stay home movies

2020.12.05.

Posted on 12.05.20

冬に入り、新型コロナの感染拡大が各地で深刻な状況になってきています。

 

ここ大阪でも重傷患者用の病床の使用率が切迫してきており、今月15日までの外出自粛要請が出されました。

当店では、引き続き感染防止対策に努めて、粛々と営業いたしますので、どうぞご遠慮なさらずにご来店くださいませ。

 

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春の緊急事態宣言の時に、一度自粛生活中にオススメの映画をご紹介させていただいたのですが、また今回の自粛生活においても、ヨード入りうがい薬を超える貢献度を目指して、新たなオススメ作品をご紹介させていただこうと思います。

前回のブログを書かせていただいた時は、その後、たくさんのお客様から「オススメ映画観ました」と言ってもらえました。

ありがとうございます!

 

ちなみに、前回のオススメ映画を書いた時は、自分自身、映画に関してはまだまだ知識が浅かったのですが(かと言って今も全然映画好き方達の中では観てる数も質も上の方ではないと思いますが)、この半年間はかなり映画欲が増して(少ない自由時間の中では)それなりに本数も観ましたし、映画世界は(今の僕のレベルから見ると)宇宙のような広がりがあることに気づくことができました。

だから逆にオススメする映画に、前よりも更に自信が持てないのですが笑

 

何でもニッチになり過ぎないくらいの方が、良いと伝わる人数は相対的に増えていくのだと思いますが、自分自身もニッチな方を好みますし、当店はもともとニッチな感性の方の為に作ったサロンですので、今回はそういった作品も多くピックアップしています。

ゆえに誰もが共感するような作品ばかりを紹介するわけではないことを予め断っておきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

ステイホームを求められる状況を考慮して、映画のサブスクリプション・サービス(Netflix,U-NEXT,Amazon Prime,シネマメンバーズ等)で観られる作品の中からなるべく選んでいます。

それでは、ここ最近観た映画から中心にオススメ作品をご紹介させていただきます!

(比較的観やすいものから順にご紹介しています)

 

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『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』  ウッディ・アレン

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まずは、ダチョウ倶楽部なみに皆様の心を掴めるよう、ウッディ・アレンの最新作から。

オシャレ女子達が大好きなティモシー主演です!

 

ハーベイ・ワインスタインのセクハラ暴露をきっかけに起きた「#MeToo」運動で、アレン自身も過去の養女への性的虐待疑惑でアンジャッシュ渡部ばりに業界から干されましたが、その騒動以降初となる本作。

本人も作品で見返してやろうと内心相当気合いが入ってたのではないかと思います笑

 

アレンのしたことが本当だとしたら、それは決して許されないことだと思いますが、個人的にはだからと言って彼の作品の価値が損なわれるものではないと思います。

本作もウディ・アレンのセンスと、映画愛、ジャズ愛の詰まった、本当に素晴らしい作品でした。

本作は、雨のニューヨークが舞台で、そんな雨さえも愛おしく思えるようなロマンチックなストーリー。

現在、日本でもコロナの感染拡大がまた深刻さを増していますが、そんな暗くなりがちな心をホッと温めてくるような作品です。

アレンは、ジャズ愛好家としても有名ですが、本作でもジャズの選曲と使い方が本当に素晴らしい。

今、世界の女子達のアイドル, ティモシー・シャラメの役柄も、イケメンなのに懐古趣味でジャズと映画を愛するナードな主人公として使うところも実にアレンっぽくて、自分のような気難しいナード気取りの心も鷲掴みされました。これならティモシーでも許せるどころかブルーレイまで購入した次第であります。

インスタの写真で感性磨いてるような今の若い世代の人達には、特に観てほしいと思う作品です。

 

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『ナイブズ・アウト』   ライアン・ジョンソン

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コメディを織り交ぜつつ、質の良いミステリー映画です。

ブリティッシュなムード仕立てのアメリカ映画。

ダニエル・クレイグの役柄も、作品に良い味を出しています。

サスペンスやミステリーがお好きな方で、まだご覧になられてない方は、ぜひ観てみてください!

 

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『ジョジョ・ラビット』   タイカ・ワイティティ

 

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ビートルズの“I Want To Hold Your Hand”(ドイツ語ヴァージョン)の軽快なイントロで始まる本作。

舞台は第二次世界大戦中、ナチス親衛隊に憧れを抱く愛国心溢れるジョジョ少年の心境の変化を通じて当時のナチスドイツの過ちを伝える作品です。

本作とは別で最近、『シカゴ7裁判』というアメリカの社会派映画を観たのですが、どちらの作品も誰でも観やすいようにエンタメ性も取り入れながらも歴史風刺してて、こういう伝え方の映画も良いなと思いました。

 

ここ日本では、まず歴史風刺の映画も少ないように思いますし(そもそも戦争の反省に真摯に向き合っていないようにも思います)、それらを取り扱った作品は重たいものが多くて、今の時代の人達はなかなか観る選択肢に入らないんじゃないかなと思います。

そんな中でも、片渕須直監督の『この世界の片隅に』はとても観やすい内容の反戦映画で、こちらも超オススメです。

 

 

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『ケス』 ケン・ローチ

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こちらも社会派です。

観やすい作品を上から紹介していこうと思って書いてるのですが、このあたりからもしかしたら作品を「あまり知らない」という方も出てくるラインなのかなと思っています。

 

『私はダニエル・ブレイク』や『家族を想うとき』など、ケン・ローチ監督の作品は最近のものも社会問題を扱いながらも素晴らしいものばかりですが、初期の頃に作られた本作は特に傑作だと思います。

 

1960年代のイギリス,ヨークシャーを舞台に、労働者階級の家庭に生まれた少年ビリーとハヤブサ“ケス”との出会いとその暮らしを描いた作品。

イギリスの労働者階級社会のことを知るのにもオススメの作品です。

心を抉られるような社会風刺と、あまりにも美しい映像との対比。

ラストまで救いが無いですが、登場人物の中でも数少ない良心を持った大人である“少年に優しく接してくれる担任”と“肉屋の店主”に、こちらの心まで救われるような気持ちになりました。

日本でも、これからコロナによる不況と戦っていく必要がありますが、そんな時こそギスギスするのではなく、優しく穏やかな気持ちで周りと接したいと思います。

 

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『都会のアリス』   ヴィム・ヴェンダース

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ヴィム・ヴェンダース監督初期のロードムービー3部作の1作目。

ジム・ジャームッシュとかのモノクローム映画がお好きな方は、特にオススメします。

「少女とオッサン」の組み合わせでは『レオン』が有名ですが、レオン(22歳くらいまでの若い世代にはレオンがオススメ)も良いですが自分はこちらの方が断然好みです。

(注:僕はウッディ・アレンみたいな少女趣味は持っていません)

 

 

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『凱里ブルース』   ビー・ガン

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こちらは最近、アップカミングな若手監督,ビー・ガン監督の長編デビュー作。

最新作『ロングデイズ・ジャーニー この世の涯てへ』も観たのですが、そちらは映画後半で映像が2Dから3Dに変わり(僕は全編2Dで観ましたが)、さらにそこから60分驚愕のワンカットというのが話題になった作品で、個人的にはそんなアクロバティックなことしなくとも十分にセンスのある監督だと思うので、今回はこちらをご紹介いたします。

上記のような大胆なアイデアにも意欲的にチャレンジする監督ですが、タルコフスキーに影響を受けたというビー・ガンの作風は叙情的で抽象的です。

そして、そこに更なる革新性を感じます。

映像の色調などはウォン・カーウァイっぽくもありますし、タルコフスキー好きな方にもオススメです。

 

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『LETO -レト-』    キリル・セレブレンニコフ

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80年代のソ連でカリスマ的な人気のあったバンド,Кино(キノ)のストーリーをモデルにした音楽映画。

当時のソ連は、西側諸国の文化に触れることを政府が禁止していました。

本作ではそんな当時のソ連の若者達の抑圧された生活の様子も垣間見れます。

モノクロの映像に、時折カラーで色付けする「オシャレな」演出は、『コントロール』などのよりストイックな作りをしている作品を好む自分にはちょっと馴染みにくかったですが、“サイコキラー”のカヴァーなどサントラもよかったですし、これはこれで良い作品でした。

どちらかというとロック好き女子の方が好みそうな演出に思えました。

T-Rex, デヴィッド・ボウイ, ヴェルヴェッツあたりの音楽が好きな方も、それなりに楽しめるのではないでしょうか。

ただ、それらの単語やLPやポスターなどのアイテムを作中に詰め込み過ぎなキライも少しありましたが…とあくまで自分には少しキャッチー過ぎたと念を押しておきます笑

 

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『暗殺のオペラ』     ベルナルド・ベルトルッチ

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ベルトルッチ監督では『暗殺の森』の方がファンには人気が高いと思いますが、自分は本作の方が世界観がより好みでした。

素朴ながらセンス抜群の映像と、それをさらに高みへと誘う秀逸なカメラワークがとても印象に残っています。

ストーリーはミステリアスで、あえて掴みどころを外しているような作りなので、少し難解に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、圧巻の映像美だけでも観る価値があると思います。

 

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『嘆きのピエタ』   キム・ギドク

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韓国映画も一本。

債務者に無惨な暴力を振るい、障害者にしてまで借金を取り立てる主人公のもとに「あなたの母親だ」と名乗る人物が現れる、という話ですが、ラース・フォン・トリアー級にヤバい胸糞映画です。

韓国は、ドラマはアジア向けなのが多いですが、映画は素晴らしい作品が多く世界レベルだと思います。

ちなみに 「ラース・フォン・トリアーでヤバイやつください」と言われたら、問答無用で『アンチクライスト』をオススメします。

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『女は女である』    ジャン・リュック・ゴダール

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ゴダール映画の中では個人的に好きな作品は、もっと他にたくさんあるのですが、ただでさえ「コロナ鬱に注意」とか言われてるのに紹介映画のラインナップがどんどん陰鬱なものになってきてたので、ポップでオシャレで明るいものを。

主演のアンナ・カリーナのファッションやヘアスタイルは、現代において改めて注目度が再燃してきてると思います。

本作は、軽快なミュージカル仕立てで、カリーナに恋したゴダールがカリーナを美しくキュートに魅せる為に作った映画と言っても過言ではなく、特にオシャレを愛する女性の皆さまにオススメの作品です。

オシャレを愛する男子には『勝手にしやがれ』がオススメで、カオス好きな方は『ウイークエンド』、その3つの要素全て入ってるのが『気狂いピエロ』です。

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『ヘンリー・フール』    ハル・ハートリー

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「ポエムを嗜む素人」を題材にした映画では、ジム・ジャームッシュの『パターソン』を好む人が多いのだと思いますが、本作も名作です。

本作に登場する詩人は、ごみ収集車作業員のサイモン。

ハイソなイメージのポエムとは真逆に思える生活をしている彼が創作するポエムは決して万人受けするような「美しい」ものではない。

作中にも詩的なセリフがたくさん出てきますが、怒りや煩悩に溢れてて決して品が良くないものばかり。

しかし、品は良くない詩でも素晴らしくあることもできる。

そんな映画です。

 

 

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『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より- 』  ロベール・ブレッソン

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ロベール・ブレッソン監督の作品は、DVDやブルーレイを買わないと観れないものも多いですが、本作はU-NEXTに入っています。

僕自身の好みでは、サブスクの中ではU-NEXTが一番質と量の総合点が高いと感じています。

 

ロベール・ブレッソン監督の作品はDVD化されていない『やさしい女』を除くと、既に(ブルーレイがあるものはブルーレイで)フルコンプしました。

好きな映画監督を3人挙げろと言われたら、ブレッソンは間違いなく入れたい監督です。

かと言って、作品が手元にあっていつでも観れるのに、まだ半分も観てないのが現状です。

(5000円もする書籍とかは買って読んでるのですが)

 

自分は学生時代だけでCDを3000枚以上収集したくらい、好きなものはちゃんと買って手元に置いておきたいタイプなのですが、最近はCDをあまり買わなくなった(レコードは買います)変わりに映画のBDやDVDを収集することに心血を注いでいます。

その結果、映画を観れる時間(需要)と収集スピード(供給)のバランスが、供給過多の状況に追い込まれてて、ブレッソン以外にも「手元に置いておきたいけど、まだ観れていない作品」が少しずつ増えていっています。

そして、自分はその羅列したBDやブルーレイを見るたびに、この上ない幸福感を感じています。

(自分はお酒が使われてるケーキを食べただけでも平行歩行が困難になるくらい、お酒はからっきしダメなのですが)その感覚は家にワインセラー置いてヴィンテージワインを貯蔵している人の感覚に似ているように思います。

 

ブレッソンは既に他界してるので、今ある作品を観てしまったら、もう新作は観れない訳です。

だからブレッソンに限らず、過去の名作を観る時は、なるべくこちらの心・技・体が完璧に整ってる状態で鑑賞したい、と思うから、特に好きな監督の作品は、どうしても「ここぞ」というタイミングが来るまで残しておきたいとなるのです。なんなら、今から老後の楽しみに取っておくのもアリだと思っています(積み立てNISAみたいに)。

 

ブレッソン監督は、自分の作品を“映画”と呼ばずに“シネマトグラフ”と称して、プロの俳優や女優の芝居がかった演技を嫌い、自身の作品でも“モデル”と称した素人を起用することを好みます。

本作、『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より- 』も然り。

本作は、ナチス・ドイツによって収監されたレジスタンス闘士の脱獄劇を描いているのですが、作りは主人公フォンテームにのみフォーカスしたカメラワークで、セリフも必要最小限。

ブレッソンの手法は、無駄を極限まで削ぎ落とした(限定的に伝わってくる情報の)中で、観る側に文間を読ませるわけです。

得られる情報は少ないですが、しっかりと理解して観ないと、そこに映像やセリフとして映し出されていない監督の意図を汲み取ることはできません。

現代ではクリストファー・ノーランの作品が「頭を使う映画」としても有名ですが、ノーランとブレッソンでは“マンガ”と“純文学”くらいジャンルが違います。もちろんブレッソンが“純文学”です。

しかも本作はまだブレッソン初期の頃の作品で、さらにこの先、ブレッソンはその手法を洗練させ、確立させていくわけです。

 

1950年代の作品ですが、最後の脱出シーンはとても静かですが緊張感があって非常にスリリングです。

 

本作が面白かったという方は、同じ脱出サスペンスものでジャック・ベッケル監督の『穴』もオススメです。

こちらも昔のフランス映画で、実際に起きた脱獄事件をもとに作られており、なんと本作には実際の脱獄を試みた囚人の一人が俳優として起用されています。

ただ延々と穴を掘るだけの映画で、こんなにも面白いのかと思わせられました。

 

他にもご紹介したい作品はたくさんあるのですが、長くなってきたので、今回はこのあたりで終わりにさせていただこうと思います。

ご興味の湧いた作品が少しでもあれば幸いです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!