gap PRESS vol.184

2025.05.23.

Posted on 05.23.25

gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter PARIS/LONDON特集号です。

 

 

今号の表紙は、“but beautiful 4…”をテーマにブランド設立35周年を記念するコレクションを行なったアンダーカバーのものです。

このジャケットは、2004年秋冬コレクションで発表されたものだそうです。

このコレクションは、フランス人のぬいぐるみ作家アン=ヴァレリー・デュポンの作品やパティ・スミスのスタイルからインスパイアされたものでした。

(パティのスタイルに関しては全然違うやんけと思う気持ちも少しありますが)

 

アン=ヴァレリー・デュポンのぬいぐるみは、子供が保育園に通い出した時に保育園のカバンに付けられるようにとキーホルダーになったタイプのものを購入させていただいたことがあるのですが、こんなの付けて言ったら保育園の先生たちに気持ち悪がられるとのことで一回も付けて行ってもらえませんでした。

 

今回もいくつかのブランドをピックアップさせていただきます。

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MIU MIU

 

まずは全盛期の中畑清ばりに相変わらず絶好調なMIU MIUから。

ミラノコレクション号をご紹介させていただいた時にも書かせていただきましたが、今のMIU MIUの快進撃の影にはダリオ・ヴィターレという人物がいました。

日本では最近不祥事を起こした芸能人たちが次々と表舞台から姿を消していますが、ファッションブランドにおいてもブランドイメージというのはマーケットを大きく左右します。

特に日本を含むアジアでは、“このブランドがオシャレ”(アホみたいな表現ですが)と世間に認知されていくと、不思議とそれだけでそのブランドのアイテムを欲しがる人が増えていきます。

 

まだスウェーデンのブランド,ACNE STUDIOSがファクトリーブランドだった頃(コレクションとかも発表してなかった時代)、ACNEのCEOの弟さんが当時本当にオシャレな人しか買ってなかったメゾン・マルタン・マルジェラのプレスをしている人(マルタン・マルジェラの去った当時のメゾン・マルタン・マルジェラがブランドイメージをほとんど落としていなかったのは彼女の存在が大きかったそうです)とつき合いだして、そのやり手の彼女がアクネを手伝いだしたことで一気に人気が出て、パリのファッションウィーク(パリコレと言わないようにしてます)にまで参加するようになりました。

 

今のMIU MIUの人気の出方は、当時のアクネ(ブランドの格や規模は全然違いますが)と少し似ているところがあるように思います。

デザイナーが変わったわけではないのに、ブランドに新鮮な息吹が感じられます。

これがデザイン・ディレクターを務めていたダリオによる力が大きかったのだとしたら、ダリオがデザイナーに就任したヴェルサーチェはどうなっていくのか、今から楽しみです。

 

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GIVENCHY

 

 

前任のマシュー・M・ウィリアムズ退任後、新しくアーティスティック・ディレクターに就任したサラ・バートンによるジバンシィでの初のコレクション。

 

前任のマシューはファッションを専門的に履修していないストリートカルチャー畑で育った人物で、モード界がストリートブームだった頃にジバンシィのデザイナーに就任しましたが、やはり知識や経験不足からくるスタイルの乏しさがストリートブームの終焉と共にわかりやすく露呈してきた感じでした。

どれだけセンスが良くとも、技術や知識が不足していれば長く活躍できないのは僕たち美容師の世界でも同じです。

その点で、アレキサンダー・マックイーンの右腕として彼を支え、マックイーンの死後はデザイナーとしてブランドを牽引したサラ・バートンはデザイナーとしての格が違います。

一気に服のクオリティが上がったように思います。

マシューもラグジュアリーではなく、自身の得意とする分野なら突出した才能を発揮できる人物なのだと思うので、この経験を糧に更なる活躍を期待しています。

 

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BALENCIAGA

 

 

2015年にバレンシアガのデザイナーに就任したデムナこそ、モード界にストリート旋風を吹き荒らした中心人物です。

デムナの直後、ヴァージル・アブローというもう一人のストリートファッションの天才がモードの中心に登場しますが、どちらが長い歴史のあるヨーロッパのモードの系譜の本質に近いかと言われたら、自分ならデムナを推したいです。

 

テクノロジー、サイエンス、カルチャー、ビジネス、デザインなど、現代社会をかたちづくる最先端のトピックを扱う雑誌,WIREDが去年ファッション特集号を出した時、同じコンデナスト社に所属するVOGUE編集長のアナ・ウィンターにWIREDでファッション特集を組む企画があると話したら、アナから「今のファッションのことならデムナに聞きなさい」と言われたとのWIRED編集長のコメントが書いてありました。

そのエピソードが今のモード界におけるデムナの影響力を表しています。

そのデムナも7月に発表されるオートクチュール・コレクションを最後にバレンシアガを去り、ケリング・グループの頂点に君臨するグッチのデザイナーに移籍することが発表されました。

売り上げの低迷が深刻なグッチの立て直しに、同グループのエース的存在であるデムナに白羽の矢を立てたのだと思いますが、デムナのディストピアな世界観はバレンシアガというメゾンと相性抜群に感じていたので、華やかなイメージのグッチでどんなディレクションをするのか、そしてそのクリエイションが本当にグッチのブランドイメージと上手くマッチするのか、楽しみ半分不安半分な気持ちでいます。(本当は不安2/3くらいです)

あかんかったら4シーズンくらいでバレンシアガ戻せばいいと思います。

 

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ANN DEMEULEMEESTER

 

2022年にアンがルドヴィック・ド・サン・セルナンをデザイナーに起用した時は、これまでのアンの世界観とは違ったものになっていきそうで(音楽で言うとアンはオルタナティヴな世界観だったのに、ヴィジュアル系に好かれるブランドにしたいのかと思いました)、アンに対する興味が一気に失せそうになったのですが、ルドヴィックを1シーズンで電撃解任した後デザイナーに起用したステファノ・ガリーチはアンのDNAであるオルタナティヴとアヴァンギャルドの精神を持った人物で、アン・ドゥムルメステール本人もブランドも大好きな僕は個人的にとても嬉しく思っています。

(先日、東京に行った時に表参道で偶然すれ違ったお客様でカメラマンのイム君は、少し前に仕事で来日していたガリーチを撮ったらしく「ルー・リードみたいな雰囲気だった」と言っていました。それを聞いて余計にガリーチを応援したくなりました)

まだ弱冠28才。

創業デザイナーが去った今のアンを正しい方向に導きつつ、ガリーチ自身もブランドと共にデザイナーとして大きく成長していってほしいです。

 

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という感じのコレクション雑感でした。

いつも好き勝手書いてるので、好みの違う方は気分を害される方もいらっしゃるかと思いますが、そういう方はすみませんがなるべく見ないようにしてください…

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!

gap PRESS vol.183

2025.05.03.

Posted on 05.03.25

gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter MILAN/NY 特集号です。

 

 

表紙は、LVMHやケリングの二大グループが失速する中、MIU MIUと共にグループで絶好調のPRADAのコレクションのものです。

 

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PRADA

 

 

上記のモード界の二大グループが大きく売り上げを伸ばして成長していた頃(数年前)、PRADAグループは苦戦を強いられていました。

その頃は、コロナもあってモード界はベーシック回帰の大人っぽい服作りがトレンドでした。

ミウッチャ・プラダは長年、PRADAとMIU MIUというふたつのブランドを手掛けていましたが、そのふたつのブランドでもPRADAは大人女性の為のトラッドで本質的な服作り、対してMIU MIUは若い世代を意識したフレッシュでキャッチーな服作りと棲み分けがされていました。

ですが、大人びたスタイリングが主流となる時期が長くなると、MIU MIUも戸惑いながら大人びたデザインのコレクションを発表していくようになり、次第にPRADAとの距離が近くなってしまうことで、それぞれのブランドの魅力が伝わりにくい悪循環に陥っていきました。

そんな窮地のプラダグループに救世主となったのがラフ・シモンズの加入です。

PRADAにラフが加入したことで、今度は上品で大人なPRADAにデザイナーズブランド仕込みのカッティングエッジなデザイン性とユースカルチャーなアプローチが入って、とても新鮮な風が吹き込みました。

大人びたエレガンスとストリートの感性がハイブリットされ、PRADA自体も若返り、一気にトレンドセッターのポジションを奪います。

そしてラフに大いに刺激を受けたであろうミウッチャの手掛けるもうひとつのブランドMIU MIUも、その頃から一時の迷いから解き放たれたようにデザインに革新性が戻り、スマッシュヒットを連発していきました。

 

なぜ今回、PRADAの近況を改めて振り返るようなことを書いたかというと、MIU MIUとプラダグループの快進撃にはもう一人の重要人物がいたからです。

その人物のことは次のVERSACEのところに書きます。

 

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VERSACE

 

ブランドの創設者ジャンニ・ヴェルサーチェの妹で、ジャンニの死後20年にわたりVERSACEをデザイナーとして牽引してきたドナテラ・ヴェルサーチェの退任が先日発表されました。

その水面下では、いくつかの戦略的な動きがありました。

まず、ドナテラ・ヴェルサーチェの退任が発表され、それとほぼ同時に後任デザイナーにダリオ・ヴィターレという人物が就任することが発表されました。

このダリオ・ヴィターレは、直前までMIU MIUのデザイン・ディレクターを務めていました。

当店には、ヨーロッパのモードの最前線で仕事されているお客様も何人かいらっしゃって、その方達からMIU MIUの快進撃の陰にはこのダリオがいるということを聞いていました。

以前こちらで、MIU MIUの躍進には天才スタイリストのロッタ・ヴォルコヴァの存在が大きいと書きましたが、このダリオはMIU MIUにとってロッタ以上の存在なのかも知れません。

そしてその後、プラダグループによるVERSACE買収のニュースが発表されました。

つまりプラダグループは、新しく傘下に入るヴェルサーチェに(ミウッチャとラフ以外で)一番信頼のおける人物であるダリオを送り込んだということになります。

ヴェルサーチェが来シーズンどんなコレクションを見せてくれるのか、今から非常に楽しみです。

 

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JIL SANDER

 

 

 

2017年4月から8年に渡ってジル・サンダーのクリエイティヴ・ディレクターを務めたルーシー&ルーク・メイヤー夫妻も、このコレクションを最後に退任することが発表されました。

二人のクリエイションは相変わらず素晴らしいですが、他のメゾンのデザイナー交代劇の多くと同じく売り上げの低迷も今回の退任の背景にあったと噂されています。

JIL SANDERは、創業者のジル・サンダー自身もブランドから追放された歴史があります。

柳井社長、もしくはその側近の方々、もし万が一このブログを目にされたら、ぜひルーシー&ルークにユニクロコラボのオファーを出してみてください。

ルメール、クレアに加えてルーシー&ルークまで手駒にできれば、ベーシックファッションにおいては(それでもモード界には敵わないと思いますが)ユニクロが最強になる時代が本当に来るかも知れません。

 

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という感じのコレクション雑感でした。

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ!

gap PRESS MEN vol.79

2025.04.04.

Posted on 04.04.25

gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter MILAN/LONDON/NEW YORK メンズコレクション特集号です。

 

 

表紙は、イラストレーター出身というキャリアを持つファッションデザイナー,Pierre-Louis Mascia(ピエール=ルイ・マシア)のコレクションのものです。

スカーフから始まったコレクションはライフスタイルブランドへと成長、そして24年ピッティ・ウオモの招待デザイナーとして初のランウェイショーを行ったことをきっかけにミラノの舞台でコレクションを発表するようになりました。

 

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Pierre-Louis Mascia

 

 

モード界からは最近、ドリス・ヴァン・ノッテンという巨星が表舞台から去りました。

ドリスは折衷主義なクリエイションを得意とするデザイナーでしたが、このピエール=ルイ・マシアの折衷主義のデザイン性とバランス感覚にも目を見張るものがあります。

東洋と西洋、そして時にエスニックな要素も感じさせつつ、世界観の異なるアイテム同士を上手くスタイリングしています。

テキスタイルのハイセンスな組み合わせのバランス感覚は、ドリスにも負けていないかも知れません。

生地感とかも実際に見てみたいですが、今こういうブランドを取り扱ってくれるセレクトショップが日本にどれだけ存在するのか…

コレクションのスタイリングは、古着好きの方にも参考になるものだと思いますので、ご興味のある方はぜひ全てのルックをチェックしてみてください。

 

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GUCCI

 

 

当時低迷していたGUCCIを一躍トレンドセッターの座に復興させたアレッサンドロ・ミケーレが退任した後、“GUCCI Ancora”の合言葉のもとサバト・デ・サルノが就任したGUCCIは装飾主義だったミケーレ時代から一気に削ぎ落とされ、俗に言う「クワイエット・ラグジュアリー」(なんじゃそれ)というモード界の新トレンドを生み出しました。

個人的にサバトのGUCCIは、洗練されたデザインでとても素晴らしいなと思って見ていましたが、今はそういうベーシックの革新性が売れる時代じゃないんですね…

サバト就任から売上はガクッと下がっていき、GUCCI経営陣は2年と経たない任期でサバトの解任を決断しました。

 

ここから少し余談になるし長くなってしまいますが、先日メゾン・マルジェラのデザイナーを退任したジョン・ガリアーノのドキュメンタリー映画を観ました。

ガリアーノは若い頃、その抜群のセンスと独創的な服作りでロンドンコレクションに登場すると瞬く間にモード界から大きな注目を集めました。

彼のコレクションを見たいという業界人は多くいましたが、“普段着”として着用するには難しそうなガリアーノの服の売れ行きは業界の評価とは対照的に芳しくないものでした。

ガリアーノは資金難の為、コレクションを発表することを諦めたシーズンがありましたが、アナ・ウィンターなどモード界きっての有志達が彼のコレクションをバックアップすることを表明し、ガリアーノはそのお陰でなんとか服作りができたという状態でした。

そんな「売れる服」を作ることや「お金儲け」に興味のないガリアーノをジバンシィのデザイナーに抜擢したのは現LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン グループ)会長兼CEOのベルナール・アルノー氏でした。

LVMHも今は「お金儲け」のイメージが強いですが、当時はこういった人選もしてきたんです。

ガリアーノはジバンシィのデザイナーに就任した1年後、矢継ぎ早にディオールのクリエイティヴ・ディレクターに昇格しました。

ガリアーノが本格的にモード界で名声を確率させたのはこの頃です。

 

今のモード界には、今一度、売り上げを最重要視してデザイナーの進退を判断するのではなく、高い力量や創造性を持ったデザイナーを重要視した人選をしていただきたいです。

でも、実績のあるデザイナーの代わりにまだ一般的には無名に若いデザイナーが起用されている交代劇も一方ではあるので、グループの中でもある程度バランスを取っているのかも知れませんね。

 

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Jil Sander

 

ジル・サンダーにおいてルーシー&ルーク・メイヤー夫妻が成し遂げた功績も素晴らしいものだったと思います。

二人が現職に就任した2017年は、モード界ではストリート旋風が吹き荒れている時期でした。

ヴェトモンやオフホワイトなど、ストリート直系のスタイルでモード界に殴り込みをかけてくるブランドが大きな注目を集める中で、ジル・サンダーはDiorなどラグジュアリー畑出身のルーシーとSupremeでキャリアを積んだストリート畑のルークという、両輪を持ったデザイナー夫婦に白羽の矢を立てました。

二人によるジル・サンダーは、ほぼ同時期にセリーヌのデザイナーを退任したフィービー・ファイロから、モードにおいて行き場を失った“ニュー・ベーシック”愛好者層の受け皿のような役割も果たしていました。

今回のジル・サンダー退任は、フィービー期のセリーヌの最後のように売り上げの伸び代に見切りをつけられてのものなのかどうなのかは分かりませんが、他のメゾンでまだまだ彼らのクリエイションを見たいです。

 

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という感じで今回のコレクション雑感とさせていただきます。

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!

gap PRESS MEN vol.78

2025.03.22.

Posted on 03.22.25

gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter PARIS メンズコレクション特集号です。

 

 

表紙は、スパイク・ジョーンズが手掛けた映画『かいじゅうたちのいるところ』からイメージしたというsacaiのコレクションのものです。

 

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sacai

 

 

阿部千登勢さんがデザイナーを務めるsacaiは、生粋の日本のブランドです。

もともとはニットが得意なブランドで、僕もsacaiがまだコレクションとかしてなかった駆け出しの時代にニットを購入したことがありますが、とても面白い素材の使い方をしてて当時愛用していました。

その頃は、まだkolorなどを手掛けていた旦那さんの阿部潤一さんの方が断然有名で、商業的にもkolorとsacaiでは格差があったと思います。

ですが、ヨーロッパで広く受け入れられたのは結果的にsacaiの方でした。

 

コレクションを見ると日本人からすれば、sacaiはヨーロッパ的なデザインに思う方の方が多いかも知れませんが、ヨーロッパの人達からみればsacaiのクリエイションは“ジャポニズム”だと見られるわけです。

西洋のルーツでは出せない独特の感覚がsacaiにはあって、それがパリでも面白いと評価されている大きな要因です。

僕、個人的には折衷主義でもドリス・ヴァン・ノッテンのようなよりクセの強いブランドに魅了されていたので、sacaiの洋服はそれ以降買わなくなりましたが(今の方が当初より良くも悪くもコンテンポラリーになったというのもあります)、今ではsacaiはパリでも世界のバイヤーが注目する日本を代表するブランドのひとつに成長しました。

 

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LOUIS VUITTON

 

 

sacaiもそうでしたが、ここでファレルのヴィトンを取り上げるのも初めてです。

今シーズンは、KENZOやHUMAN MADEでデザイナーも務めるNIGOとコラボレーションしてのコレクションを発表。

ファレル・ウィリアムスもNIGOも、完全にアメリカンカルチャーをバックボーンとするクリエーターで、ヨーロッパのファッション史の長い歴史を継承しながらさらに新天地を開拓していくパリコレクションの舞台では、少し前の時代までは彼らのようなタイプの人物はパリコレのトップブランドにはいませんでした。

彼らが今、パリの主要メゾンのデザイナーに起用されているのは、ルイ・ヴィトン メンズデザイナーの前任である故ヴァージル・アブローの功績が大きく影響していると思います。

特にファッションにおいては強い自信とプライドを持っているヨーロッパの文化を中心とするモード界において、アメリカンカルチャーをパリに本格的に持ち込んだヴァージル(その少し前にGIVENCHYでアメリカンカルチャーを取り入れたコレクションを発表したリカルド・ティッシの存在も大きかったです)はあまりにも偉大だったと思います。

 

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DIOR

 

 

上でファレルやNIGOの話をした時により先駆者のキム・ジョーンズがおるやんけ、と思われた方もいらっしゃるかも知れません。

キム・ジョーンズは、NIGOなどが牽引していた90’s当時の日本の裏原ブームにもバックボーンのあるデザイナーですが、キムの提案するストリートスタイルは気品があって口の中でとろける高級チョコレートのようにラグジュアリーブランドでも浸潤するものでした。

キムは今シーズンでDIORを退任することが既に発表されました。

モード界はきっと彼を無職で放っておかないと思うので、近いうちにまた別のブランドに就任するニュースがあるかも知れません。

DIORでのキムのキャリアも本当に素晴らしいものでした。

 

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という感じのパリコレ雑感でした。

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VOGUE ITALIA N.892

2025.01.30.

Posted on 01.30.25

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

リカルド・ティッシのGIVENCHY時代を彷彿とするくらいマッチョな表紙です。

一瞬UOMO(VOGUEのメンズ版)が届いたのかと思いましたが、この表紙で間違いなくイタリアンヴォーグでした。

なんてことだ。

 

中の写真も少しご紹介いたします。

 

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この鏡を駆使したポートフォリオが面白かったです。

 

 

 

鏡を使うこと自体はあるあるなんでしょうけど、その手法で一目見て違いのわかる作品を作れるところが本当に凄いです。

 

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このちょっとだけサスペリア風の写真も構図がお見事です。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ!

 

 

VOGUE ITALIA N.891

2025.01.07.

Posted on 01.07.25

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

コロナもひと段落したので、オンラインではなくフィジカルを楽しみましょうと言っています。

 

確かに、最近はおしゃれして出かけようと思うようなイベントや場所がかなり少なくなってきているように思います。

昔は、百貨店やファッション施設なども頑張っておしゃれしてないと入りづらかったです。

高校生になって間もない時、モードなファッションに対する興味が強くなって色んなブランドのオンリーショップやセレクトショップに行きたかったのですが、そこに着ていく服を持っていなくて詰んだ記憶があります。

昔はメルカリはおろかインターネットさえロクに使えない時代でしたから…

 

でどうしたかと言うと、まずブランド古着のお店をいくつか回って全身一式を揃えて、その服を着てY’sとかアニエス・ベーとかに行って新品の服を買って、その服を着てようやく百貨店やセレクトショップに引け目なく行けるようになりました。

今は百貨店もそんな敷居の高い場所ではなくなりました。

 

それから長い歳月が流れた現在、例に漏れることなくおっさんとなった今の僕が一番おしゃれして出かけようと思う場所が美術館です。

もちろん日々のファッションも好きな服を着て楽しんでいますが、美術館や博物館に行くときは特にお気に入りのファッションに身を包んで出かけたいなという気分になります。

 

前置きが長くなりましたが、誌面の写真をいくつかご紹介いたします。

 

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2025年もファッションを楽しみましょう!

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ。

gap PRESS vol.181

2024.12.15.

Posted on 12.15.24

gap PRESSの最新号は、2025 Spring&Summer PARIS/LONDON コレクション特集号です。

 

 

表紙は、GUCCIから移籍したアレッサンドロ・ミケーレによるファーストコレクションとなるVALENTINOのものです。

 

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VALENTINO

 

 

前任のピエールパオロ・ピッチョーリは、現在DIORのクリエイティブ・ディレクターを務めるマリア・グラツィア・キウリと共に低迷していたかつての名門,ヴァレンティノを見事に復興させました。

当時から既に素晴らしい才能を持った2人が手を組んでクリエイションを指揮したのですから、それは当時のヴァレンティノのコレクションというのは圧倒的なものがありました。

デザイナーの片方,マリア・グラツィア・キウリが抜けた後も、ピエールパオロ・ピッチョーリは自身の持ち味である端麗で格調高いコレクションを発表し続け、ヴァレンティノの価値を維持していました。

 

そして、その時代を経てのアレッサンドロ・ミケーレ就任。

ピエールパオロ時代の厳格さとは打って変わってミケーレらしい装飾主義的なコレクションでしたが、こちらもヴァレンティノのレガシーをちゃんと感じられるもので、やはりミケーレの才能は素晴らしいなと改めて感じるものでした。

 

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MIU MIU

 

 

MIU MIUは快進撃を続けています。

ここ日本でもアパレルが売れていると聞きます。

バッグや小物ではなくアパレルが売れるブランドというのは、それだけファッショニスタの人達にコレクションが支持されているということです。

先日、fashionsnap.comの記事で、現在MIU MIUのスタイリングやキャンペーンを担当しているスタイリストのLotta Volkova(ロッタ・ヴォルコヴァ)が取り上げられているのを見ましたが、今のMIU MIUの成功の影にはロシア人スタイリストのロッタの存在があります。

 

セントラル・セント・マーチンズでアートとデザインを学んだ彼女は、デムナ時代のVETEMENTS(ヴェトモン)でスタイリストだけでなくモデルのキャスティングやコレクションのコンサルティングも行い、ブランドの躍進に大きく貢献しました。

今のモード界においてもキーマンとなっている人物だと思います。

ミウッチャとロッタの黄金のコンビネーションが続く限り、MIU MIUは魅力的なコレクションを発信し続けてくれるでしょう。

 

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SAINT LURENT

 

 

最後にもうひとつくらい取り上げて終わりにしようと思って、どれにしようかと考えたのですがヴァカレロのサンローランについて少し書くことにしました。

 

アンソニー・ヴァカレロがサンローランのデザイナーに就任したのは、前任エディ・スリマンの後任としてでした。

エディはその後、CELINEのクリエイティヴ・ディレクター(正確にはアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクター)に就任し、メンズを立ち上げ、セリーヌの飛躍にも大きく貢献しました。

先日、エディがセリーヌの同職を退任するというニュースがありました。

その任期は7年間に及ぶものでした。

 

その間もアンソニーはサンローランで素晴らしいキャリアを築いてきました。

エディのようなカリスマ性まではないし、話題性もそんなに大きなものではないのかもしれませんが、アンソニーはデザイナーとしてとても優秀な人物に映ります。

就任当初は、エディ・イズムを受け継ぐようなスタイルにブランドを導くのかな、とも思ったりしましたが、長く見続けるほどにヴァカレロの色やスタイルというものがエディとは明確に違っているのだということを理解できるようになりました。

ヴァカレロがサンローランで立ち上げたアートやカルチャーのプロジェクトでも、エディともまた少し違った趣味趣向のアーティストやデザイナーを取り上げており、カルチャーにも精通していたエディの後でも臆することなく自身の審美眼に基づいた人選をしていることが凄いなと思いました。

アンソニーのサンローランでのキャリアは、この先、延べ10年に到達しても何ら不思議ではありません。

それだけ素晴らしいクリエイションを続けていると思います。

 

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という感じのパリ・コレクション雑感でした。

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひごご覧くださいませ!

gap PRESS vol.180

2024.12.03.

Posted on 12.03.24

gap PRESSの最新号は、MILAN/NEW YORK 2025 Spring & Summer コレクション特集号です。

 

 

表紙は、マチュー・ブレイジーによるボッテガ・ヴェネタです。

 

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BOTTEGA VENETA

 

 

今期のテーマは“WOW!”

子供時代の自由な感覚と、思春期を経て変容し何者かになった自分自身をリンクさせ、過去と現実が夢の中で入り混じるような遊び心溢れるコレクションを披露しました。

秋頃に帰国してカットしに来てくださったアントワープ王立アカデミーを卒業したお客様が、エディがセリーヌを辞めるならマチューのいるボッテガ・ヴェネタに行きたいと言っていましたが、それだけマチューは面白い服作りをしているのだと思います。

ボッテガ・ヴェネタは、前任のダニエル・リーの時に一躍トレンドセッターのポジションへとブランドを導きましたが、その後を引き継いだマチューも素晴らしいクリエイションを続けており、ボッテガとしてはダニエルが去った危機を見事に乗り越えさらにブランドの価値を高め続けることに成功しています。

マチューも素晴らしいですが、経営陣の手腕も素晴らしいのでしょう。

 

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PRADA

 

プラダもラフ・シモンズの電撃的な加入以来、現在のモード界において常に注目を集める存在であり続けています。

「無限の現在」を意味する“INFINITE PRESENT”が今期のテーマ。

“有限のプログラムで構成された情報社会の構造と対をなす、人々の持つ無限の選択肢にフォーカス”しているらしいです。

近年のテクノロジーの進化や、なんだかちょっと量子学っぽさも入ってそうな考察ですね。

粒子のようにも波のようにも振る舞う不思議な性質を持つ素粒子やニュートリノなどを扱う量子学の世界では、“人々の持つ無限の選択肢”から選択した答えさえも遥か昔にその行動を起こすことが決まっているとも言われています。

2002年の映画『マイノリティ・リポート』では、犯罪を起こす人物を3人の予知能力者たちに事前に割り出させ、犯行前に拘束する犯罪予防局という仮想未来が描かれていました。

これは2054年を舞台にした作品ですが、もしかしたら現実には2054年に未来の犯罪者を割り出す役目をしているのは予知能力者ではなく最先端の量子コンピュータを搭載したAIかも知れません。

 

話が逸れてますが、このコレクションでラフが訴えたかったのはそんな未来の難しい話ではなく、SNSなどインターネットのアルゴリズムによってコントロールされた今の”有限”(マジョリティ)の領域から抜け出して、もっとみんな恐れずに自分の個性や感性を出すことでファッションに多様性や意外性を出して楽しんでほしいというような率直な思いなんだと感じます。

それは僕も共感するところがあります。

 

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Jil Sander

 

 

ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻がJil Sanderのクリエイティヴ・ディレクターに就任した2017年は、長年セリーヌで唯一無二の素晴らしいクリエイションを続けていたフィービー・ファイロがブランドを去った年でもありました。

当時のセリーヌは、世界だけでなく日本のアパレルブランドの中にもセリーヌのパターン(型紙)を真似るところが多くありました。

今の時代だと、ザ・ロウやこのジル・サンダーなどがそういう参考にされやすいブランドだと思います。

日本のファストファッションブランドのユニクロも近年、クリストフ・ルメールやクロエなどで活躍したクレア・ワイト・ケラーなどと契約を結び、それぞれのラインからコレクションを展開しています。

 

これらのデザイナーに共通するところは、そのクリエイションの根底が“ベーシック”であるということです。

モードの世界には、一部のファッション上級者にしか好まれなかったり着こなせないような洋服も毎シーズンたくさん発表されます。

その一方で、一般的な日常のベーシックファッションをアップデートさせたような洋服を作り続けているデザイナーもたくさんいます。その“ニュー・ベーシック”な服作りのトップにいるのが上に挙げたようなデザイナーたちです。

彼(彼女or LGBTQ+)らの作る洋服は、細部までこだわって作り込まれていますが、一般人の多くは(値段が高くなる代償として)そこまで望んでいなくて「もう少し手の届きやすい価格帯で同じようなデザインの服」を求めているわけです。

だから、それらのブランドのパターンを参考にしたようなブランドの洋服というのは多くの需要を見込めるので、それを真似したような服を作るブランドも多いんです。

 

フィービー・ファイロがセリーヌを離れた時、その顧客のうち少なくない人数がルーシー&ルークがデザイナーに就任したジル・サンダーに流れたと聞きました。

それだけ目の肥えたファッション愛好者たちを惹きつけるクリエイションだったのだと思います。

ルーシー&ルークのジル・サンダーでの仕事は、ストリートやクチュールライクな要素を積極的に取り入れるなど、これまでの“ニュー・ベーシック”の考え方にさらに多様性を持たせアップデートさせたもので、就任から7年が経過した現在においても新鮮さを失うことなく素晴らしいコレクションを発表し続けています。

 

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コレクション自体の説明というよりは側面的なお話が多くなってしまいましたが、今回はこれくらいで終わりにさせていただきます。

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ。

VOGUE ITALIA N.890

2024.11.30.

Posted on 11.30.24

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

表紙はアメリカのシンガーソングライター, ラナ・デル・レイです。

何か新作が出るのかなと思って調べてみましたが、ちょっと前にコラボシングルが出てるくらいでした。

ってことは、ラナ・デル・レイはただ単に黒ずきんを被って笑っているってことですね。

表紙も素敵な笑顔を披露していますが、中のポートフォリオの表情の方が個人的にはより素晴らしいと思いました。

 

他の写真も少しご紹介いたします。

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この80年代のアメリカみたいな雰囲気の都市の質感も良いです。

 

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路上と船の構図の写真も面白かったです。

 

 

他にも素晴らしい写真がたくさん掲載されていました。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!

WWD JAPAN TREND BOOK

2024.11.12.

Posted on 11.12.24

WWDJAPANの2025年春夏のパリ, ミラノ, ニューヨーク、そしてロンドン・コレクションの全てを詰め込んだトレンドブック。

 

 

現代はユニクロなどの台頭もあり、日本ではすっかりモノトーンベーシックスタイルが主流となりましたが、今から10年前くらいまでは黒などの無地の服を着ている人の方が圧倒的に少数派でした。

2010年頃は、表紙のような花柄を着ている人も今よりはるかに多かったです。

 

全身黒のワントーンスタイルが個性派ではなく無難なスタイルとなった今なら、逆に花柄やジャガードなどの柄ものの方が個性を表現できる時代です。

 

Z世代の(今のトレンドを追ったものより雰囲気の異なる一点ものを探そうとする)古着ブームもそういったファッショントレンドの文脈が背景にあるのかも知れませんね。

 

そのような時代を捉えつつも、あえて中心を少し外したようなことをヘアスタイルを通じてできればと思って、僕も日々試行錯誤しながら頑張っております。

 

まだV:oltaに来られたことのない方も、ぜひ一度カットしにいらしてください!

Posted on 11.08.24

オランダ人写真家, Ed Van Der Elskenによる1956年に発表された写真集『Love on the Left Bank』の復刻版を手に入れました。

 

 

タイトルの『Love on the Left Bank』の邦題は、「セーヌ左岸の恋」です。

写真の雰囲気もタイトルも、まるでヌーヴェルヴァーグの映画のようです。

 

 

サン・ジェルマン・デ・プレでアンという女性と出会い、彼女とその周辺の若者たちの群像を撮影した傑作写真集。

 

 

 

 

 

 

 

 

現代と違って“洗練され過ぎていない時代”だからこそ滲み出る時代の空気感や生活感がそこにはあります。

写真集ですが、映画や小説をみた時のようなストーリー性を感じます。

 

とても素晴らしい写真集ですので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧になってみてください!

VOGUE ITALIA N.889

2024.10.22.

Posted on 10.22.24

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

 

 

表紙はイタリア出身の女優, モニカ・ベルッチです。

今や大女優ですが、彼女はもともとファッションモデルからキャリアをスタートしました。

ロケーションも彼女のファッションや雰囲気にも合ってて、とてもカッコイイです。

 

『モデル』、『ファッション(及びヘア&メイク)』、『ロケーション』

 

この3つの要素をハイブリットさせてどういう世界観を創り出すかというのが、ポートフォリオの醍醐味だと思います。

イタリアンヴォーグは、人類が創り出し得るファッション性において最高峰のものを創り続けているチームです。

 

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アメイジング…

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この各年代をイメージした作品もとても面白かったです。

 

 

個人的には、やっぱり2000s(特に左の3体)だけはだいぶチャラく見えてしまって、ちょっとアレルギーを起こしそうになってしまいます。。

 

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イタリアンヴォーグの編集もそれを見越してか、この後のページにはバチバチに格好良いティルダ・スウィントンの写真を持ってきていました。

 

 

「お口直しにどうぞ」ってこのページからメッセージが聞こえてくるようでした。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!

VOGUE ITALIA N.888

2024.10.05.

Posted on 10.05.24

8月号と一緒に届いたイタリアンヴォーグ9月号をご紹介することをすっかり忘れておりました。

 

 

表紙はイタリア出身のモデル, Mariacarla Boscono、現在44歳です。

年齢を重ねても、全然変わらない個性と魅力がありますね。

 

 

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今号のテーマは、『ANNI DI STILE』(往年のスタイル)ということで、古いカメラで撮影されたような風合いの(本物思考のイタリアンヴォーグのことだから実際に古いカメラで撮影しているのかも知れません)クラシカルなポートフォリオが並んでいました。

 

 

 

 

 

 

どれも本当に素晴らしいです。

 

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もちろんモダンな写真もパーフェクトです。

 

 

 

 

 

この一冊でクラシカルもモダンも楽しめるなんて、テレビショッピングにでも出した方が良いんではないでしょうか。

 

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!

VOGUE ITALIA N.887

2024.09.15.

Posted on 09.15.24

イタリアンヴォーグの最新号が届きました。

しかも2冊同時に。

 

 

どういうことかと思ったら、輸送の遅延で2ヶ月分同時の納品になってしまったことをお詫びする紙が入っていました。

そこまで言われたらしゃーないです。

船で輸送しているとしても1ヶ月遅れるってどない言うこっちゃ、ヴァスコ・ダ・ガマの時代やないんやからと色々ツッコミどころもありますが、真実を知りたい気持ちをググッと我慢して本誌のご紹介をいたします。

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まず今回は遅れて届いた8月号から。

 

もう9月やないか。

 

でも良い表紙ですね。

被写体は、ジャック・ホワイトの元奥さんでもあるイギリス人モデルのKaren Elson(カレン・エルソン)です。

ロケーションは、イギリスのピカデリーサーカスですね。

モデルの個性やファッションのスタイリングも相まって素晴らしい構図。

 

アメ村の三角公園バックにパロッたろかしら。

でもやっぱりあの辺怖いしやめとこう。

 

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誌面の特集では、ロンドンを舞台に中国人モデルのYilan Huaとマッチアップしていました。

 

 

 

 

 

どれもロンドンの街を活かした見事な写真です。

ちなみに特集タイトルの『London Calling』はクラッシュのアルバムタイトルから引用していますね。

僕もスナップブログのタイトルとかで何度か使ったことがあります。

歴史的なアルバムは、タイトルも抜群にかっこいいものが多いです。

内容が良いから、そのタイトルも余計かっこよく感じるんだと思いますが。

 

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他の写真も少しご紹介いたします。

 

 

 

一番最初の右側の写真なんて、映画のタイトルクレジットが出てきた時の映像のようです。

シネマティックな写真で素敵ですね。

 

9月号は、また近々ご紹介いたします。

本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ。

 

gap PRESS MEN vol.77

2024.09.05.

Posted on 09.05.24

gap PRESS MENの最新号は、2025 Spring&Summer PARIS MEN’S COLLECTION特集号です。

 

 

表紙は、38年のデザイナー人生から引退することを発表したドリス・ヴァン・ノッテンによるラストコレクションのフィナーレ。

左の白髪の男性モデルは、38年前にドリスのデビューコレクションでファーストルックを務めた方だそうです。

今回のドリス自身が手がける最後のコレクションでも、ドリスは彼にファーストルックのモデルを任せました。

ドリスらしく、粋な演出です。

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DRIS VAN NOTTEN

 

ドリスは、今回の引退コレクションを迎えるにあたって、最後のコレクションを発表した後に引退を伝えるのではなく、先に引退を発表した後でコレクションを行いたかったそうです。

だからと言ってコレクションはこれまでの集大成的なものにするのではなく、あくまでいつも通り、クラシックを感じさせつつも時代の一歩先をゆくようなモダンで革新的なエレガンスの提案。

特別感も演出しつつ最後まで自身のスタイルを崩さない姿勢に、「だからドリスが好きなんだ」という気持ちを改めて噛み締めました。

 

僕が最初にドリスを買ったのは、まだ高校生の時でした。

当時買ってたコレクション誌(確かファッションニュース)でドリスを知って、このブランドの服が着たいと思いました。

当時は月に1回、バイトで稼いだお金を全部財布に詰め込んで田舎の淡路島から大阪まで買い物に出かけていました。

いきなりドリスの新品には手が出なくて、ブランド古着屋さんで見つけたシンプルなシャツを買いました。

今思えば僕には少しオーバーサイズだったし、特別そのデザインが気に入ったわけでもなかったのかも知れないですが、それでも雑誌でコレクションを見て憧れていたドリスの洋服に初めて袖を通した時の気持ちは、緊張と高揚感が入り混じった感覚で、自分にとってそれは今でも忘れない特別な瞬間でした。

 

美容師になって仕事を頑張って、今ではドリスの服も家のクローゼットにたくさんありますが、その全てが僕にとってはお気に入りで大切な洋服です。

長い間、素晴らしいコレクションと洋服をありがとうございました。

 

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RICK OWENS

 

 

リックも大好きなデザイナーの一人です。

商業性と効率性が重要視される今の時代、こんなにスペクタルなコレクションを行えるブランドがリック以外に存在するでしょうか?

 

前にも少し書かせていただきましたが、このショーには僕が担当させていただいていたお客様がモデルとしてランウェイを歩いています。

この春にフランスに行く直前にカットしに来てくれて、その3ヶ月後にリックのランウェイを歩いているなんて、本当にビックリしました。

 

僕自身はショーで使用されるような強烈なインパクトの洋服はあまり買いませんが、それでも比較的ベーシック寄りなリックの服を買い続けているのは、モードの世界の中で高い芸術性を追求しているリックの姿勢に感銘を受け一票を投じたいという気持ちもあるからです。

今は円安や物価の高騰もあって、リックの洋服はかなり頑張らないと買えないくらいの金額になってしまっていますが、今所有している洋服を大切に着倒しつつ(リックの服は本当に丈夫で長持ちします)、これからも良いなと思ったものは少しずつでも買えるように仕事頑張ります。

 

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ZIGGY CHEN

 

最近は中国からも面白いデザイナーがたくさん出てきています。

gapの誌面でZIGGY CHENが紹介されているのも嬉しく思いました。

ジギー・チェンは、アルチザン寄りのブランドです。

アルチザンブランドとは、多くのコレクションブランドのようにエレガンスを極めようとするのではなく、職人の手仕事によるトレンドに捉われない究極の服作りを目指しているブランドのことを指します。

コロナ禍で存続を断念したハイダー・アッカーマンというブランドがあったのですが、ハイダーはアルチザンとモードの境界線にいるような折衷主義の服作りが得意で、個人的にもとても好きなブランドでした。

このジギー・チェンの服作りは、少しハイダーを彷彿とするところもあります。

 

僕は、中国のブランドでは、UMA WANG(ユマ・ワン)というデザイナーの洋服が好きでたまに買います。

 

ユマ・ワンも、ジギー・チェンのもとで働いていたことのあるデザイナーですが、男性的な力強さを感じるジギー・チェンに対してユマ・ワンの服作りはより中性的です。

中国人デザイナーらしい独自性のあるデザインやテキスタイルと、その毒っ気を抗毒血清のように中和させる柔らかさを感じるディティール。そのバランス感覚が素晴らしいです。

 

これら二人の中国人デザイナーのように、自身が生まれ育った環境の土着性を持った服作りをするデザイナーが世界中から出てくるのは、とても面白いことです。

 

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今回、紹介した3つのブランドは、ラグジュアリーというよりデザイナーズブランドの毛色が強いです。

今の時代は大勢にとって共感されやすいものを選びたいというマインドの人のほうが圧倒的に多いと思います。

ですが、その潮流が強ければ強いほど、その傍らでカウンターカルチャーを生み出している人達の存在は貴重で魅力的に思えます。

 

少し前に心斎橋のシネマートが無くなると発表された時、とても悲しい気持ちになりました。

マジョリティではない文化に興味を持つ人の絶対数がそれだけ減ってきているのだと思います。

 

SNSで情報収集することが当たり前の時代に育った若い世代の人達も、SNSが普及したことで自身が興味を持つものも大衆的な流行に流されやすくなったと感じている大人世代の方達も、もっと多くの方々に誰もが知っているものだけではなく、決して目立たないけど文化的で他では出せない魅力や価値のあるものの存在をもっと知って興味を持っていただけたらと思っています!

 

本誌はお店に置いてますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ。