Posted on 09.03.22

gap press MENの最新号はパリコレ特集号です。

 

 

表紙は、もうコレクション見てなくともどこのブランドのものかわかります。

(見てますけども)

この悪趣味スレスレのスタイリング。

90’sのダサいトレパンを彷彿させるかのような鮮烈な赤パンツ。

上半身はセンス抜群のモダン・フォーマル・エレガンス・スタイルで、まるでパンツは絶対に写ってはいけないリモート勤務の商談かのようなメリハリの効いた着こなし。

 

そんなミッション・インポッシブルなスタイリングを成立させることができる唯一のデザイナー,ドリス・ヴァン・ノッテンのコレクションのものが表紙を飾っています。

 

 

とは言っても(僕が年老いていっているせいか)ドリスも年々デザインが派手になってきている印象があります。

だから探すんです。

色とりどりに輝く宝石の山のようなコレクションの中から自分が着たいと思うものを。

 

それが本来、モードの楽しみ方だったと思います。

今はSNSなどで誰かが着用していたりバズっていたりするものを皆が欲しがる時代になってしまいましたが、個人的には高いお金を出してハイファッションの洋服を買うなら、なるべく人とは被らないもの、そして誰の基準でもなく自分の基準で良いなと思えるものを買いたいという考えで、今までモードと付き合ってきたつもりです。

 

僕はデザインが気に入っただけじゃ服は買えないタイプで、その服を作っているデザイナーの生き方や考え方という要素もとても大切に見ています。

 

話が逸れて恐縮ですが、コロナ禍の時に人生で初めてSupremeの洋服を買いました。

僕が大好きなバンド, My Bloody ValentineがSupremeとコラボして商品を出して、しかも本来なら朝から行列に並ばないと手に入らないものがコロナ禍ということもあってオンラインでも販売されるということで、その発売時間にたまたまパソコンの前にいた僕は「そういえば」と思い出してふとSupremeのホームページを開いてみたらまだアイテムが残ってたのでシャツを一枚購入したのですが、結局今の今までそのシャツは着ることはおろか一度も袋からも出していません。

Supremeというブランド自体は大変魅力のあるものだと思いますし、もはやカルチャーのひとつになっているほどの存在ですが、やはり「自分じゃないな」という気がして着ることを躊躇してしまっています。

もっとフランクに服と付き合える性格だったならともたまに思いますが、それならこれまでの自分自身の生き方や考え方(そんな大したものじゃないんですけど)そのものを否定することになってしまうので、Supremeのシャツは今後も多分着ることはないんだろうなと思います。

 

今年引っ越しをした際に、今まで買って増やし続けていた洋服をある程度(泣く泣く)処分したのですが、ドリス・ヴァン・ノッテンの服は結局一枚も処分できませんでした。

ドリスのコレクションを見ていると一見スタイリングが若くも見えますが、そこには年齢を重ねても着続けることができる洒脱で計算されたデザイン性があるのだと思います。

ドリスの服を買った時は「この服と一緒に年齢を重ねたい」という思いがより一層強いです。

 

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CELINE by HEDI SLIMANE

 

僕は音楽が好きで、その中でも特にインディロックは大好きなのですが、エディ・スリマンがディオール・オムを立ち上げた時、そのモードなメンズファッションとインディロックの融合を強く感じるコレクションを見て一瞬で虜になりました。

 

今、CELINEを買う人の中にはYouTuberみたいな目立ちたがりの人もたくさんいると思いますが、エディのスタイルの根幹にあるものは今もインディロックの精神であることは揺るぎありません。

そこを理解してCELINEを買っている人は、購入層の1/300もいればいい方なのではないでしょうか。

 

エディ自身もDIOR HOMMEの頃よりも今のほうが(過去のニッチなムーヴメントの知識も掘り下げており)更にロックに精通していると感じています。

DIOR HOMME, SAINT LAURENT, そしてCELINEと、どのメゾンに雇われようがエディはエディだなと思わせるクリエイションやその一貫した姿勢は本当に素晴らしいです。

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RICK OWENS

 

 

ブレないと言えば、Rick Owensもマジでブレないです。

コレクションを発表しているブランドで、一番芸術性が高いのはリック・オウエンスだと個人的には思っています。

僕はアルチザン系の洋服も買っていた頃もあって、広告も打たずコレクションも発表しない代わりにその全精力と資金を服作りに注いでいるアルチザン・ブランドの作る商品は、ラグジュアリーブランドとは一線を画した素晴らしいものがあります。

特によく買っていたm.a +のものは、今も変わらず着ています。

財布もm.a +の一枚皮のものを、もう10年近く使い続けています。

コレクションブランドのアイテムは買った時が最も魅力的だというものがほとんどですが、アルチザン系のアイテムは使えば使うほどに愛着とともに味が出てきます。

m.a +の財布は、これから先も長く使い続けると思います。

 

Rick Owensは、一定の格と知名度のあるコレクションブランドの中では、最もアルチザンの精神があるブランドだと言えます。

服好きの中ではリックをきっかけにアルチザン系のブランドにも興味が出て知識を増やしていく方も少なくないと思いますし、そういう意味でもRick Owensがパリコレで新作を発表し続けていることでもたらされているモード界への貢献度というものは潜在的にもかなり大きなものだと思っています。

 

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という感じのパリコレ雑感でした。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ!