Posted on 03.23.21

A Magazineから復刻版で発売された『A Magazine by Maison Martin Margiela』を購入しました。

 

 

復刻版なので、元々の書籍の上に透明のアクリルを載せてありました。

 

 

これを外すとオリジナル同様の書籍になります。

 

 

最近マルジェラを知ったり買うようになったという方の中には、もともとのマルタン・マルジェラが立ち上げたMaison Martin Margielaの時代を知らないという人もいらっしゃるかと思います。

 

 

今、このタイミングでA Magazineが本書を復刻したのは、Maison Margielaが現在において流行ってるというのもあると思いますが、マルジェラのドキュメンタリー映画『We Margiela マルジェラと私たち 』と同様に、かつての素晴らしいデザイナーズ・ブランドであったMaison Martin Margielaの精神が失われつつある(失われた)現在において、その素晴らしさの原点を今「Maison Margiela」を買いだした人達にも少しでも知ってほしいという想いもあると思います。

 

 

今の「Maison Margiela」は、デザイナー,ジョン・ガリアーノによるラグジュアリーブランドです。

かつての「Maison Martin Margiela」は、創業デザイナー,マルタン・マルジェラによる混じりっ気のないデザイナーズブランドでした。

 

 

創業デザイナーのマルタンがブランドを去ってからも素晴らしいメゾンのスタッフによってマルタンの精神は受け継がれていました。

 

HERMESのアーティスティック・ディレクターを務めたナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキー、ANN DEMEULEMEESTERのヘッドデザイナー, セバスチャン・ムニエ、BALENCIAGAのクリエイティヴ・ディレクターを務めるデムナ・ヴァザリア、そしてそのデムナを始めとする“元マルジェラ・デザインチーム”によって創設されたVETEMENTSなど、当時のMaison Martin Margielaには今のモード界の中心で活躍する素晴らしい人材がキラ星の如く在籍していました。

それらの優秀な人材は皆、「マルタンの下で働きたい」と集まりました。

マルタン・マルジェラのデザインの精神には、優秀なデザイナーでさえも一目置く素晴らしいものがありました。一目どころか、二目も三目も置いていたかも知れません。

 

 

“ラグジュアリーブランド”は、ファッションにそんなに詳しくない層にも憧れられ、実際に「欲しい」と思わせるようなブランドであり続けることを目指し、近年では“デザインの質”よりも“売り上げの良さ”の方がヘッドデザイナーの去就に影響を与えているようにも思えます。

 

一方、“デザイナーズブランド”と呼ばれるようなブランドは、同じカテゴリに存在している同業デザイナーやコアなファッション好きにも注目されるような存在である必要があり、ブランド存続の為に一定の売り上げをあげなければならないのは当然ですが、何よりもデザイナー自身の生き方や考え方というのが服作りに反映されています。

 

 

Maison Martin Margielaには、マルタンを心からリスペクトする優秀なデザイナーの雛鳥たちが集結し、マルタンと共に切磋琢磨することでメゾン全体のレベルも屈指のものとなりました。

だからマルタンがブランドを去った後も、Maison Martin Margielaの顧客の多くはブランドを離れませんでした。

 

マルタンなき後もデザインチームとしてマルタンの精神は受け継がれていましたが、ジョン・ガリアーノがデザイナーに就任しブランド名も Maison Margielaと一新してからは、服好きしか買わない“ニッチ”なブランドからは大きく変わってしまいました。

かつては「マルジェラしか着ない」とブランドを愛し続けてきた顧客のうち、今は逆に「マルジェラを全く買わなくなった」という人も少なくないと思います。

 

僕は「マルジェラしか着ない」というほどではなかったですが、過去に費やしてきた服の金額ではマルジェラは5本の指には必ず入るであろう、お気に入りブランドのひとつでした。

かと言ってデザイナーズブランドに執着しているわけではなく、ラグジュアリーブランドの洋服も良いと思ったものは分け隔てなく買ってきましたが、過去を知ってるだけに今の Maison Margielaは購買意欲が少し失せてしまっています。

 

 

マルタン・マルジェラの精神のひとつに「匿名性」というものがあります。

ここで挙げた写真にも、ラジカセやボトルを白く塗りつぶしたものがありますが、マルジェラの洋服のタグももともとは白い布切れが縫い付けられているだけで、そこにはロゴも何も書かれていませんでした。

 

その代わりに、表の生地にもはみ出させて縫い付けられた“四つ打ちステッチ”が、服好きにしか伝わらない「暗号」のような役割を果たしました。

 

 

 

“タビブーツ”がシリーズ化されるほど爆発的に売れたり、バッグも好調な現在では、その“四つ打ちステッチ”はもはや暗号どころではなく、ロゴ入りのアイテムを着たり持ったりすることとさほど大差がなくなってきたように思います。

 

以前読んだファッションエディターでありスタイリストの祐真朋樹さんの本に、「マルジェラはデザインはいいけど、あの四つ打ちステッチがどうも好きになれない」といったようなことを書かれていたのを覚えています。

しかも、まだガリアーノが就任する前のMaison Martin Margielaの頃の話です。

その時点で「四つ打ちステッチは切って着る」と言ってるのだから、本当に純粋にファッションを愛しているのだな、と益々尊敬の念を持ちました。

 

 

 

今は簡単に“モード”という言葉があらゆるところで使われてますが、「モードの本質」を少しでも理解する為にはより深い知識や教養が必要です。

 

ファッションや音楽,映画といったカルチャーは娯楽的にも興味を持ちやすいですが、世界情勢や政治, 世界の国々の歴史や文化など、大人になっても(なったからこそ)勉強すべきことは多いです。

 

僕の場合は、ファッションや音楽, 映画, 絵画などを通じて世界に興味を持ち、それらを深く理解する為に本を読んだりドキュメンタリー映画を観て勉強するのですが、学生の頃よりも大人になってからの方が勉強したい欲に駆られています。

こんなことなら大学や大学院に行ってみたかったです。

 

という感じで、古くからのマルタン好きの方にも、最近マルジェラを買うようになったという方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はぜひご覧くださいませ。