Posted on 09.25.24

お客様から温かいメッセージの書かれた葉書をいただきました。

 

 

 

メッセージにある通り、こちらのお客様が当店に初めてカットしに来てくださったのは今から9年前。

彼はまだ高校を卒業したばかりのティーンネイジャーでした。

 

当時の彼はスキニースタイルが好きでスキニーパンツを履き続けていたことで、友達からも季節に関係なくいつも同じ格好をしているとからかわれていたそうです。

そんな彼に当時モードなスキニースタイルを打ち出していたエディ・スリマンのことを教えました。

 

 

その後、何回かカットに来てくれた後、次の来店まで1年以上の周期が空いた時がありました。

久々にカットしにきてくれた彼は、アートやファッションの勉強をするために今NYに留学していていると教えてくれました。

エディ・スリマンのもとで仕事がしたくて、その為に頑張って勉強しているのだと僕に伝えてくれました。

その時は彼の行動力に驚くと同時に、それがどんなに難しいことか(ラグジュアリーメゾンで働くことができる日本人なんてほんの一握りしかいない)を本当にわかってるのかな?と少し心配にも思いました。

 

 

それから彼がカットしに来てくれるペースはちょうど1年ごとになり、次の年に来てくれた時にはイギリスのファッションの名門,セントマーチンズに入学していました。

そしてその翌年に戻ってきた時には、セントマーチンズを中退して世界のファッションアカデミーの最高峰であるアントワープ王立芸術アカデミーに入学するのだと教えてくれました。

ファッション専門学生やファッション業界で働いているデザイナーやパタンナーの方なら、この時点でも彼がどれだけ凄いことをしているかが理解できるかと思います。

東大に入ることよりも遥かに狭き門を彼は飛び石のように潜り抜けたのです。

 

そして去年、卒業できる人数が毎年10人前後(入学時は50~60人)という最難関アントワープ王立芸術アカデミーのファッションバチェラー学科を卒業し、今回カットしに来てくれた時にアカデミーのエンブレムの入った葉書で僕に同アカデミーの大学院を無事卒業したことを伝えてくれ、メッセージの書かれた葉書をくれました。

 

メッセージを読んで、感動して泣きそうになりました。

彼は最後に書かれた一行を、直接声に出して僕に伝えてもくれました。

 

美容師を通じて、本来出会う機会のなかったお客様と知り合い、その人生に僅かながらでも影響を与えることができたということは、本当にこの仕事をやってて良かったと思えることですし、日常ではあまり役に立つことの方が少ない知識でも継続して勉強しているとたまにはなにかの役に立つこともあるのだなと嬉しく思いました。

 

これからも美容師として自分ができること、自分だからできることを考えながら精進して参りたいと思います。

 

彼はまたアントワープに戻り、そして来年にはラグジュアリーメゾンのいづれかで働いている筈です。

彼が一緒に働きたいと思っているエディ・スリマンがクリエイティヴ・ディレクターを務めるセリーヌとも連絡を取っているそうですが、今はエディがセリーヌを去る方向だと言われています。

彼は、エディがいないならセリーヌには行きたくないと言いました。

なんて格好いいセリフでしょう…

 

これからも彼の活躍をより一層楽しみにしていますし、また年に1回の帰国に合わせてカットしに来てくれる時には彼から直接ファッション界の話をたくさん聞かせてほしいなと思っています。

彼と出会って9年の歳月が流れた今は、僕なんかより彼の方が圧倒的にファッションに詳しくなりました。

普段は負けず嫌いな僕ですけど、彼の成長が何より嬉しいです!

 

この葉書は、僕の作業用デスクの見えるところに置いて、ずっと大事にしようと思います。