OTHER MUSIC

2022.10.13.

Posted on 10.13.22

先週の日曜日は、仕事終わりに雨の中シネヌーヴォへ向かい、『アザー・ミュージック』を観てきました。

 

 

2016年に閉店したニューヨークの伝説的レコードショップ, OTHER MUSIC の軌跡を追ったドキュメンタリー映画。

 

アザー・ミュージックの前の通りを挟んだ向かいには、メガストア, TOWER RECORDSが君臨する。

(アザー・ミュージックがオープンした1995年当時は特に)メジャーどころ中心の品揃えだったタワレコとは違う音楽を提供するから、OTHER(他の) MUSIC。

 

ニューヨークにある高級百貨店, バーグドルフ・グッドマンは、ファッションデザイナー達にとって「ここで取り扱ってもらうことができたら感無量」と思えるくらいの百貨店だったらしいですが、特にN.Y.のオルタナティヴ・シーンで活動するバンドマンやアーティスト達にとって OTHER MUSIC で自身の作品を取り扱ってもらえることは、それと同等の喜びがあったと思います。

 

それだけカルチャーを産み出せて世界中にファンを作れるOTHER MUSICのようなお店でも、時代の流れには抗えないのかと哀しい気持ちになりました。

 

自分も小さいですがお店を経営しているので、経営者の気持ちを思うと余計に無念に思います。

 

でも僕なら今の場所で維持費が厳しくなってきたとしても、お店を閉めることよりも少し離れた場所に移ってまた頑張ろうと考えてしまいますが、潔く閉店することを選択したOTHER MUSICはやっぱり凄いなと思います。

N.Y.の中心で、今の場所で、カルチャーを発信することに意義がある、と考えていたのかも知れません。

 

 

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また個人的な話をして申し訳ないですが、(先日のブログでも少し書いたのですが)僕の田舎は淡路島の南の方のド田舎と言っていい地域にあって、カルチャーなんてものはそこには無かったので、毎月1回アルバイトで稼いだお金を全て財布に詰め込んで、大阪や神戸に服とCDやレコードを買いに行っていました。

 

ついでに髪の毛も切ってもらおうと思って、当時のカジカジHとかに載ってた大阪や神戸の中心部にある美容室を予約して、その都度よく聴いてたり興味のあった海外アーティスト(バンド)の写真を必ず持って行ってたのですが、(自分の選択も良くなかったのか)どこの美容室に行ってもそれらのアーティストを知ってるような美容師さんには出会うことができませんでした。

知っていると言ってもバンドの名前や音楽を多少知っているということではなく、そのアーティストの好きなアルバムとか、もう少し具体的な話ができる人という意味です。

 

その時の僕は、(やってほしい髪型の写真を持って行ってるので)それと似たような雰囲気に仕上げてほしいという思いももちろんあるのですが、それよりも「このバンド、僕も好きなんだ」と言ってくれるような美容師さんに出会いたいという思いの方が強かったのかも知れません。

実際、そういう美容師さんと出会えてたら、イメージの写真と仕上がりが多少違っても僕は満足して帰っていたと思います。帰りのバスの中でカット中にした会話のことを思い出しながら。

 

 

僕が美容師になろうと思ったのは、自分の髪の毛を触るのが好きだからでもヘアスタイルそのものに格段興味があったのでもなく、ファッションや音楽などのカルチャーにおいてナードな感覚を持った美容師というのは実はかなり少なくて、でも(そういうものに魅了されていた当時の高校生の自分のように)そういう共通の感覚を持った美容師さんに切ってほしいと思うような人は一定数いるんじゃないかと思ったからです。

そういう感覚の人って、好きなものに対して自分なりのこだわりを持ってる人が多くて、皆と同じような感じにされるのは嫌だと思ってしまうから。

 

自分で身につける服は自分で選べますし、(僕はしないですが)メイクとかも自分で自分の好みに仕上げることができますが、髪型というのはほとんどの人が他力に頼る必要があります。

だから、例え大多数ではなくて一部の人にとってだけであっても、「この人の感覚なら任せられる」と思ってもらえるような美容師になりたいと思って美容学校に進みました。

美容師は、仕事中でも自分の好きな服を着て、好きな音楽を聴きながら仕事できますしね。

そもそもがそういう考え方なので、僕の作るヘアスタイルは、その人のファッションやスタイルの邪魔をするような類のものではないと思います。(かと言って確信的な自信はないです)

 

 

今のV:oltaには、お店をオープンした時では想像してなかったくらいいろんなタイプの方が通ってくださってて、それは予想外のことでもあるし本当にありがたいことで、いつも感謝の気持ちで一杯ですが、その中でも当店が一番守らないといけないと思っているのは、上に書いたような感覚を持った方々であることは今も代わりありません。

 

V:oltaがカルチャーを内包した美容室なのだということがある程度伝わるようになって(それはあくまで美容室というカテゴリの中ではという注釈付きで、自分なんかのやってることはOTHER MUSICとは比べものにならないくらいの素人レベルのものですが)、僕以上に(というかレベルが2段階は違うと思うような)カルチャーの各分野に精通したお客様も通ってくださるようになりました。意外とそういう方って特別な場所ではなく一般的なところに潜んでいるんだなと思います。

僕自身もそういったお客様から更に知識を増やしていただいています。これは僕の人生観を飛躍的に豊かに感じさせてくれるようなものになっています。いつも本当に感謝しております。

もっと勉強して、もっと知識を増やしたいです。

 

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なんかここ数日で店閉める人くらいの内容の濃さと文字数のブログを頻繁に書いてしまいましたが、まだまだV:oltaは今の場所で頑張りたいと思っていますし、オルタナティヴな美容室(爆)としての道を極めていきたいです。

 

ということで、また話が脇に逸れてしまってすみません。

音楽好き, オルタナティヴ・ロック好きの方は、ぜひ映画もチェックしてみてください!