gap PRESS vol.184
2025.05.23.
Posted on 05.23.25
gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter PARIS/LONDON特集号です。
今号の表紙は、“but beautiful 4…”をテーマにブランド設立35周年を記念するコレクションを行なったアンダーカバーのものです。
このジャケットは、2004年秋冬コレクションで発表されたものだそうです。
このコレクションは、フランス人のぬいぐるみ作家アン=ヴァレリー・デュポンの作品やパティ・スミスのスタイルからインスパイアされたものでした。
(パティのスタイルに関しては全然違うやんけと思う気持ちも少しありますが)
アン=ヴァレリー・デュポンのぬいぐるみは、子供が保育園に通い出した時に保育園のカバンに付けられるようにとキーホルダーになったタイプのものを購入させていただいたことがあるのですが、こんなの付けて言ったら保育園の先生たちに気持ち悪がられるとのことで一回も付けて行ってもらえませんでした。
今回もいくつかのブランドをピックアップさせていただきます。
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MIU MIU
まずは全盛期の中畑清ばりに相変わらず絶好調なMIU MIUから。
ミラノコレクション号をご紹介させていただいた時にも書かせていただきましたが、今のMIU MIUの快進撃の影にはダリオ・ヴィターレという人物がいました。
日本では最近不祥事を起こした芸能人たちが次々と表舞台から姿を消していますが、ファッションブランドにおいてもブランドイメージというのはマーケットを大きく左右します。
特に日本を含むアジアでは、“このブランドがオシャレ”(アホみたいな表現ですが)と世間に認知されていくと、不思議とそれだけでそのブランドのアイテムを欲しがる人が増えていきます。
まだスウェーデンのブランド,ACNE STUDIOSがファクトリーブランドだった頃(コレクションとかも発表してなかった時代)、ACNEのCEOの弟さんが当時本当にオシャレな人しか買ってなかったメゾン・マルタン・マルジェラのプレスをしている人(マルタン・マルジェラの去った当時のメゾン・マルタン・マルジェラがブランドイメージをほとんど落としていなかったのは彼女の存在が大きかったそうです)とつき合いだして、そのやり手の彼女がアクネを手伝いだしたことで一気に人気が出て、パリのファッションウィーク(パリコレと言わないようにしてます)にまで参加するようになりました。
今のMIU MIUの人気の出方は、当時のアクネ(ブランドの格や規模は全然違いますが)と少し似ているところがあるように思います。
デザイナーが変わったわけではないのに、ブランドに新鮮な息吹が感じられます。
これがデザイン・ディレクターを務めていたダリオによる力が大きかったのだとしたら、ダリオがデザイナーに就任したヴェルサーチェはどうなっていくのか、今から楽しみです。
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GIVENCHY
前任のマシュー・M・ウィリアムズ退任後、新しくアーティスティック・ディレクターに就任したサラ・バートンによるジバンシィでの初のコレクション。
前任のマシューはファッションを専門的に履修していないストリートカルチャー畑で育った人物で、モード界がストリートブームだった頃にジバンシィのデザイナーに就任しましたが、やはり知識や経験不足からくるスタイルの乏しさがストリートブームの終焉と共にわかりやすく露呈してきた感じでした。
どれだけセンスが良くとも、技術や知識が不足していれば長く活躍できないのは僕たち美容師の世界でも同じです。
その点で、アレキサンダー・マックイーンの右腕として彼を支え、マックイーンの死後はデザイナーとしてブランドを牽引したサラ・バートンはデザイナーとしての格が違います。
一気に服のクオリティが上がったように思います。
マシューもラグジュアリーではなく、自身の得意とする分野なら突出した才能を発揮できる人物なのだと思うので、この経験を糧に更なる活躍を期待しています。
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BALENCIAGA
2015年にバレンシアガのデザイナーに就任したデムナこそ、モード界にストリート旋風を吹き荒らした中心人物です。
デムナの直後、ヴァージル・アブローというもう一人のストリートファッションの天才がモードの中心に登場しますが、どちらが長い歴史のあるヨーロッパのモードの系譜の本質に近いかと言われたら、自分ならデムナを推したいです。
テクノロジー、サイエンス、カルチャー、ビジネス、デザインなど、現代社会をかたちづくる最先端のトピックを扱う雑誌,WIREDが去年ファッション特集号を出した時、同じコンデナスト社に所属するVOGUE編集長のアナ・ウィンターにWIREDでファッション特集を組む企画があると話したら、アナから「今のファッションのことならデムナに聞きなさい」と言われたとのWIRED編集長のコメントが書いてありました。
そのエピソードが今のモード界におけるデムナの影響力を表しています。
そのデムナも7月に発表されるオートクチュール・コレクションを最後にバレンシアガを去り、ケリング・グループの頂点に君臨するグッチのデザイナーに移籍することが発表されました。
売り上げの低迷が深刻なグッチの立て直しに、同グループのエース的存在であるデムナに白羽の矢を立てたのだと思いますが、デムナのディストピアな世界観はバレンシアガというメゾンと相性抜群に感じていたので、華やかなイメージのグッチでどんなディレクションをするのか、そしてそのクリエイションが本当にグッチのブランドイメージと上手くマッチするのか、楽しみ半分不安半分な気持ちでいます。(本当は不安2/3くらいです)
あかんかったら4シーズンくらいでバレンシアガ戻せばいいと思います。
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ANN DEMEULEMEESTER
2022年にアンがルドヴィック・ド・サン・セルナンをデザイナーに起用した時は、これまでのアンの世界観とは違ったものになっていきそうで(音楽で言うとアンはオルタナティヴな世界観だったのに、ヴィジュアル系に好かれるブランドにしたいのかと思いました)、アンに対する興味が一気に失せそうになったのですが、ルドヴィックを1シーズンで電撃解任した後デザイナーに起用したステファノ・ガリーチはアンのDNAであるオルタナティヴとアヴァンギャルドの精神を持った人物で、アン・ドゥムルメステール本人もブランドも大好きな僕は個人的にとても嬉しく思っています。
(先日、東京に行った時に表参道で偶然すれ違ったお客様でカメラマンのイム君は、少し前に仕事で来日していたガリーチを撮ったらしく「ルー・リードみたいな雰囲気だった」と言っていました。それを聞いて余計にガリーチを応援したくなりました)
まだ弱冠28才。
創業デザイナーが去った今のアンを正しい方向に導きつつ、ガリーチ自身もブランドと共にデザイナーとして大きく成長していってほしいです。
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という感じのコレクション雑感でした。
いつも好き勝手書いてるので、好みの違う方は気分を害される方もいらっしゃるかと思いますが、そういう方はすみませんがなるべく見ないようにしてください…
本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!