先日の休みに、ドイツ人写真家Helmut Newtonのドキュメンタリー映画『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』を観てきました。

 

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最近はファッション系の映画よりも、他に観たい映画が死ぬほどあるので、わざわざ映画館で観るかどうか迷ったのですが、好きな写真家ですし、前売り特典でイヴ・サンローランが女性用のスモーキングジャケットを発表した時の有名なポートフォリオを使用したクリアファイルが付いてきたので、まんまと策にハマって前売り券を購入してしまっていました。

ちなみにこういう映画にしては珍しく上映してたパークスシネマで観たのですが、初めてスクリーンに自分ひとりだけという状況を経験しました。

非常に完成度の高い造本を実現し、世界中の写真ファンを魅了し続けているドイツの出版社STEIDLを運営するシュタイデル氏の「ベストセラーで儲けたお金で、利益を重視しない作品を作る」という言葉を思い出しました。

僕も心の中で「鬼滅さん、ありがとうございます」と感謝しました。

 

 

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ヘルムート・ニュートンは、ユダヤ人の両親のもとドイツのベルリンで産まれました。

若い頃から写真に興味を持ち、同じくドイツのユダヤ人写真家, エルゼ・ジーモンのアトリエでアシスタントとして働きながら写真の技術を習得していきました。

 

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当時のドイツは、ナチスが権力を拡大し、ユダヤ人が迫害されていたので、ニュートンはドイツを離れシンガポールへと渡ります。

ニュートンの師匠だったエルゼ・ジーモンは、同じ頃、強制収容所に送られ、生涯を閉じました。

あまりにも残酷な時代です。

 

ニュートンはその後、オーストラリアに渡り、女優ジューン・ブラウンと結婚。

ここから写真家として頭角を表していきます。

 

VOGUEと契約しイギリスに渡ったニュートンは、ファッション誌をはじめ幅広い媒体で活躍し、世界的なフォトグラファーとして有名になりました。が、同時に彼の挑発的な作品は時に物議も醸しました。

 

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この写真の男性は、若き日のデヴィッド・リンチです。

 

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こちらは、シャーロット・ランプリング。

映画タイトルにある「12人の女たち」というのは、ニュートンのミューズたちを指すわけですが、ランプリングもそのうちの一人です。

 

途中、ランプリングのインタビューも出てくるのですが、この撮影の時は映画『愛の嵐』の公開直後だったらしいです。

 

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本作は、強制収容所のナチス高官とユダヤ人捕虜の禁断の愛を描いた作品で、ランプリングは演出的にも度胸のいるユダヤ人捕虜役を見事に演じていました。

ナチスの帽子を被り、軍パン姿で挑発的にダンスするシーンは、映画史における名シーンのひとつだと思います。

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ニュートン自身へのインタビューでは、レニ・リーフェンシュタールの名前も出てきました。

レニ・リーフェンシュタールは、ドイツの映画監督兼写真家で、ヒトラーから直々に自身のスピーチやベルリンオリンピックなどの撮影を依頼された人物です。

ニュートンは主に女性のヌードを撮影していましたが、レニが撮影した男性競技者の力強い映像も本当に素晴らしいものでした。

ちょうど彼女のドキュメンタリー映画『レニ』を観たところだったで、ニュートンの話していることがよく理解できました。

 

このドキュメンタリー映画の中でも、ランプリングの『愛の嵐』や、『レニ』など、それを知っていればより理解できることも増えますし、当時のドイツのことを勉強すればする程にその2作品のこともより深く理解できるようになります。

 

自分ももっと勉強してもっと知識を増やしたいな、と思う今日この頃です。

 

『レニ』はアマゾンプライムでも観れるので、ご興味のある方は、そちらもぜひご覧になってみてください!

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少し本題から話が逸れてしまいましたが、本ドキュメンタリーも、ファッション写真がお好きな方なら、ぜひオススメの作品です。

アナ・ウィンターが「ニュートンは、イヴ・サンローランやカール・ラガーフェルドのようなファッションが全盛の頃に産まれてきて幸運だった」と言っていましたが、本当にそう思います。

 

そして、その幸運によって齎された写真を楽しむことができる自分たちも、また幸運です。

 

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