Posted on 12.21.21

gap PRESSのパリ/ロンドン特集号が届きました。

 

 

 

表紙の中世の騎士の甲冑のようなルックは、ニコラ・ジェスキエール率いるルイ・ヴィトンのものです。

ミラノ/ニューヨーク号の時に、アジア系にルーツを持つアメリカ人デザイナーのクリエイションとの関係性の話を少し書きましたが、ニコラ・ジェスキエールは南仏生まれのフランス人ですがギリシャにルーツを持つらしいです。

この甲冑を模したヘッドピースも、ローマ軍が使ってた形よりはギリシャ軍の重装歩兵“ホプリテス”を彷彿とさせます。

昨シーズンでルイ・ヴィトンとコラボしたFORNASETTIも、ギリシャ神話のようなモチーフをよく使っており、なんとなくそのクリエイションにジェスキエール自身の血筋からの繋がりを感じさせます。

 

 

今回もいくつかブランドをピックアップしてご紹介いたします。

 

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MIU MIU

 

トップで紹介されていたのはGUCCIでしたが、それをスッ飛ばしてMIU MIUをご紹介します。

ミウッチャ・プラダが手掛けているコレクションは、ミラノのPRADAとこのパリのMIU MIUの2つあります。

昔はトラッドで大人びたPRADAに対して若々しいMIU MIUと、ブランド毎の差別化がきちんとできていましたが、モード界のトレンドが益々同一化している昨今ではその差別化ができず、2つのブランドの立ち位置が曖昧なものとなってきていました。

そこでPRADAは去年、ラフ・シモンズをブランド初めての外部からのデザイナーとして起用しました。

表向きのアナウンスは、ラフとミウッチャとの協業体制とのことですが、そのクリエイションを見ていると大まかにはラフに全権を与えているように思えます。

その期待に応えているラフもまた素晴らしいです。

そして、ミウッチャのPRADAにおけるクリエイションの負担が大幅に減ったことでMIU MIUにほぼ専念できる環境が整い、その結果としてMIU MIUも再び輝き出すという好循環が生まれています。

 

今シーズンも、ローライズとミニ丈で生地の面積を極端に少なくしたパンツやスカートが新鮮でした。

90年代の悪しき日本の流行のひとつに、(センスの悪い)下着が見えるくらいデニムをズルズルに落として履くというスタイルがありましたが、MIU MIUのルックの下着見せは全然だらしなく見えません。

日本人でこのスタイルを色気なしに着こなせるようなセンスと体形を持った人はかなり限られてくると思いますが、我こそはという方はぜひチャレンジしてみてほしいです。

 

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Raf Simons

 

 

そして、PRADAにおいてもその才能を存分に発揮しているラフは、自身のシグネチャーにおいても良い影響が出ているように感じます。

Calvin Kleinのデザイナーを務めていた時は、経営陣とのクリエイションにおける価値観の相違に苦しみ、自身のコレクションでその憂さ晴らしをするような時もありましたが、ラフはクリエイションにおいて良好な(自由な)状態にある時の方がその才能を遺憾無く発揮できるタイプなのかも知れません。

 

ラフはNew OrderやRobert Mapplethorpeなど、近年でも自分と趣味が被るようなアーティストをテーマにしたコレクションを発表していますが、僕がラフを実際に買う時はそういった象徴的なアイテムは逆に選ばないです。(Tシャツとかならたまにそういうものも欲しくなりますが)

それがなくてもラフは素晴らしいですし、むしろ象徴的過ぎないものの方がラフらしさを感じたりもします。

 

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SAINT LAURENT

 

今、パリコレにおいて最も「パリらしい」ブランドは、SAINT LAURENTなんじゃないかと個人的には思っています。

サンローランは、数年前からコレクションをエッフェル塔の足元にあるトロカデロ広場で発表しています。

去年はコロナ禍において、それも中止されました。

今シーズンは久々に夜空に光るエッフェル塔を背景に、また美しいコレクションを発表しました。

それは、パリのファッションが再び動き出したことを象徴するかのようでした。

前任のエディ・スリマンはカリスマでそれに相応しいクリエイション能力がありますが、現在デザイナーを務めるアンソニー・ヴァカレロのクリエイションもとても魅力的なものだと感じています。

 

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YOHJI YAMAMOTO

 

最後に日本から、YOHJI YAMAMOTOのコレクションもご紹介します。

未だ続くコロナ禍において、日本からはるばるパリまでコレクションを発表しに行ったブランドはヨウジだけでした。

その意気込みだけでもヨウジさんのパリコレクションへの強い想いと長年の感謝の気持ちが込められているように思います。

 

昨今の地球環境問題の深刻化によって、ほとんどのブランドがサステナブルな服作りに取り組んでいる現在ですが、多くのブランドがその素材や生産過程におけるサステナブルを掲げているのに対して、YOHJI YAMAMOTOは服をボロボロにしたり引き裂いたりとYOHJIはヨウジらしく服そのもので環境破壊を表現していました。

ショーで使うBGMも、「自分の声で」という意志のもと、ヨウジさん自身が歌っている詩や楽曲が使われています。

 

今の時代、“真のデザイナー”と言えるデザイナーがどれほどいるでしょうか?

そんな世の中にあって、山本耀司さんの生き様は、まさに「これぞデザイナー」と言えるものだと思います。

 

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そんな感じのパリコレ雑感でした。

 

本誌の後半にはBALENCIAGAが約半世紀発表したオートクチュールの解説も掲載されていて、そちらもとても興味深かったです。

 

 

ご興味のある方は、ご来店時にぜひご覧くださいませ!