視できる国民がもっと増えたら、それだけで政治家や経営者が好き勝手できない抑止力になります。

 

日本は先進国と言われていますが、(自分も含めて)国民はもっと教養を養う必要があると思います。

変わらないといけないのは、政治よりもまず国民一人一人です。

 

雑誌の内容とは全く違う方向に長々と書いてしまってすみません。

 

中の写真も少しご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ。

Posted on 04.10.21

gap PRESS MENの最新号が届きました。

 

 

 

世界は今もコロナ禍の真っ只中ですが、こんな時でもコレクションは発表されています。

 

世界4大コレクション(パリ,ミラノ,ロンドン,ニューヨーク)の中でも、特にそのトップ2のパリとミラノでコレクションを発表するようなブランドやデザイナーは、いわばオリンピックに出場できるレベルのアスリート集団です。

それらのデザイナーはコレクションを通じて、自分の考えやクリエイションを表現します。

それは服を通じて表現する『現代アート』と言っても過言ではありません。

 

トップレベルのデザイナーの創るコレクションや洋服は、僕のようなイチ庶民の服好きにも勇気や感動を与えてくれます。

僕以外にも世界中の多くの人が同じような思いを持っていることでしょう。

 

今の時代、モード界の最高峰にもサステイナブルな服作りなど、現代社会を鑑みた制約がデザイナーにも重くのしかかっていますが、世界でもトップ中のトップの才能を持ったデザイナー達だけでも、もっと自由な環境で服作りをしてほしいなと思います。

 

 

.

DRIES VAN NOTEN

 

 

ドリスの今シーズンのテーマは「今の時代のための服」

アースカラーを中心に無駄を排しながらも、フォルムやバランスに少し変化を加えてモダンな新鮮さも感じます。

 

ドリスは長年インディペンデントでやってきましたが、数年前にブランドを身売りしてPuig(プーチ)傘下に入った時は、「ドリスも商業的になるのかな」と心配しましたが、ドリスはドリスらしいまま何も変わらず素晴らしいコレクションを続けています。

未だに雑誌に広告も出さず、ロゴを主張させた服も出しません。(僕のチェック不足ならスミマセン)

 

ドリスのファンは、そういう姿勢にも共感して応援している人が多いと思います。

僕もその一人です。

反面、ここだけは変にバズらずに、「目立たないけど、専門家の評価は高い」みたいな、服好きの為のブランドであり続けてほしいな、という気持ちもあります。

 

.

JIL SANDER

 

 

今季のテーマは『脆さと強さ』

まさにコロナ禍において、真価の問われているキーワードだと思います。

 

「疾風に勁草を知る」という中国の古くからの言葉があります。

勁草とは地面深くまでしっかりと根を伸ばした“強い草”のことを指します。

困難や試練に直面したときにこそ、今までやってきたことの真価が問われるという意味です。

 

 

コロナ禍において当店も影響を受けた時、お客様からこの言葉を励ましとして教えていただきました。

その時は、とても有り難いお言葉をいただいて深く感動したのですが、同時にこれでお店を潰したら絶好の笑い話になってしまう&お客様の面目を潰してしまうので、今一度気合を入れて仕事に励んでいる今日この頃です。

 

 

.

PRADA

 

 

ラフ・シモンズとミウッチャ・プラダ協業体制による初のメンズコレクション。

 

協業体制で初のコレクションとなったウィメンズの2021 S/Sコレクションは、「ラフ色、満開の桜ばりに全開」といった感じでしたが、今回のメンズコレクションではお互いの良いところが存分に出た素晴らしいコレクションだと思いました。

ミウッチャも「流石に2シーズンもあなたの好きにはさせないわよ」といった感じでしょうか。

 

これを見たかった。

 

.

他にも素晴らしいコレクションがたくさん掲載されていましたが、ご紹介するのはこれくらいにさせていただきます。

 

両誌ともお店に置いてますので、ご興味のある方は放置時間などにぜひご覧くださいませ。

VOGUE ITALIA N.846

2021.03.26.

Posted on 03.26.21

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

 

今号では、去年コロナ禍で発売された後世に語り継がれるであろう“白一色”の4月号を色んな作家やアーティストがそれぞれにデザインしたものが掲載されていました。

 

 

 

 

ポスト・コロナはどういう世界か、参加者それぞれの考えや理想, 信念などが現れていました。

この他にも素晴らしい作品がたくさん掲載されていました。

 

 

.

テーマ毎のポートフォリオでは、ファッション黎明期かのような髪型をしたモデルに最新のコレクションを着せている作品が面白かったです。

 

 

 

 

クラシックな髪型にモダンな洋服を合わせて、むしろアヴァンギャルドにさえ見せているところが素晴らしいです。

 

.

こちらのポートフォリオでは、古代の神話のような背景が使われていました。

 

 

 

先日、発表されたLOUIS VUITTONの2021秋冬ウィメンズ・コレクションでも、ギリシャ彫刻のようなデザインを得意とするイタリアのFornasetti(フォルナセッティ)と協業したコレクションを発表していましたが、世界への移動が制限された現在、デザイナーやクリエーターのインスピレーションは過去の歴史や文化だけに留まらず古代神話やタロットといった仮想世界のようなものにまで発想を飛ばしているものも少なくありませんでした。

 

 

 

これもコロナ禍が影響したコレクションのトレンドの一つだと思います。

 

 

.

まだまだ険しい時代は続きますが、モードを通じても知識や見聞を深めながらファッションを楽しみたいですね。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ。

 

 

 

 

Posted on 03.23.21

A Magazineから復刻版で発売された『A Magazine by Maison Martin Margiela』を購入しました。

 

 

復刻版なので、元々の書籍の上に透明のアクリルを載せてありました。

 

 

これを外すとオリジナル同様の書籍になります。

 

 

最近マルジェラを知ったり買うようになったという方の中には、もともとのマルタン・マルジェラが立ち上げたMaison Martin Margielaの時代を知らないという人もいらっしゃるかと思います。

 

 

今、このタイミングでA Magazineが本書を復刻したのは、Maison Margielaが現在において流行ってるというのもあると思いますが、マルジェラのドキュメンタリー映画『We Margiela マルジェラと私たち 』と同様に、かつての素晴らしいデザイナーズ・ブランドであったMaison Martin Margielaの精神が失われつつある(失われた)現在において、その素晴らしさの原点を今「Maison Margiela」を買いだした人達にも少しでも知ってほしいという想いもあると思います。

 

 

今の「Maison Margiela」は、デザイナー,ジョン・ガリアーノによるラグジュアリーブランドです。

かつての「Maison Martin Margiela」は、創業デザイナー,マルタン・マルジェラによる混じりっ気のないデザイナーズブランドでした。

 

 

創業デザイナーのマルタンがブランドを去ってからも素晴らしいメゾンのスタッフによってマルタンの精神は受け継がれていました。

 

HERMESのアーティスティック・ディレクターを務めたナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキー、ANN DEMEULEMEESTERのヘッドデザイナー, セバスチャン・ムニエ、BALENCIAGAのクリエイティヴ・ディレクターを務めるデムナ・ヴァザリア、そしてそのデムナを始めとする“元マルジェラ・デザインチーム”によって創設されたVETEMENTSなど、当時のMaison Martin Margielaには今のモード界の中心で活躍する素晴らしい人材がキラ星の如く在籍していました。

それらの優秀な人材は皆、「マルタンの下で働きたい」と集まりました。

マルタン・マルジェラのデザインの精神には、優秀なデザイナーでさえも一目置く素晴らしいものがありました。一目どころか、二目も三目も置いていたかも知れません。

 

 

“ラグジュアリーブランド”は、ファッションにそんなに詳しくない層にも憧れられ、実際に「欲しい」と思わせるようなブランドであり続けることを目指し、近年では“デザインの質”よりも“売り上げの良さ”の方がヘッドデザイナーの去就に影響を与えているようにも思えます。

 

一方、“デザイナーズブランド”と呼ばれるようなブランドは、同じカテゴリに存在している同業デザイナーやコアなファッション好きにも注目されるような存在である必要があり、ブランド存続の為に一定の売り上げをあげなければならないのは当然ですが、何よりもデザイナー自身の生き方や考え方というのが服作りに反映されています。

 

 

Maison Martin Margielaには、マルタンを心からリスペクトする優秀なデザイナーの雛鳥たちが集結し、マルタンと共に切磋琢磨することでメゾン全体のレベルも屈指のものとなりました。

だからマルタンがブランドを去った後も、Maison Martin Margielaの顧客の多くはブランドを離れませんでした。

 

マルタンなき後もデザインチームとしてマルタンの精神は受け継がれていましたが、ジョン・ガリアーノがデザイナーに就任しブランド名も Maison Margielaと一新してからは、服好きしか買わない“ニッチ”なブランドからは大きく変わってしまいました。

かつては「マルジェラしか着ない」とブランドを愛し続けてきた顧客のうち、今は逆に「マルジェラを全く買わなくなった」という人も少なくないと思います。

 

僕は「マルジェラしか着ない」というほどではなかったですが、過去に費やしてきた服の金額ではマルジェラは5本の指には必ず入るであろう、お気に入りブランドのひとつでした。

かと言ってデザイナーズブランドに執着しているわけではなく、ラグジュアリーブランドの洋服も良いと思ったものは分け隔てなく買ってきましたが、過去を知ってるだけに今の Maison Margielaは購買意欲が少し失せてしまっています。

 

 

マルタン・マルジェラの精神のひとつに「匿名性」というものがあります。

ここで挙げた写真にも、ラジカセやボトルを白く塗りつぶしたものがありますが、マルジェラの洋服のタグももともとは白い布切れが縫い付けられているだけで、そこにはロゴも何も書かれていませんでした。

 

その代わりに、表の生地にもはみ出させて縫い付けられた“四つ打ちステッチ”が、服好きにしか伝わらない「暗号」のような役割を果たしました。

 

 

 

“タビブーツ”がシリーズ化されるほど爆発的に売れたり、バッグも好調な現在では、その“四つ打ちステッチ”はもはや暗号どころではなく、ロゴ入りのアイテムを着たり持ったりすることとさほど大差がなくなってきたように思います。

 

以前読んだファッションエディターでありスタイリストの祐真朋樹さんの本に、「マルジェラはデザインはいいけど、あの四つ打ちステッチがどうも好きになれない」といったようなことを書かれていたのを覚えています。

しかも、まだガリアーノが就任する前のMaison Martin Margielaの頃の話です。

その時点で「四つ打ちステッチは切って着る」と言ってるのだから、本当に純粋にファッションを愛しているのだな、と益々尊敬の念を持ちました。

 

 

 

今は簡単に“モード”という言葉があらゆるところで使われてますが、「モードの本質」を少しでも理解する為にはより深い知識や教養が必要です。

 

ファッションや音楽,映画といったカルチャーは娯楽的にも興味を持ちやすいですが、世界情勢や政治, 世界の国々の歴史や文化など、大人になっても(なったからこそ)勉強すべきことは多いです。

 

僕の場合は、ファッションや音楽, 映画, 絵画などを通じて世界に興味を持ち、それらを深く理解する為に本を読んだりドキュメンタリー映画を観て勉強するのですが、学生の頃よりも大人になってからの方が勉強したい欲に駆られています。

こんなことなら大学や大学院に行ってみたかったです。

 

という感じで、古くからのマルタン好きの方にも、最近マルジェラを買うようになったという方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はぜひご覧くださいませ。