Posted on 03.04.21

なんとも内容のペラペラそうなバカらしいタイトルをつけたのは、今回はサブスクで観られるとか関係なしのオススメ映画をいくつかご紹介させていただくにあたって、あらかじめハードルを下げておくという高等戦術なのであります。

それとガチのシネフィルの方にこの拙いレビューを発見されにくくしてるという機能も果たしています。

 

 

コロナ禍において数回、ステイホーム中にオススメの映画をご紹介させていただいたのですが、外出自粛を求められる状況とあってNetflixやU-NEXT等、映画のサブスクリプションサービスで視聴できるという縛りを設けてたのですが、ありがたいことに何人かの顧客様から「サブスクとか関係なしのオススメ映画を教えてほしい」というお声をいただいたので、今回、アホみたいなタイトルをつけて浅学菲才の身ではございますが、ここでご紹介させていただこうと思います。

皆様、どうぞ温かい目でご覧くださいませ。

 

最近は、今まで観てこなかった(気付けていなかった)古い監督の作品を中心に観ることが多いので、今回ご紹介させていただく作品は古いものが多いです。

観慣れてない方は最初難しく感じるかも知れないですが、ファッションや音楽,写真,アートと同様に、古い時代の方が作り手のこだわりが詰まっていたり、芸術性に長けているというものもたくさん存在します。

 

今回はそれらの素晴らしい名作の中からいくつかご紹介させていただこうと思います。

中には既に廃盤となりプレミア化されている作品もありますが、ご了承くださいませ。

 

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『白夜』  1971年  ロベール・ブレッソン

 

ロべール・ブレッソンでは、前にブログを書いた時に彼の作品『抵抗 -死刑囚の手記より-』と共に個人的に好きな監督の一人だとご紹介させていただきました。

 

本作『白夜』は、ロシアの小説家,ドストエフスキーの初期の短編を原作として、ブレッソンがその舞台を制作当時のパリに置き換えて脚色した作品です。

 

パリのポンヌフ橋を舞台にした、男女の恋の三角関係の話なのですが、まず映像が秀逸過ぎます。

端正でいて妖艶。

 

あえて全てを写さないカメラワークや、映像のカラーリングなど、その研ぎ澄まされたセンスの秀逸さには溜息さえも出ないほどでした。

そして、ただ単純に美しい映画かというと全くそんなことはなくて、主人公の男はボイスレコーダーに恋した女性の名前を連呼して録音したものをバスの中で(イヤホンもせず)再生させたり、街で綺麗な女性を見かけたらだいぶ気持ち悪い感じで後をつけまわしたり、偏屈な要素もあって退屈しません。

 

ポンヌフを舞台にした映画では、レオス・カラックス監督の『ポンヌフの恋人』も有名(タイタニックの船先でイチャイチャする有名なシーンは、ジェイムス・キャメロンによるこの映画へのオマージュらしいです)で、僕もこの映画を最初に観た時は、その映像で映し出されるパリの情景の美しさに感動しました。

「これほどまでにパリが美しく描かれている作品はそうそうあるまい」と思ってる中で、まさか同じポンヌフ橋を舞台にした作品で、それを上回る作品に出会えるとは思ってもいませんでした。

が、それもその筈で、カラックス自身がブレッソンを師と仰いでいたらしいです。

 

ちなみにドストエフスキーの『白夜』を元にした映画では、ルキノ・ヴィスコンティ監督による同名作品もオススメです。

 

 

こちらはモノクロ作品で、映画の舞台となる小さな街をセットで作り上げており、縦長の甘美なネオンサインや運河にかかる小さな橋など映像の美しさでも引けを取っていません。

 

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『召使』  1963年  ジョセフ・ロージー

 

 

監督ジョセフ・ロージーと主演ダーク・ボガードの組み合わせ(数は少ないですが)は、ティム・バートンとジョニー・デップのコンビの遥か上を行ってると思います。

(二人のタッグでは、この作品以外にも『できごと』もオススメです。)

 

少し前にポン・ジュノ監督の『パラサイト』がヒットしましたが、ジュノ監督は本作に間違いなく影響を受けてると思います。

こちらは富裕層への“パラサイト”超えの“下剋上による支配”です。

 

召使バレットが勝手にゴシック調に設えていくインテリアのセンスも秀逸。

 

僕はこの作品をきっかけにダーク・ボガードのファンになりました。

余裕のある方は、こちらもぜひブルーレイでの鑑賞をオススメします。

 

 

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『愛の記念に』  1983年  モーリス・ピアラ

 

愛を求めて奔放な恋に生きる15歳の少女,シュザンヌを演じるサンドリーヌ・ボネールは撮影当時まだ14才。

そんなまだ未熟な年頃の少女がこんな垢抜けた演技ができるのかと感嘆しました。

きっと安達祐実さんだってビックリするはずです。

 

オープニングのシーンで、海風をスカートに受けながら船頭に立つサンドリーヌをバックにオープニングクレジット、そして流れるBGMは“The Cold Song”

こんなに完璧なオープニングは、なかなかお目にかかれません。

 

ピアラ監督自身も主人公の父親役で出演しています。

 

 

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『皆殺しの天使』  1962年   ルイス・ブニュエル

 

 

ブルジョワ20人が集まった晩餐会で、深夜になっても、翌朝になっても、さらに数日が経過して果てには食料や水が尽きても誰も帰らない(帰れない)という、催眠術にでもかかったかのような摩訶不思議な不条理劇。

最後の教会のシーンでのリフレインも堪らないです。

 

タイトルも秀逸。

 

ルイス・ブニュエル監督では、サルバドール・ダリとの共作『アンダルシアの犬』が有名ですが、ブニュエルもダリと対等なくらい芸術的でイカれた監督だと思います。

 

ちなみに、本作の貴重なポスターを僕が師と仰いでいるお客様から少し前にプレゼントしていただいたので大切にお店に飾ってるのですが、1ヶ月を経とうとする現在、未だに誰にも気づかれてないです。

(気づいてて敢えて黙ってる方も中にはいらっしゃるかも知れないですが)

 

そのポスターがこちらです。

 

 

 

ちなみにポスターの黒い部分に反射してお店の内装が写り込んでますが、その部分に表紙の女性の顔が黒×黒でプリントされています。

あなたが おいでやす小田 なら、めちゃデカイ声で「わかるか〜」と突っ込んでることだと思います。

 

デザインもめちゃカッコよくて、作品と共にとても気に入っています。

 

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『鏡』   1974年   アンドレイ・タルコフスキー

 

本作は、タルコフスキーの自伝的映像詩です。

 

作者自身の過去の記憶のイマージュや当時のロシア社会の様子が、時間軸を行き来しながら断片的に構成され、かなり難解な作品ではありますが、映画史に残る素晴らしい作品となっています。

時間軸を歪ませた見せ方は、近年ではクリストファー・ノーランの得意とするところですが、この時代に既にタルコフスキーが最後のシーンで凄いことをやってのけていました。

 

最初のほうに草原に風が吹き抜けるシーンがあるのですが、これだけでも鳥肌ものでした。

その映像は、まるで自然まで操っているかのようでした。

 

タルコフスキー映画に共通する圧巻の情景美と共に、ラストで流れる「マタイ受難曲」は、本当に素晴らしいエンディングでした。

 

 

 

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『春のソナタ』  1989年  エリック・ロメール

 

こちらも既に中古市場で高値がついておりますが、エリック・ロメール後期のコント集〔四季の物語〕より、第1作目となる春の物語。

この作品をAmazonとかで調べたら、検索上位のほうに絶対にヨン様が現れます。

ベルイマンの『秋のソナタ』はヒットしないのに…

 

ちなみに、〔四季の物語〕の制作順は、『春のソナタ』,『冬物語』,『夏物語』,そして『恋の秋』となります。

 

僕自身、ロメールの作品はまだ1/3も観ていないくらいなのですが、この四季シリーズも本作以外は未視聴です。

ロメールが本当に凄いなと思うところは、何も特別なことが起こるわけでもなく、カメラワークも超自然体、それなのに時間が短く感じるくらいに面白いということです。

 

上の『愛の記念に』 のところでもオープニングが秀逸と書きましたが、本作もオープニングから素晴らしいです。

高校で哲学の教育実習をしている主人公のジャンヌが授業を終え、車に乗り込むところから物語は始まります。

車窓から流れる景色は、冬から春に移り変わろうとする街並みや田園風景。

そんな春の訪れの気配にワクワクさせられながら、画面に流れるベートーヴェンのバイオリン・ソナタが映像や気分と絶妙にマッチしています。

まるで俳句の達人かのようです。

 

フランス料理なんかでも一風変わった組み合わせの妙を楽しませるのが醍醐味のひとつですが、ロメールはそういう点においては京料理のように侘び寂びの効いた自然な調和を大切にすることを好んでるように見受けられます。

 

ロメールは、作品の色遣いにもこだわりを持っています。

本作でも主人公ジャンヌとそのいとこゲールが電話を変わるシーンで、最初に電話に出る白いシャツを着たゲールの背景には白い扉が映り画面は白に支配されますが、花柄のシャツを着たジャンヌに電話を変わるとカメラは背景に壁に飾られた花柄の壁紙を映し出します。それも、とても自然に。

 

 

テーブルを囲んだ4人のうちの2人が哲学論争を繰り広げるシーンでは、難しい専門用語を並べながらも二人ともなんとも流暢に言い争っています。

これもロメール自身が脚本の段階から演者(しかも素人同然)たちとディスカッションを重ね、2人とも哲学の教育を受けている(しかも一人は学士号を持つ)ことから考え出されたらしいです。

 

本作『春のソナタ』は、ロメールが70歳の頃に手掛けた作品なのですが、そんな年齢を微塵も感じさせないくらい映像は若々しく、そして洗練されています。

 

僕は、せっかくなので春の気配を少し感じるような日も出てきた最近、本作を鑑賞しました。

もうすぐ春になる少しワクワクした気持ちを抱えながら観た『春のソナタ』は格別でした。

 

〔四季の物語〕は『恋の秋』以外は既に所有していますが、今年は『夏物語』を飛ばして年末に『冬物語』を、来年の夏と秋にそれぞれ『夏物語』と『恋の秋』を鑑賞したいなと思っています。

(それまでに残る『恋の秋』も揃えておかないといけないですが)

 

 

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今回挙げた監督たちは、特にお気に入りの監督ばかりですが、今回ご紹介できなかった中にも同等かそれ以上に好きな監督もまだ何人もいます。

 

ただ、これら特に好きな監督は既に亡くなっている人も多く、その遺された作品は大切に鑑賞していきたいので、作品を購入していつでも観れる状態になっているものも増えてきたにも関わらず、まだそのうちの1/5も観終えていないのが現状です。

 

 

自分はお酒は全く飲めないのですが、これらの監督の作品を鑑賞する時は、極上のヴィンテージワインを開ける時くらいの特別感があります。

 

これらの作品は、何度も見返したり、作品の解説などをじっくり読み耽りながら、大事に大切に鑑賞していきたいです。

 

また他の旧作のレビューも、気が向いた時に少しずつ紹介させていただくかも知れません。

 

それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!