両足院での時間を堪能した後は、(堪能し過ぎたせいで爆速でご飯を食べることになりました)京セラ美術館へ向かい、テート美術館展を観ました。

前編でも書いたように、この日は学芸員さんによるギャラリートークがあるとのことで、こういったイベントが組まれるのは通常多くの人が参加しやすい土日や平日の夜などが多いので、今回はタイミング良く参加できる日だったのでとてもありがたかったです。

まず入るとフランシス・ベーコンの1944年作のトリプティック(第2ヴァージョン)が迎えてくれます。(隣の方の迷惑にならないように写真を撮ったのでちょっと頑張って収めた感のある画角になってますが)
フランシス・ベーコンは第二次世界大戦を経験し、そこで目の当たりにした人間の残虐さや戦争の悲惨さを独特の感性でこの作品に表しました。
フランシス・ベーコン自身はYBAに括られるアーティストではないですが、ダミアン・ハーストなどYBAの核となるアーティスト達に多大な影響を与えました。
YBAの作品は、多くの人が当たり前に受け入れていることや普段目に止めることもなく見過ごしていることなどを作品を通じて浮かび上がらせているものが多いです。
このフランシス・ベーコンの作品も、美しさの中に禍々しいものを感じます。
そして、その禍々しく感じるものの正体は人間が隠し持っている残虐性なのかも知れません。
今の時代は、残念ながら分断の時代のように感じます。
普段は優しく良い人でも、時代や社会が人を変えてしまうこともあります。
不安定さが増していく時代だからこそ、私たちは人間の過去の過ちを繰り返さないように、一人ひとりが思いやりのある寛容な心を持たなくてはなりません。
それが広がると地域の連帯、国の連帯、そして世界の連帯へと繋がっていくと思います。
僕はフランシス・ベーコンが大好きなので、ひと作品だけでここまで長く書いてしまったことを今とても心配しております。
後編といいながら、後編が三部作くらいの長さになってしまったらすみません。
それとこのフランシス・ベーコンの作品について書いたことも含め、今回参加させていただいた学芸員さんのユーモアもありつつ作品愛の伝わる面白く丁寧な解説を参考に書かせていただいております。(僕の記憶や解釈が間違ってたらごめんなさい)
本当に面白いギャラリートークでした。
お話しいただいた学芸員の方、ありがとうございました!
ということでいくつかの作品をピックアップして続きを書きます。
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ダミアン・ハースト《後天的な回避不能》

ダミアン・ハーストは、煙草の吸殻と灰皿をオフィス空間に置いてガラスケースで密閉したこの作品で、当時の現代社会において避けることのできない死とは何かを問いかけています。
ガラスに反射したテーブルの向こう側に薄い人影のようなものが見えたとしたら、それは僕の亡霊です。
煙草は当時は喫煙率もとても高かったと思いますが、今は当時よりは喫煙者の割合もかなり少なくなっていると思います。
今の時代なら煙草の代わりにテーブルの上に何を置くべきでしょうか?
僕ならこのままの配置で、ひとつだけ変化を加えて煙草の箱に“ゾンビ”って書き足します。
それくらいの加筆ならダミアン・ハーストだって許してくれるかも知れません。
仮にそれが展示されてたとして観た人は「こいつ盛大にスベってる」って許してくれないと思いますけども。
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ヴォルフガング・ティルマンス


トークを聴いてて、この人は上沼恵美子さんの遺伝子を引き継いでる人じゃないかと思うくらいお話の上手な学芸員さんは、いつもティルマンスのことをティルマンス先生って呼んでるそうです。
それを聞いていた僕は、もう今日から早速真似しようと思いました。
2枚目の写真の作品が並んだ構図、ティルマンス先生はその配置のバランスをミリ単位で指定してくるそうです。
上沼恵美子の生まれ変わりの学芸員の方は、ティルマンスの作品を「こういう発言は学芸員に相応しくないかも知れないけど、ティルマンスの作品はオシャレだ」と言っていました。
大丈夫です。それは多くのティルマンス・ファンも内心では大なり小なり思っていることだし、むしろそれを学芸員の方がそうおっしゃってくれたことで、僕のようなファッション好き側にいるのかそれより高尚なアート好き側にいるのかよくわからないような人間には心が少し楽になりました。
学芸員の方のお墨付きを得たので、帰り際にショップではティルマンスのグッズを大量に買いました。
でも一番買えて嬉しかったのはフランシス・ベーコンの作品をモチーフにしたものです。
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マーティン・クリード
左『〈作品No.74(70)〉と名付けられた彫刻』
右『作品No.88 : くしゃくしゃに丸めたA4サイズの紙』

この人が英語を話せればスタンダップ・コメディ界でもトップを取れるだろうと思われる学芸員の方は、この作品を「マジマジと観るような作品ではない」とおっしゃっていました。
この頃には、僕はこの学芸員の方のほうが「先生」と呼ぶに相応しいと感じてきていました。
特に右のやつ。一見したらA4の用紙丸めただけやんけ、と思いますが、綿密に折り目まで計算された作品だそうです。
で、極め付けは、この作品を保護しているガラスケース。厚さは13mmあるそうです。
少し前に開催されてた国宝展のガラスケースの厚さは10mmだったそうで、この夏休みの最終日の夜に課題のことを忘れていた美大生が慌てて作ったような作品が国宝に指定されるような作品よりも手厚く守られている、ということまで含めて“作品”だそうです。
それを聞いた僕は、家に帰るまでが遠足と同じ頭の引き出しになおしたのですが、それで合っているのか心配です。
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他にもたくさんの作品の解説をしてくださったのですが、長くなったのでこのあたりで終わりにします。
またご興味のあるお客様は、ご来店時にもお話させていただきますので、気になる作品があれば教えてくださいね。
図録も買ってきたので、お店に置いています。

美術館の後は、当店のお客様もよく行かれているというカフェ(喫茶店?)「しばし」で一休みして帰りました。
しばしは、音響も空間もとても良くって、またゆっくり来たいなと思いました。
店主さんの感性が凄いんだろうなって思います。
ご興味のある方は、ぜひテート美術館展やしばしにも足を運んでみてください!
最後までお読みいただいてありがとうございました!