Underground

2025.04.22.

Posted on 04.22.25

昨日のお休みは、シネヌーヴォで小田香監督の最新作『Underground』を観てきました。

 

 

タル・ベーラの映画学校で学んだ小田監督の作品は以前から興味を持っていましたが、なかなかタイミングが合わず、今回の最新作が初めてでした。

 

映像と音響が素晴らしかったです。

(タル・ベーラから学んでいるのだから当然アナログな手法で撮影,編集されたものだと思いますが)ロケーションや自然を活かした手法でこれだけグラフィカルな映像も撮れるのかと思いながら観ていました。

 

東京都のエンタメ感満載のプロジェクションマッピングも即刻中止して、小田さんに監修してもらって何かすれば良いのに…

 

今作は九条にあるシネヌーヴォで観てたのですが、劇中でまさか自分が今観ているシネヌーヴォのシアターが出てきて、しかも登場人物が自分の座っている席と同じ席に座ったものだから驚きました。

最後、映画が終わって映画館を出るまでは、そんな僕にピッタリ賞みたいなものがあって声をかけられるのではないかと内心ドキドキしておりましたが、何もなく無事に帰路につきました。

 

販売されていたパンフレットは、通常のものと特別版があって、通常のものが一番好みでしたが特別版は通常版にポスターみたいなものを折ってカバーにしてあるとのことでしたので、せっかくなので特別版を購入しました。

 

.

特別版

 

.

通常盤(特別版から外装を外したもの)

 

.

こちらがその全貌

 

 

 

.

本作の繊細且つ迫力のある音響は、映画館ならではのものがあると思いますので、ご興味のある方はぜひ映画館へ足を運んでみてください!

 

Posted on 04.17.25

『アンゼルム・キーファー ソラリス』展を観に京都へ行ったついでに、観たかったアラン・ギロディ監督の映画が京都シネマで上映されてたので、時間を合わせてスケジュールを組んで観てきました。

 

 

アラン・ギロディーの作品は3つ上映されていますが、僕が観たのは『ミゼリコルディア』です。

 

セクシャリティとサスペンス。

本作に“コメディ”という表記があるのは、相当ブラックユーモアな解釈だと思います。

 

アメリカ映画とかでコメディというと、誰にでもわかりやすいエンタメ要素の強いものが一般的です。

日本のお笑いとかもそうです。

 

でも、本作みたいなヨーロッパの作品では、コメディと言っても知識や教養が必要になってくるものも多いです。

それにダークユーモアの表現手法も多種多様で、それらの感性を見ているだけでも面白いです。

本作は特に度肝を抜かれました。

 

 

.

ミゼルコルディアとは“慈悲”を意味します。

 

本作のストーリーは、パン職人の主人公が、師匠の葬儀のために久々に故郷を訪れるという話。

葬儀が終わってもその場所にしばらく滞在したり、セクシャリティが関わってくる設定は、グザヴィエ・ドランの『トム・アット・ザ・ファーム』を連想しましたが、ギロディーの本作はドランのそれよりも人間関係やそれぞれの感情を複雑で繊細に描いています。

 

 

ギロディーの映画は、映倫を通してないらしく、作品にモザイクをかけることをギロディー自身が許可していないらしいのですが(本作もR18指定ではなく18歳以上推奨作品)、本作では神父のそれがモザイクなしで映ることが大きな意味を成していました。

サスペンス映画で、まさか男性器に物語らせるなんて…

 

 

他の作品も観たいのですが、タイミングが合わずに終わってしまいそうです。

Blu-ray化は無理そうだし、JAIHOでもう一回特集をやってくれることを切に願っています。

 

.

大阪にも素晴らしい単館映画館はいくつかありますが、僕が行ったタイミングでは京都シネマには大阪のそれらの映画館よりも幾分多くのお客さんが入っているように感じました。

さすがは文化の街,京都だなと思いました。

大阪府民も負けずに文化的な映画も積極的に観に行きましょう!

 

アラン・ギロディーの特集は、大阪の第七藝術劇場でもやってるので、ご興味のある方はぜひ映画館に足を運んでみてください!

 

RETURN TO REASON

2025.01.28.

Posted on 01.28.25

昨日のお休みは、テアトル梅田でマン・レイが遺した4話の短編映像作品を纏めた映画『RETURN TO REASON』を観てきました。

 

 

マン・レイはアメリカのダダイスト/シュルレアリストとして写真家,画家,彫刻家,映画監督と多岐に渡って活動した芸術家です。

本作に収められている短編集は、今から約100年前に制作された白黒サイレント作品です。

そのマン・レイのサイレント作品にジム・ジャームッシュとカーター・ローガンによるユニット, SQÜRLが音響で華を添えています。

 

100年前のサイレント時代から、マン・レイは色んな手法を試しては生み出していたのだなと感嘆いたしました。

そして、マン・レイのサイレント作だけなら眠たくなってしまいそうなところを、SQÜRLの前衛的なドローンが絶妙なバランス感覚で相乗効果を生み出していました。

 

アートやクリエイティヴに興味のある方は、ぜひ本作をご覧になってみてください!

 

weekend navigation

2025.01.24.

Posted on 01.24.25

いつもV:oltaをご利用いただき、まことにありがとうございます。

年始ムードも少し落ち着いてきたこの頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

 

当店は年末年始はおかげさまで多くのお客様にご来店いただきました。

逆に例年1月後半~2月にかけてはご予約もゆっくりしてくる時期になっていきます。

今週末のご予約にもまだまだご案内できる時間帯もございますので、ご来店をお考えの方はぜひご予約くださいませ。

 

みなさまのご来店をスタッフ一同、心よりお待ちしております。

 

.

先日、現在日本人で唯一パリでオートクチュールコレクションを発表することができるデザイナー,中里唯馬さんを題材にしたドキュメンタリー映画『燃えるドレスを紡いで』を観ました。

 

 

石油産業に次ぐ、世界第2位の汚染産業であるアパレル産業を生業とする中里氏が自身の仕事と向き合う上で大量廃棄の現場を見ておきたいということで、世界中から夥しい量の行き場を失った服が集まってくるケニアを訪れ、その現実を実際に見て、そこで実際に購入した大きなビニールにキツキツに包装された服のブロックからそれらの素材を再利用してオートクチュールコレクションを作り上げるまでを追ったドキュメンタリー作品となっています。

 

驕ることも飾ることもせず、等身大でアパレル産業の闇に目を向け、そしてオートクチュールを通じて未来のサステナブルな服作りの在り方をファッション界に提起する。

世界中のファッションデザイナーの多くが中里さんのような考えを持った世の中になれば、どれだけこの世界は素晴らしいものになるでしょうか。

 

今までもそうしてきたつもりですが、これからはより一層自然素材100%の服を選び、その一着を長い間大切に切るようなファッションの楽しみ方をしていきたいです。

 

 

 

 

化学繊維はただでさえ生分解しにくい上に、安い服ほど色んな素材が混ざっていてリサイクルすることがほぼ不可能なものが大半です。

 

 

この映画を観ない方でも、良かったらぜひ服を買う時には表示ラベルを確認して服を選ぶようにしてみてください。

アパレル業界の環境問題対策として、自分たち消費者ができる一番のことは、生分解性の低い洋服を買わないということです。

ファッション映画というより、環境問題にフォーカスした社会派ドキュメンタリーでした。

ぜひ多くの方に観ていただきたい作品です。

 

 

ご興味のある方は、こちらの作品もぜひチェックしてみてください!

Posted on 12.12.24

先日のお休みは『ウラ・フォン・ブランデンブルク展』に行った後、シネヌーヴォへ向かいベッド・ゴードン監督の代表作『ヴァラエティ』(1983) を観ました。

 

 

ベッド・ゴードンは、1970年代末から80年代のニューヨーク, アンダーグラウンドカルチャーの潮流”ノー・ウェイヴ”の渦中にいた映画監督です。

本作の主人公は、とあることからポルノ映画館で働き始めた若い女。

ある日一人の男性客と言葉を交わし、以来その男を追いかけるようになります。

 

本作には、ドキュメンタリー映画『美と殺戮のすべて』でも取り上げられたアメリカのアメリカの写真家であり活動家のナン・ゴールディンも出演していました。

 

 

 

今回のベッド・ゴードン作品の日本での特集には『EMPTY NEW YORK』とのタイトルが名付けられているのですが、まさに“エンプティ”な当時のニューヨークの街と人を映し出した作品で、とにかく映像がとても魅力的でした。

 

 

こんなボリューミーなカールスタイル、今の時代で若い世代の子がやってたら最高にクールだと思います。

僕は後ろのオッサンのエロティシズムと哀愁漂う視線も好きです。

(今の時代ではこの視線もおそらくハラスメント)

 

.

今の時代になって、ようやく世界中で女性(だけでなく性的マイノリティな方も)の権利や平等性を主張する声も社会の隅々まで届けることができるような環境になってきましたが、80年当時はゴリゴリに女性軽視する人がいたり(もちろん今の時代にもまだまだいますが…)性の対象としての女性の見られ方や扱われ方もきっと酷いものだったのだと思います。

本作の主人公は、休憩中でも何も恥ずかしがることなく館内のスペースで気楽に過ごしたり、男を追いかける最中で男性客しかいないポルノショップに堂々と入っていったりと、ポルノというものが男性の為だけに存在している「女性が入ってはいけない場所」という認知性にも疑問を投げかけているようでした。

 

《セクシュアリティ》《欲望》《権力》をテーマに、大胆な探求と創作を行なってきたベッド・ゴードンの映画。

気になる方は、ぜひ映画館へ足を運んでみてください!

 

ナミビアの砂漠

2024.11.05.

Posted on 11.05.24

先日、テアトル梅田で新進気鋭の日本の映画監督,山中瑶子さんの新作『ナミビアの砂漠』を観てきました。

 

 

普段は日本映画をあまり観ないのですが、最近は観てみたいと思う日本映画の新作がいくつかあったので短い期間で立て続けに観ましたが、個人的にはこの作品が一番良かったです。

 

 

 

これは監督のパーソナルな経験も反映されているんですかね。

斬新さと繊細さがありました。

 

音響の使い方など、まるで2020年代のゴダールのように実験的で目新しい感覚の演出にも果敢に挑戦していて、観ていて楽しかったです。

 

主演の河合優実さんも素晴らしい役者だと思いました。

監督の山中さんはまだ20代と若いですが、これからの日本映画を牽引していく一人になるのではないかと期待が膨らむような作品でした!

普段シネフィル系やミニシアター系をよく観ているような方にぜひ観ていただきたいです。

 

もう上映期間が終わりに近づいている作品ですが、ご興味のある方はぜひ映画館へ足を運んでみてください!

憐れみの3章

2024.10.17.

Posted on 10.17.24

先日のお休みは、先日書かせていただいた空音央監督の『HAPPYEND』に続き、ギリシャ出身の映画監督,ヨルゴス・ランティモスの最新作『憐れみの3章』も観に行きました。

 

 

本作は、“R.M.F.”(Redemption(救い)・Manipulation(操作)・Faith(信仰))にまつわる3つの短編から成る作品。

その3つのエピソードの主要な登場人物は全て同じで、役柄はそれぞれのエピソードで異なります。

 

作風も、このままハリウッドの人気者になってしまうのかと少し心配になった前作『哀れなるものたち』よりも、ずっとランティモスらしいシュールな毒っ気が炸裂した作品でした。

全てのエピソードが奇妙で気持ち悪い。(褒めてます)

これぞランティモスの真骨頂だと思います。

 

 

今やランティモス映画のミューズとなったエマ・ストーンのこの表情もとても不気味。

こちらも毎度お馴染みとなった変なダンスも今回もキマってました。

 

 

ちなみに、今回エマ・ストーンが踊ってる曲は、スウェーデンのアーティスト,COBRAHによる“Brand New Bitch”という曲です。

日本のクラブでも、皆カッコつけてスカした感じで踊らずにエマくらいエモーショナルに踊ってほしいです。

普段クラブに行かない僕でも、そんな感じのズバ抜けたクラブが日本にあるなら一度訪れてカオスな空間をこの目と耳で体感したいと思うかも知れません。

 

ランティモスの作り出す奇妙でクセになる世界を堪能したい方も、エマのダンスの全貌を見たいという方も、ぜひ映画館でご覧になってください!

HAPPYEND

2024.10.16.

Posted on 10.16.24

坂本龍一を父に持つ空音央監督の長編デビュー作『HAPPYEND』を観てきました。

 

 

タイトルは、父の盟友,細野晴臣さんの組んでいたバンドと掛けていたりするのでしょうか?

 

まず、冒頭のクラブシーンのDJ役に行松陽介さんが起用されててビックリしました。

 

 

行松さんは、日本のアンダーグラウンドシーンを牽引するDJの一人です。

素晴らしいガテン系の肉体美(もともと肉体労働系の仕事をしつつDJ活動をされていたようです)をお持ちですが、そのセンスは見た目とは良い意味でギャップありまくりです!

 

内容は新世代の青春映画という感じの作品でしたが、ファッションやカルチャーに関心のある現代の若者達にも刺さるような感覚がある作品だと思うので、特にそういった層の方にたくさん観てほしいなと思うような映画でした。

 

 

主役の二人は、どちらもモデルをされている方を起用しているそうです。

 

挿入される音楽のセンスやカメラワークにも、偉大すぎる父,龍一氏のDNAを感じました。

 

カッティングエッジなカルチャーに興味を持つ日本の若者が増えたら、また日本はカルチャーにおいても世界から注目される国になれるかも知れません。

 

ご興味のある方は、ぜひ映画館に足を運んでみてください!

Posted on 09.18.24

先日のお休みは、来月での閉館が決定してしまっているシネマート心斎橋で、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『エフィ・ブリースト』を観てきました。

 

 

こちらもそうですが、ファスビンダー傑作選のポスターデザインがあまりにもカッコ良すぎて、最近シネフィル(コアな映画好き)以外のファッションやクリエイティヴのアンテナ感度が高い人達の間でもファスビンダーがフックされだしてると聞きます。

これらのポスターにキューブリックとかタランティーノ映画みたいなファッションカルチャー性を感じているのだと思いますが、ファスビンダー映画って決してそんな類の映画ではないんですけどね笑

 

まだ未見の方は、まあ観てみてください。

キューブリック好きが10人観たら9人は振るい落とされる映画です。

特にこの作品とか、最後までちゃんと退屈せずに観れた人にはキトク系の素質(ハンター×ハンターで言うところの特質系)があると思うので、おすすめ映画をたくさんお教えします。

 

でも、カッコイイものはなんでも最初は無理して消化するものです。
それがお酒でもブラックコーヒーでもタバコでも、ニューウェイヴとかポストパンクだって、誰かに影響を受けたりしてカッコイイと思って不味いのに口にしているうちに細かい味の違いまで理解できるようになっていきどんどん依存していくわけです。
だから、カルチャー好きな方は頑張ってニュージャーマンシネマの山にも登りましょう!

 

.

 

本作は、テオドール・フォンダーネの古典小説『エフィ・ブリースト』をニューシネマ世代のファスビンダーが映画化したもの。

ファスビンダーにしては少し異色の作品でした。

 

 

モノクロで表現される厳格な映像美は、ストローブ=ユイレを彷彿とさせます。

ユイレ作品と大きく異なるのは、音声の同時録音にこだわるユイレに対してファスビンダーの本作はアフレコであるということ。

しかも、時折人物の動きとセリフに違和感を覚えるほどのズレがありましたが、これはファスビンダーがあえてそうしているのでしょうか。

だとしたらなんと憎たらしい演出…

 

ファスビンダー自身によるナレーションも、たびたび挿入される小説の一説も、エフィの人生も、どれもが退廃的で切なさがありました。

 

.

来週は『自由の暴力』を観に行こうと思っています。

ご興味のある方は、ぜひ今回のファスビンダー傑作選にも足を運んでみてください!

 

美しき仕事

2024.07.23.

Posted on 07.23.24

昨日のお休みは、九条にあるミニシアター,シネヌーヴォで、クレール・ドニ監督の98年制作の映画『美しき仕事』(4Kレストア版)を観てきました。

 

 

 

本作は、フランスから遠く離れたアフリカの海沿いの地,ジブチ共和国で訓練に励むフランス軍の外国人部隊の姿を描いた作品です。

本作の主人公は、レオス・カラックス監督の“アレックス三部作”で主演を務めたドニ・ラヴァン。

 

かつて外国人部隊の上級曹長であったガルー(ドニ・ラヴァン)。

彼が憧れともつかぬ思いを抱く上官,フォレスティエ、そして部隊に加入して早々に皆の人気者となる新兵サンタンの存在。

この映画は、LGBTの観点も持っています。

それを性的な描写や直接的でわかりやすい描写を一才使わずに描いています。

 

 

ジブチのロケーションと軍隊の訓練を組み合わた映像が、本当に美しかったです。

人物とカメラの距離感、人物と景色のフレーミングも素晴らしかった。

 

ドニ・ラヴァンの最後の変なダンスも最高でした!

 

ご興味のある方は、ぜひご覧になってみてください!

 

悪は存在しない

2024.07.19.

Posted on 07.19.24

先日のお休みは、遅ればせながら濱口竜介監督の新作『悪は存在しない』を観てきました。

 

 

-あらすじ-

長野県、水挽町(みずびきちょう)。自然が豊かな高原に位置し、東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだ。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく。

 

.

本作のきっかけは、『ドライブ・マイ・カー』でも音楽を担当した石橋英子さんから濱口監督への映像制作のオファーだったそうです。(『GIFT』という映像作品から発展して本作が制作されました)

 

本作のあらすじを読むと、豊かな自然を破壊してまでグランピング施設を作ろうとするなんて酷いと感じる人もたくさんいると思いますし、僕自身もこういうのは日本の社会の本当に愚かなところだと感じているのですが、濱口監督は、東京から現地住民へ説明会に来た芸能事務所の人の人間味も映し出すんです。

彼らだって決して悪人ではない。(間に入っているコンサル会社の人が一番嫌に思いました)

 

田舎で暮らす人、都会に住む人、それぞれに価値観も違うしマナーも違います。

そこに根っからの悪人なんてほとんどいなくて、大事なのは自身の考えばかり押し付けずに相手の立場に立ってお互いが相手の意見に耳を傾けるという姿勢なんだと思います。(今の日本の政治家たちにも同じことを言いたい。根っからの悪人も多そうですけど…)

多くの国民が寛容さを失い、日々ギスギスしていく現代の日本においても、それは各自が意識して気をつけないといけないことでもあります。

 

この映画は、今の日本や日本人に対して、問題提起もたくさんしています。

それをどう受け取るかも、人によっておそらく違うと思います。

 

大切なのは、こういう作品を観たり読んだりして考えることです。

 

 

 

本作は、ゴダールの影響を小難しく表現せずに取り入れてて、全体的に観やすいながらもとても面白かったです。

 

昔、オーストラリア大陸に上陸したホモ・サピエンスは、凶暴な野生の動物から自らの身を守る為に密林に火を放ち視界の開けた野原を作ろうとしたそうです。

その結果、炎に強いユーカリの木がオーストラリアに増え、コアラが生息しやすい土地になったそうです。

 

本能寺に火を放った明智光秀は、織田信長の独裁政権による日本を憂いでそのような行動に出たのかも知れません。

 

何が正しくて何が間違っているかは、特に当事者同士では見解が分かれることもたくさんありますが、現代の成熟した日本社会において、今のように悪知恵が働く者の方が得をし、正しい倫理観を持って生きている人の方が損をする世の中は理不尽に思えてなりません。

 

本作を鑑賞して、自分自身ももっと相手の立場になって耳を傾ける姿勢を持てるようにしようと思いました。

 

濱口監督は、エンタメに溺れる作品が多い日本映画界において(自制の気持ちを持つと宣言した直後なのに早速批判…)、素晴らしい作品を撮っている方なので、ご興味の沸いた方はぜひ本作もご覧になってみてください!

 

 

.

今週末のV:oltaのご予約は、両日とも午後からの時間であればまだご案内可能です。

お時間のある方は、この機会にぜひご来店くださいませ!

 

Posted on 06.11.24

昨日のお休みは引き続きニナ・メンケス特集ということで再びテアトル梅田へ、『クイーン・オブ・ダイヤモンド』を観てきました。

 

 

画像の左側はチラシで、右側がパンフレットですが、どちらも『クイーン・オブ・ダイヤモンド』の劇中のショットを切り取ったものです。

両方バチバチにカッコイイ!

 

特に右側のヤシの木が燃える様子を延々長回しで写すショットは圧巻でした。

(今の時代ならこのシーンを撮影すること自体に問題提起されそうな感じもしますし、ちょっぴりヤシの木が可哀想にも思いましたが)

 

.

今作の主人公は『マグダレーナ・ヴィラガ』に引き続き、監督ニナ・メンケスの妹であるティンカが務めています。

主人公フィルダウスは、昼間は老人の介護をし、夜はラスベガスのカジノでカードを配っています。

 

派手なネオンライトで装飾された欲望に溢れるカジノのブラックジャックディーラーを、無機質で退廃的にただ延々と映し出すところは『ジャンヌ・ディエルマン』からの系譜のように思えました。

 

時系列も無茶苦茶、狂気の長回しの連続、反復する倦怠感…

 

ニナ・メンケスのカッティングエッジな映像と退廃性は、ドイツの映画監督,ウルリケ・オッティンガーの『アル中女の肖像』にも似ているなと感じました。

 

(コアな)映画好きの方は、観ておくべき作品だと思いますので、ご興味のある方はぜひテアトル梅田へ足を運んでください!

 

 

Posted on 06.05.24

先日のお休みはテアトル梅田でニナ・メンケス監督の映画『マグダレーナ・ヴィラガ』を観てきました。

 

 

 

映画のタイトルも映像もバチバチにカッコイイ!

本作の主演は、監督ニナ・メンケスの実の妹ティンカ・メンケスが務めています。

こちらもとてもカッコ良い俳優さんでした。

 

.

本作の主人公は娼婦。

シャンタル・アケルマンの名作『ジャンヌ・ディエルマン』は、終盤までベッドシーンを一切映しませんでしたが、本作は逆で客達とのベッドでの様子、特に主人公の表情を執拗に映し出していました。

その表情は、娼婦という仕事に少しずつ精神を蝕まれているような虚無と怠惰の混在した静かなもので、とても複雑な感情を語りかけてきているように感じました。

 

ニナ・メンケス監督は、女性達が対峙する内面世界や男性からの性差別的な視点などをテーマに作品を作るフェミニストの映画監督でもあります。

僕は、普段から女性だけではなく人付き合いそのものが下手な性格なのですが、このような作品を鑑賞することで少しでも自分自身の見識も深めていきたいと思っています。

 

テアトル梅田では、来週はニナ・メンケス監督の別の作品『クイーン・オブ・ダイアモンド』(こちらもタイトルめちゃカッコイイ)が上映されますので、ご興味のある方はこちらもぜひご覧になってみてください!

OPPENHEIMER

2024.04.17.

Posted on 04.17.24

先日のお休みは、シアタス心斎橋でクリストファー・ノーランの新作『オッペンハイマー』を観てきました。

 

 

本作の主人公,オッペンハイマーは原爆の生みの親であり、日本は世界で唯一の被爆国ということもあって、一時日本での劇場公開はないんじゃないか(いくらなんでもそれは過剰措置だと思います)と言われていましたが、だいぶ遅れてではありますが日本でも公開されたので映画館で観たいと思いました。

 

ノーランの凄いところはたくさんあると思いますが、僕が特に気に入っているのは彼がこんなにSF的な作品をたくさん撮っているにもかかわらずCGを一切使わずアナログ撮影に拘っているところです。

本作は35mmフィルム版もあると聞いて、どこかでやってるならそれを観たいと思ったのですが、残念ながら関西では上映されないということで、3時間でもなるべくお尻にダメージが蓄積されないようにコンフォートシートなる寝そべったまま観れるシートのあるシアタス心斎橋で観ることにしました。

 

カラーとモノクロを使い分けた構成で、時間軸を巧みに操るノーランマジックは相変わらずお見事でした。

そしてトリニティ実験のシーンは特に素晴らしかったです。

 

 

緊張感のある映像と音響。

本作はわざわざIMAXで観る必要はないかなと思いましたが、音響の良い映画館で観ると良いかも知れません。

個人的には、ここ最近のノーラン作品では一番好きでした。

 

 

 

ご興味のある方は、ぜひ映画館に足を運んでみてください!

先日のお休みは、ジャン=リュック・ゴダール監督の遺作『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』を観てきました。

 

 

本作の原題は、『決して存在することのない「奇妙な戦争」の予告編』

“奇妙な戦争”は、生前のゴダールが企画していた構想でしたが、その映画は完成することはなくゴダールは安楽死を選びました。

長編映画の完成を諦めたゴダールでしたが、その代わりに約20分の短編映画となる本作を遺しました。

そして、それが私達が決して観ることのできない映画の予告編だなんて、、

ゴダール、最後までカマしてくれます。

 

 

冒頭、アーサー・ペンの『奇跡の人』の抜粋写真に、手書きで「映画『奇妙な戦争』の予告編」と書かれたコラージュの静止画から映画は始まります。

しかし、無音で続くその静止画は長い時間次のカットに進みません。

僕は心の中で笑けてきました。

 

ファスト映画とか“タイパ”とか言う言葉まで生まれるような、日々時間に追われて忙しすぎる現代に向けて、ゴダールはたった一枚の静止画だけで痛烈な批判をしています。

もう、言葉さえも必要ない。

 

その後も、自身が一度破壊した映画の枠組みをさらに解体して、さらに自由に再構築したような斬新過ぎる構成のオンパレードで、これは計算し尽くされた超難解なものなのか、それともその大部分は人生の最終盤を迎えたゴダールの気まぐれによるものなのか、浅学の僕には解りかねました。。

 

でも、最後のゴダールの勇姿を映画館で観ることができて良かったです。

まだ観れていないゴダール作品も多いので、それらを観ることもこれからの楽しみです。

 

まだゴダールを観たことがないという方は、まずは彼の処女作『勝手にしやがれ』を観てみてください!