Posted on 04.16.25

昨日のお休みは、久々に京都へ。

ちょうどKYOTOGRAPHIEも開催されている時期でしたが、今回のお目当ては二条城の二の丸御殿台所と御清所を舞台に開催されているアンゼルム・キーファー展を目掛けて行ってきました。

 

 

アンゼルム・キーファーは、ドイツを代表する現代アーティスト。

特にナチス・ドイツの過去やその後のドイツ人の集団的記憶と罪の意識を主題にすることが多く、戦後ドイツ美術において極めて重要な人物です。

 

 

本展のタイトルにもなっている『SOLARIS』は、ラテン語で“太陽”に関する言葉。

太陽はその光で地球にエネルギーを注ぎ込む存在であり、キーファーはこれまでもモチーフにしてきました。 太陽から自然の移り変わりのサイクルが生まれ、また宗教や哲学の出発点でもある。という意味が込められているそうです。

 

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僕が観に行った日は、小雨の降る曇り空の天気でしたが、キーファーの作品にはそれくらい湿った天気の方が合ってるのかなと思ったりしました。

 

 

庭園にそびえる高さ約9mの巨大な彫刻“ラー”

ラーは、エジプトの太陽神の名前です。

小雨の降る曇り空をバックに、「その気になれば、大地を全て沈めるほどの大雨だっていつでも降らすこともできるんだぞ」と言わんばかりの威圧感と迫力がありました。

 

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建物内に入っても最初に待ち受けている《オクタビオ・パスのために》に圧倒されます。

 

 

歴史ある二条城の空間とも合いなって、その場の空気さえもなにか独特なものに感じました。

 

近くで見ても凄い質感を出しているのがわかります。

 

 

内覧会でパフォーマンスを行った田中泯さんによる音声ガイドを聴きながら、素晴らしいロケーションと作品を堪能しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示されている作品は、一部を除いて自然光のみでの展示なので、人によっては天気の悪い日に行くと見辛いと感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、アンダーグラウンドな雰囲気の方が好きな僕にはこれくらいの曇り空での鑑賞の方がちょうど良い明るさに感じました。

 

図録は当日持ち帰ると実に重たいというのがこれまでの経験上わかってきたので、事前にオフィシャルサイトで購入しておきました。

 

 

図録を見るのは、実際に作品を見てからにしたかったので、今日から少しずつ復習してキーファーについて理解を深めていきたいと思います。

 

この後、映画館とKYOTOGRAPHIEの展示会にもひとつだけ行ってきたのですが、そのことも時間があれば後日少し書こうと思います。

キーファー展は、まだまだ開催されていますので、ご興味のある方はぜひ京都まで足を運んでみてください!

Posted on 03.30.25

日野浩志郎さんを中心とする日本のバンド,goatが、スイスの振付師,Cindy Van Ackerのダンス作品『Without References』の為に手掛けたスコアが素晴らしいです。

 

 

パフォーマンスの映像は一部YOUTUBEにも上がってますが、ダンスパフォーマンスもとても素晴らしいです。

こういう公演がもっと日本でも観れるようになってほしいです。

 

ご興味のある方は、ぜひ映像と共にご視聴してみてください!

 

 

今月の絵画

2025.03.23.

Posted on 03.23.25

いつも絵画を持ってきてくださるお客様が、また新しい作品を持ってきてくださいました。

 

 

ディスプレイで飾っているDreamsploitationというアーティストのカセットのアートワークが絵画に描かれたモデルのシルエットと絶妙な距離感の類似性があったので、せっかくなのでそちらも入れて撮ってみました。

 

今回持って来てくださった作品は、今年に入って描かれたものだそうです。

ここ大阪にも連日押し寄せているインバウンドの旅行者を描きたかったそうです。

日本人は絶対選ばないような独特のセンスでプリントされたTシャツを着ています。

でも、この構図や色彩のタッチで、そのヘンテコなデザインさえもセンス良く見えてくるから芸術は面白いです。

肘のところに小さく描かれているミャクミャクは、最後に描き足したそうです。

ずっと後で見返した時に万博の年に描いたとわかるし、これを吉村知事が見たら思わず笑みが溢れそうです。

 

ということで、万博に行くつもりの方も、行く気なんてさらさら無いという方も、ご来店の際はぜひお近くでご覧になってみてください!

Posted on 03.21.25

先日のお休みは、シネヌーヴォでアラン・レネ監督の1968年作『ジュ・テーム、ジュ・テーム』を観てきました。

 

 

愛に破れ、自殺未遂した主人公が回復後に参加したタイムトラベル装置の実験で1年前の自分を追体験することになる。

しかし事故が発生し、装置が暴走。

結果的に彼の意識は過去の断片的な記憶をランダムに飛び回ることになる…

 

というストーリーで、いかにもアラン・レネ節炸裂といった作品でした。

 

 

アラン・レネでは『去年、マリンバードで』の方が断然有名ですが、本作も映画の作りが面白かったです。

 

クリス・マイケルの『ラ・ジュテ』、ファスビンダーの『あやつり糸の世界』、ノーランの『メメント』などの理系脳を感じるSF作品でありつつ(ラ・ジュテ以外は本作の方が先)、恋愛における繊細な感情を独特な表現手法で映像化してて、観ている自分もいつの間にか夢うつつに微睡んでしまっていました。

 

ご興味のある方は、ぜひ映画館に足を運んでみてください!

 

UKマンチェスターのエクスペリメンタル・デュオ,Demdike Stareと映像作家Kristen Pilonとの共同プロジェクト『To Cut And Shoot』

 

 

ピアノを軸にフィールドレコーディングやディストーテッド・ノイズ,ドローンの重厚なレイヤー、そして美しく狂気的なオペラのソプラノが絡み合い、とても魅力的な音世界を形成しています。

 

Kristen Pilonは映画も手掛けているらしいですが、本作にもどこか映画的なストーリー性も感じます。

 

久々にDemdike Stareの健在ぶりを感じて、嬉しくなりました。

 

ロベール・ブレッソンの名作『白夜』の4Kレストア版の上映に合わせて、パリのジュエリーブランド,SERGE THORAVALから作品とコラボレーションしたバングルが発売されるというので、ブレッソンファンの僕は何だかよくわからないけどこれはちょっと欲しいかも知れないと思って、発売日の開店時間から阪急百貨店のH.P.FRANCEさんにわざわざ電話をかけて商品をお取り置きしてもらうまでして、先日のお休みに無事購入することができました。

 

 

電話対応してくださった店員の方はとても良い方で、僕が男だったからか「サイズが少し小さいかも知れないですが、大丈夫でしょうか?」とわざわざお電話をかけ直してくださって確認してくださいました。

僕はお恥ずかしながらオッサンなのにガリガリという最悪体型なので、サイズ表記を見て多分入りそうだと思ってたし、もし入らなくてもオタク気質の僕には保有しているということが最も大事で入るか入らないかはもはや二の次なのですが、取りに行った時に試着させていただいたら案の定問題なく入ってしまいました。

メチャ恥ずかしかったです。

 

もういい歳なのに電話までかけて女性もののブレスレットを取り置きするというかなりキモい行動で無事に商品を確保できたその日の仕事で、阪急百貨店(及びハービスENT)で働かれてる顧客様がご来店くださってて、好きな映画とコラボしているブレスレットを買いに月曜日に阪急に行くんですとお伝えしたら、なんとその方はH.P.にお勤めだったようで(どこのブランドで働いてるかまではわざわざ聞いてないこともあるので)「もしかしてSERGE THORAVALですか?」と言い当てられてしまいました…

もう、目出し帽被って取りに行きたくなりました。

 

 

映画『白夜』は、ある夜、画家のジャック(ギヨーム・デ・フォレ)がポンヌフで思い詰めた表情をしている美しい女性マルト(イザベル・ヴェンガルテン)に出会うシーンから始まります。

セルジュ・トラヴァルは、二人の男女が恋と愛にうつろう四夜を描く本作にちなんで、“夜”をテーマに限定バングルを制作。

表面には、18世紀に生まれたロマン主義を代表するイギリスの詩人 ジョン・キーツが、フィアンセに宛てた手紙から着想を得て、”AVEC TOI COMBIEN TENDRE EST LA NUIT(君と一緒だと 夜はどれだけ 優しいのだろう)”という、情緒的なフレーズが刻まれています。

とても素敵な刻印ですが、これも商品を取りに行く僕にとっては更にハードルが上がってしまいます。

せっかく映画とコラボしてるんだから、そこは主人公ジャックがマルトを思ってカセットテープに録音したセリフを入れてくれた方が個人的には尚のこと嬉しかったです。

 

ロシアの文豪,ドストエフスキーの小説『白夜』を原作とした映画は、本作のロベール・ブレッソンともう一人,イタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティも描いていますが(こちらも素晴らしい)、ブレッソンが描く本作の主人公はこのブレスレットをお取り置きした僕よりも遥かにキモくて最高なんです。

映像も色遣いも本当に素晴らしいですし、『白夜』はシネフィルだけではなくファッション関係の方が観てもとても参考になると思います。

大阪でも来週から上映が始まりますので、ご興味のある方は、ぜひ映画館に足を運んでみてください!

 

商品を取りに行ったら、特典でトートバッグやポストカードなどもいただきました。(注:Blu-rayは私物)

 

とても嬉しい。

 

左下のBlu-rayは私物で、残念ながら現在は廃盤になってしまっています。

映画館で働いていたお客様が教えてくださったのですが、このBlu-rayが発売された時はロベール・ブレッソンの作品でDVD化(Blu-ray含み)していない作品のうち『白夜』か『やさしい女』のどちらかの版権が取れるってなって『白夜』が選ばれたそうです。

最初に『白夜』を観た時は、よくぞこちらを選んでくれたと思ったものですが、その後に『やさしい女』を観れた時には、こっちもめちゃくちゃ良いやんけと複雑な気持ちになったことを覚えています。

 

ということで、カット中、僕の手首に細くて華奢いシルバーのブレスレットが光っていたとしても、そのことには何も触れずにどうぞそっとしておいてください。

Posted on 02.19.25

先日のお休みは、映画監督,アキ・カリウスマキが故郷作った映画館,キノ・ライカのドキュメンタリー映画『キノ・ライカ 小さな町の映画館』を観てきました。

 

 

キノ・ライカは、カウリスマキ監督と共同経営者の作家ミカ・ラッティ氏が2021年に開館させた、フィンランドの小さな町カルッキラにある小さな映画館です。

 

 

周りから「田舎に映画館を作っても儲からない」と言われても、カウリスマキ監督の目的はそこではありません。

自らも朝7時から夕方5時まで作業し、仲間らと作り上げた手作りの映画館。

 

 

 

アキ・カウリスマキの映画を観る時は、いつもカルーセル麻紀が脳裏に浮かびます。(名前しか知らんけど)

 

カルッキアの自然も素晴らしかったし、映画館も本当に魅力的で、いつか行ってみたいという気持ちになりました。

劇中の音楽には、本作にも出演しているカルッキアに住む日本人,篠原敏武さんが歌う日本語の曲が使われていました。

本編の最後の方に、カウリスマキの盟友とも言えるジム・ジャームッシュのインタビューもあったのですが、そこで篠原さんの曲を流してジャームッシュがじんわりと聞き込んでいるシーンがありました。

 

 

ジャームッシュの映画ではかっこいいロックが流れることが多いですが、そのジャームッシュとカウリスマキのセンスを象徴するような篠原さんの歌う曲との対比がなんとも味わい深かったです。

どちらも素晴らしい映画監督です。

 

このドキュメンタリー映画は、カウリスマキ好きならマストですが、まだカウリスマキの映画を観たことがないという方は、ぜひそちらからご覧になってみてください。

控えめなキャストの演技に、フィンランドらしい美しい色彩がどの作品も素晴らしいです。

 

カウリスマキ監督も、キノライカも、どうか末永く健在でありますように。

今月の絵画

2025.02.16.

Posted on 02.16.25

いつも絵画を持って来てくださるお客様が、今月も新しい作品を持ってきてくださいました。

 

 

二人のシルエットが良い感じですね。

こちらは2017年に描いた作品だそうです。

 

作品内に“Just The Two of Us”とありますが、こちらは別の作品でも見たことがあります。

この同じテーマでいくつも作品を描いているそうです。

 

同じテーマを持って作っていても、その時々で全く違った作品になるのだから面白いですね。

 

ご来店の際は、ぜひお近くで作品をご覧になってみてください!

Posted on 02.16.25

エレクトロニック・ミュージックのパイオニア,Ariel Kalmaとプログレッシヴ・パーカッション・トリオ,Asa Toneによるコラボ作『O』

 

 

これは素晴らしいアルバムです。

 

コロナ・パンデミックの最中、オーストラリアの熱帯雨林にあるアリエルのスタジオで偶然彼に出会ったことで今回の作品に繋がったとこですが、そのスタジオのある場所の光景が目に浮かぶようなエキゾチックなムードに都会的ながらリラックス感漂うエレクトロニックサウンドが溶け合い、最高の音世界を創り上げています。

 

アルバムアートワークも音に合ってて非常に良いです。

 

コロナのパンデミックは世界的に大変な出来事でしたが、それがきっかけで生み出されたものを見たり聴いたりすると、少し救われるような気持ちにもなります。

 

Posted on 02.13.25

いつも自作の年賀状を持ってきてくださる美術講師のお客様から、今年も年賀状をいただきました。

今年は、小豆島のギャラリーで開催されるグループ展にも作品を出展されるらしく、とても素敵な名刺みたいなDMもいただきました。

 

 

左側が年賀状で、右側がアーティスト名刺です。

年賀状は、毎年、有形の作品を実際に作った後、写真で撮ったものを年賀状にされています。

今年は蛇年なので、蛇足がテーマだそうです笑

 

大阪万博も、チャーミングな要素を入れるなら、これくらい毒っ気のある世界観でやってほしかったです。

もしも今の世に岡本太郎が生きていたら、今回の万博を見てどう思ったでしょうか?

きっと、まず入口であの超高級な木のリングを蹴っ飛ばすところから始めていた筈です。

 

右のDMもとても素敵なデザインです。

展覧会は、近年アートなギャラリーや施設もたくさんできている瀬戸内海の小豆島でG.W.くらいまで開催されているそうです。

旅行で小豆島に行く予定のある方は、どこかのギャラリー(どこに出展されてるかは聞くの忘れてしまいました。。)でnature call ABさんの作品を見かけることがあるかも知れませんね。

nature call ABというアーティスト名は、今回の出展の為に急遽考えた名前だそうで、調べても全然出てこないと思います笑

マルタン・マルジェラ以上に匿名性が高いです。

 

いただいたDMは、本を読む際のしおり(最適なサイズだったもので…)として大切に使わせていただこうと思っています。

 

素敵な年賀状とDMをありがとうございました!

RETURN TO REASON

2025.01.28.

Posted on 01.28.25

昨日のお休みは、テアトル梅田でマン・レイが遺した4話の短編映像作品を纏めた映画『RETURN TO REASON』を観てきました。

 

 

マン・レイはアメリカのダダイスト/シュルレアリストとして写真家,画家,彫刻家,映画監督と多岐に渡って活動した芸術家です。

本作に収められている短編集は、今から約100年前に制作された白黒サイレント作品です。

そのマン・レイのサイレント作品にジム・ジャームッシュとカーター・ローガンによるユニット, SQÜRLが音響で華を添えています。

 

100年前のサイレント時代から、マン・レイは色んな手法を試しては生み出していたのだなと感嘆いたしました。

そして、マン・レイのサイレント作だけなら眠たくなってしまいそうなところを、SQÜRLの前衛的なドローンが絶妙なバランス感覚で相乗効果を生み出していました。

 

アートやクリエイティヴに興味のある方は、ぜひ本作をご覧になってみてください!

 

BAGDAD CAFE

2024.12.27.

Posted on 12.27.24

先日、映画の前売り券を買いに行ったらバグダッド・カフェの4Kレストア版が上映されている期間だったみたいで、懐かしいなと思ってついでにパンフレットを買ってきました。

 

 

『バグダッド・カフェ』は、当時ミニシアター系映画ブームを象徴するような作品だったようです。
僕もリアルタイムでは観ていない世代ですが、それでも10代後半くらいで初めてこの作品を観た時は、それまで自分が観てきた映画とは全く違ってて衝撃を受けた記憶があります。(それももはや曖昧)

特に10代後半~20代前半くらいの視野が広まる頃に見たり聞いたりして影響を受けたものは、その先の人生やその人の感性の礎になることも大いにあると思いますので、若い世代の方もぜひ若いうちにこういう作品を積極的に観てみてください!

WWD JAPAN

2024.12.25.

Posted on 12.25.24

シャネルの新デザイナー就任の舞台裏についての記事を楽しみに買ったのに、記事の内容ペラペラやんけ!

 

 

と、年末にも関わらずクレームすることをお許しください。

 

だって、ほとんどがこれ読まずとも知り得た内容ばかりだったもので。。

せめてマチュー以外の有力候補だった2人の名前だけでも推測でもいいから挙げてほしかったです。

 

素人の個人的な予想では、セリーヌを退任したばかりのエディ・スリマンと、先日メゾン・マルジェラの退任が発表されたジョン・ガリアーノが他の有力候補だったのではないかと推測します。

 

ビジネス的には、カリスマ性のあるエディ・スリマンが最もシャネルにフィットしそうでした。

 

近年のシャネル復興の立役者として長年メゾンのデザイナーを務めたカール・ラガーフェルドがその才能に惚れた人物でもあります。

(カールは、エディのデザインしたDior HOMMEのスーツを着る為に、実に40kg以上!のダイエットに成功しました)

シャネルのレガシーを尊重しながらも自身の色でメゾンを染め、就任と同時にメンズを立ち上げて売上規模も倍増という青写真が描けそうなキャスティングに映りましたが、やはり長年ウィメンズのファッションにおいては最高峰に君臨するシャネルとしては自身もウィメンズは苦手と公言しているエディをデザイナーに据えること対して最大の障壁となったのかも知れません。

 

 

ジョン・ガリアーノは、現在のモード界において、そして特にオートクチュールにおいては最もデザイナーとしての才能に溢れた人物だと思います。

 

過去に起こした公衆の場での差別的発言により一度はモード界を追放されましたが、メゾン・マルジェラのデザイナーという与えられたチャンスに全身全霊で応えるようなコレクションの数々は、メゾンのビジネス志向が全体に蔓延している現在のモード界において希望の星のような存在となっていました。

ただ、ガリアーノの造り出す唯一無二のクラシカルでスペクタルな世界観は、「シンプルで着心地が良く、無駄がない」独創的なスタイルを次々と生み出しそれまでの時代で美の象徴とされていた貴族的エレガンススタイルを葬り去ってきたガブリエル・シャネルのスタイルとは対照的にも思えます。

 

そこで新しい才能, マチュー・ブレイジーに次世代のシャネルを託したのかも知れません。

 

 

マチューはブリュッセルのラ・カンブルを卒業後、ラフ・シモンズのメンズコレクションのデザイナーとしてキャリアをスタート。その後、メゾン・マルジェラにて「アーティザナル」(オートクチュール)ラインのデザイン、そしてウィメンズのレディ・トゥ・ウェアのデザインに携わります。2014年にセリーヌのシニア・デザイナーに就任し、2016年から2019年まではカルバン クラインで再びラフ・シモンズと共に仕事をしています。そして2020年からボッテガ・ヴェネタのRTWデザイン・ディレクターを務め、2021年11月に同ブランドのクリエイティブ・ディレクターに就任しました。

こうして並べてみると、もの凄いキャリアです。

デザイナーズブランドやオートクチュールでの経験もあるし、ラグジュアリーメゾンはヨーロッパだけでなくアメリカ(カルバン クライン)でも仕事しています。

その上で獲得したボッテガ・ヴェネタでのクリエイティヴ・ディレクター就任後は、ブランドとしてもデザイナーとしても常に業界から注目され続けるようなカッティングエッジなコレクションを連発していました。

カールが得意としていたようなアイコニックな演出もできるし、フィービーのような玄人を唸らせる服作りもできて、ラフのようにカルチャーにも通じた面も感じられます。

 

とは言え、マチュー・ブレイジーのシャネル新アーティスティック ディレクター就任のニュースには驚きましたが、他にも候補がいる中でまだ40才と若いデザイナーを抜擢したシャネルの決断はあっぱれだと思いますし、経験豊富で聡明なマチューが導くこれからのシャネルはどんなものなのかと今からワクワクします。

 

あ、それと余談ですが、今回のWWDのメインの特集であるウィメンズ・リアル・トレンドには全くこれっぽっちも興味がないです。

 

でも、せっかく買ったのでお店に置いてるので、ご興味のある方はぜひご覧くださいませ!

今月の絵画

2024.12.14.

Posted on 12.14.24

いつも絵画を持ってきてくださるお客様が、また新しい作品を持ってきてくださったので、前回の作品と入れ替えで飾らせていただいております。

 

 

今回も素敵な作品です。

今までのものより一回り小ぶりですが、この絵にはそのサイズ感がピッタリなように感じます。

 

作者であるお客様は、三つ編みの子を描きたくなったから描いたんだとおっしゃっていました。

そんな風にふと思った時にすぐ形にできる行動力と技術があるのがとても羨ましいです。

 

また見やすい場所に飾らせていただいていますので、ご来店時にぜひお近くでご覧になってみてください!

『流転する街』

2024.12.13.

Posted on 12.13.24

お客様からご自身で作られたという写真集をいただきました。

 

 

 

タイトルは『流転する街』

 

1982年にゴッドフリー・レッジョという映像作家が『コヤニスカッツィ』という映画を作りました。

「コヤニスカッツィ」とは、ホピの言葉で「常軌を逸し、混乱した生活。平衡を失った世界」を指します。

 

このタイトルを見た時、その映画のことを少し思い浮かべました。

 

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こちらのお客様は、高校生から当店に通ってくださってて、当時から芸術やファッション,音楽などに強い興味を抱いている方でした。

写真も趣味にされてて、当店にカットしにいらしてくださる際もよくカメラを首からぶら下げてご来店くださっていました。

この写真集に収められている写真の中にも、もしかしたらその行き帰りに撮った写真もあるかも知れません。

 

 

そんな彼が、自費で初めて作った写真集です。

 

 

 

 

 

 

まだバリバリの20代でこの感性、素晴らしいと思います。

 

この写真集を持ってきてくださって、その後カットしてる時に、これまでは自分の感覚だけで撮ることが多かったけど、これからはもっと色々インプットの幅を増やしたいと言っていました。

でも、彼は川久保玲展がニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された時、それを見るためにわざわざNYまで旅行したり、まだ若いのに興味のあることはかなり掘り下げて調べていたりと、これまでももちろんインプットは十分にしている様子でした。

おそらく、これからは視覚的なインプットよりも史学や美学、哲学などの芸術教養的なインプットを重視したいという意味だと解釈しました。

それでも、現時点でも全く無知な感じはしないし、むしろタイトルと内容に込められた色んな感情の奥深ささえ感じます。

 

 

 

 

 

 

僕はこの一冊をぜひ購入させてほしいと言ったのですが、僕に渡したくて持ってきたから貰ってほしいと言われたので、そのお言葉に甘えさせていただくことにしました。

(それでも何度か食い下がったのですよ)

いつもカットしに来てくれて感謝してるのは、僕の方なのに。

せめてものお礼に少しは美容師らしく、スタイリング剤をプレゼントさせていただきました。

 

美容師という仕事が素晴らしいと思えるところのひとつに、美容師という関係性を通じて顧客様の人生と長期間に渡って交差できるところがあるということがあります。

若い頃、こんなことを話していた子が、今はこんなふうな考えを持った大人になっている。

そういう成長を傍らで見ることができるのはとても面白いですし、その成長が自分のことのように嬉しかったりします。

 

 

 

これらの写真を見て、素敵だなって思う人はたくさんいると思いますが、僕はそれだけじゃなくて彼とこれまで会話してきた思い出もあるので、とても感慨深い気持ちにもなります。

 

彼の作った写真集を見てて、目から涙が、鼻から鼻水までもが溢れ出てきそうになるのを歯を食いしばって必死に我慢しながら鑑賞させていただいています。

彼にはこれからも更に素晴らしい活躍を期待しています。

 

当店のお客様がたにもぜひ見ていただきたいと思っているので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧になってみてください!