Posted on 04.23.22

先日書いた『KYOTOGRAPHIE, そしてアピチャッポン・ウィーラセタクン』の記事の続きです。

 

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KYOTOGRAPHIEを無事に回り終えた僕には『光りの墓』が上映される出町座に向かう前に、もう一つ行かねばならぬところがありました。

これもお客様から教えていただいてた和菓子屋『嘯月』で事前に和菓子の予約をしていたのです。

前のブログを読んでくださった方は「まだ食べ物買うんかい!」と突っ込みたくなるところだと思います。

何たって僕のリュック(だけでは入りきらなくなってたので手提げ袋にも分けて)は、パンと焼き菓子, 麩饅頭と、既に潤沢なおやつで満たされてたのですが、1週間前に電話予約した頃の自分は今こんなことになってしまってることを全く予知してなかったので、あんなに楽しみにしてた初嘯月だったのに、この時は Jonny Nash & Ana Stampの『There Up, Behind the Moon』を聴いてなんとか折れそうな心を保ちながら自転車を漕いてました。

僕の置かれていた状況を少しでも詳しく知りたいというキトクな方はGoogle Mapとかで嘯月のお店のある場所を一度調べてみてほしいのですが、自分がKYOTOGRAPHIEを回っていた河原町周辺からは絶望的とも言える距離があって、事前に調べている段階では「春の京都の心地よい風を感じながら行けたらいいか」くらいに思ってたのですが、そんな余裕はどこにもなかったです。

しかも、この後観る『光りの墓』は、とんでもなく眠気を誘う映画との評判なんです。

極度の不安症の僕は、自転車を漕ぎながら、噂に聞く嘯月を買いに行くワクワク感よりも、断然『光りの墓』で爆睡してしまわないかの心配に精神が支配されていました。

 

そんなことを思いながらなんとか嘯月に行き着いて、無事に和菓子を買いました。

僕は嘯月のことはそこまで詳しく知らないですが、長年続いてきたであろう歴史と趣を感じる素敵なお店でした。

こちらも帰ってから日本茶と一緒にいただきました。

舌があまり肥えていない僕ですが、見た目も日本の原風景のような美しさがあって、味も京都らしさを感じるとても美味しいものでした。

 

映画以外の全てのタスクを終えた僕は、また自転車に乗って出町座へ向かいました。

 

出町座に着いた僕の喉は極限までにカラカラだったので、映画の座席を確保し終えた財布に返す刀で“自家製レモンジンジャー”を購入し、一気に飲み干した頃にちょうど入場時間となりました。

 

映画館の座席に腰を下ろし、一日動き回った後の心地良い疲労感とホッと一息ついた安堵感を感じながらアピチャッポン監督の『光りの墓』を鑑賞しました。

 

 

 

 

『光りの墓』は、原因が全くわからない眠り病にかかった兵士たちが運び込まれてくる、タイ東北部の町コーンケンにある仮設病院を舞台にした作品です。

 

本作は、そんな自分の疲れた心と身体を、不思議なヒーリング効果で優しく包み込んでくれる映画でした。

 

作中の謎く眠り病を患って病室で静かに眠る患者たちのように、自分も意識が覚醒と半覚醒を行き来しているような不思議な体験をしました。(眠りかけていたとも言えます)

 

タイを舞台にした映像はとても美しくて心地良く、画面から大量のマイナスイオンを浴びているようでした。

 

スピリチュアルやファンタジーの要素はあまり得意ではないのですが、それらの要素を複雑に取り込むのではなく、床に落ちた水滴が融合し,やがて小さな水たまりになっていくような優れた芸術性で昇華しているところに、アピチャッポン監督の非凡さを感じました。

 

本作はアピチャッピン監督の母国,タイでは上映されていません。

体制批判や反戦などのメタファーを含む本作が、タイの軍事政権の権益によって許可が降りないと製作陣が判断したからです。

 

今は、ウクライナ問題が大きくクローズアップされていますが、世界には他にも問題を抱えた国が多く存在します。

僕も日本人として、日本の国家の考え方に対して疑問に思うこともありますが、世界の国々の中でみればそれは贅沢な不満なのかも知れません。

 

鑑賞後は、京阪電車に乗り込み、再び、Jonny Nash & Ana Stampの『There Up, Behind the Moon』を聴きながら、映画の優しい余韻に包まれて帰宅しました。(たまたま『光りの墓』と空気感が近かったんです)

 

仕事帰りの人達で少し混み合ってくる車内でしたが、それさえもとても心地良い時間に感じました。

本作を映画館で観ることができて良かったです。

 

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という感じの京都一日旅でした。

長文読んでいただき、嘯月の場所をGoogle Mapで調べてくださった方も(もしいらっしゃったら)、ありがとうございました!

 

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