Posted on 06.21.23

先日は、シネヌーヴォのゴダール特集で、『1PM ワン・アメリカン・ムービー』と『ニューヨークの中国女』を観てきました。

(ちなみに、この2作品はゴダールが監督を務めた映画ではありません)

 

 

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まずは『ニューヨークの中国女』から。

 

 

 

本作は、ゴダールが監督を務めた映画,『中国女』(1967年)がニューヨークで封切られた翌日に撮影されたドキュメンタリー作です。

(奇しくもその日はキング牧師が暗殺された日【1968年4月4日】でもあります)

 

毛沢東主義や世界情勢に対してユーモアを交えて斬り込んだ作品,『中国女』を巡って、ニューヨーク大学の大学院生とゴダールで交わされた議論の様子が収められています。

 

僕も直前に『中国女』を観たり、中国大革命のことを少し調べたり、僅かながらの予習をして観に行きました。

 

ゴダールと言えば、いかにも偏屈で気難しそうなイメージがあると思いますが(実際そういうのの結晶みたいな人だと思います)学生たちの質問には丁寧で誠実に、しかも英語で(途中からはテンション上がってフランス語になっていましたが笑)応えている姿が印象的でした。

 

この当時は、若者の政治や社会問題に対しての関心が世界的に高かった時代だと思います。

それらの考えの多くは反体制的なものでした。

 

この撮影日のおよそ20日後、同じニューヨークのコロンビア大学で数百人の学生が校舎に立て篭もるストを起こし、翌月パリでは5月革命が起こりました。

何か体制の在り方を変える時には、若者たちの声や行動というものは、(本人たちが思っている以上に)大きな力となるということを時代が証明しています。

 

今年亡くなった坂本龍一さんはSEALsなど日本の若者が声を上げた活動にも関心を持ちその行動力を支持していましたが、(SEALsも当時色々と言われていましたが、そういうところにも自分は何と思われようがそんなこと関係なしに応援に駆けつける坂本さんの姿も僕は素晴らしいなと思っていました)、当時のゴダールにも同じような気持ちがあったのかも知れません。

 

このドキュメンタリーを観て、またゴダールのことが少しだけ好きになりました。

 

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『1PM  ワン・アメリカン・ムービー』

 

 

1968年の秋に企画されたゴダールとダイレクト・シネマの旗手ペネベイカー&リーコックのタッグによる『1AM (ワン・アメリカン・ムービー)』

 

しかしこの共同作業はそれぞれがお互いの主張を譲らず、編集段階で頓挫してしまいました。

 

本作『1PM』は、ゴダールが放棄したフッテージをペネベイカーが繋ぎ合わせて作った作品。

 

二人に構想を伝えるゴダールの姿や、ブラックパンサー党のエルドリッジ・クリーヴァーの談話、60年代アメリカのカウンターカルチャーを体現するバンド, ジェファーソン・エアプレインのゲリラライブ(ゴダールが依頼)など、貴重な映像をたくさん観れました。

 

監督がゴダールじゃないから(笑)、アメリカのこの時代の情勢や空気感といったものが割とストレートに伝わってきました。

 

ゴダールがやっていた数を数える時の指を上げる順番は、早速今日から真似したいと思います。

 

 

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という感じでどちらとも大変興味深い作品でした。

来週からはゴダール監督の作品の追悼上映も始まりますので、ご興味のある方はぜひシネヌーヴォに足を運んでください!