2021 S/S COLLECTION

2020.10.14.

Posted on 10.14.20

新型コロナウィルスの影響で、世界の主要コレクションでは無観客のデジタルコレクションが主流となっています。

 

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SNSが一般に浸透して以降、SNSを利用してコレクションをライブ配信するブランドも次々と増えました。

 

家にいながらにしてパリコレをリアルタイムで観れるなんて、一昔前では考えられないことでしたが、今やそれも当たり前の世の中となりました。

 

お気に入りのブランドをフォローすれば、コレクションや新作などの最新情報も気軽に見ることが可能ですし、ニッチな世界に位置していたモードというものが一般に開放されたような感覚です。

 

コレクションをリアルタイムで鑑賞できたり過去のアーカイヴも簡単に閲覧できるなど、便利になって良かった部分もたくさんありますが、世界中のより多くの人達がマーケティングターゲットになった為、ブランド自身の価値観も大きく変わっていき、素晴らしい歴史を気づいてきたモード界全体の様式もここ数年で大きく変化したと思います。

 

デザイナーを外部から起用するラグジュアリーブランドは、近年、矢継ぎ早にデザイナーの入れ替えを行っています。

それはまるで、しけったマッチ箱からマッチを取り出し、無闇矢鱈に擦って、火が点かなければすぐに次のマッチを取り出すという一連の動作と同じような印象を受けます。

火がつきやすいように風上に背中を向けることも、片手でマッチの火を大切に覆うこともせず、無事に火が点いたものでもその炎が弱まればまだ火が点っていても捨てる。

今の時代のファッションデザイナーは、短期間で結果を出さなければいけません。

ファッションの本質を追求したいと考えるデザイナーにとっては、本当に大変な時代だと思います。

 

そして新型コロナの激震がありました。

現在、ブランドが新作コレクションを発表する為に求められる場所は、オンライン上でのデジタルコレクションとなっています。

 

今シーズンの目玉は、ラフ・シモンズが加入したプラダです。

 

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ベールを覆うようなケープが落ちないように、モデルが胸元で握り締めた拳が印象的でした。

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ロングスカートにセーターを合わせるスタイルは、最近のミウッチャ・プラダの「ユニフォーム」スタイルに着想を得たらしいです。

 

ミウッチャ・プラダもラフ・シモンズも、今の商業性を極端に重視したモード界に染まらずにいるデザイナーだと思いますので、応援したい気持ちも強いです。

 

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今シーズンで一番印象に残ったコレクションは、ジョン・ガリアーノによるMaison Margielaのコレクションでした。

 

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人と人との繋がりにフォーカスし、パートナーと信頼し合ってステップを踏むタンゴから着想を得たという本コレクションは、ガリアーノの持っている類稀なファンタジー性と洗練されたユーモアが存分に発揮された素晴らしいコレクションでした。

 

マルジェラは、現在日本ではタビブーツ(及びタビシューズ)が「モード界における残念な流行番付」において堂々の東の横綱(全盛期の白鵬並みの強さ)に君臨していますが、ガリアーノのクリエイションはその残念な日本の流行とは反比例するかのように益々研ぎ澄まされています。

 

ジョン・ガリアーノは、もともとジバンシィ、そしてクリスチャン・ディオールにおいてデザイナーとして素晴らしい才能を発揮してきました。

現在、ラグジュアリーブランドのデザイナーと言っても、縫製はおろかファッションスケッチも書けないという人も少なくなく、洋服を一から作れる人というのは意外なほど少ないのですが、ガリアーノはその数少ない「服作りのできるデザイナー」のうちの一人です。

しかも類稀な創造性を兼備した、天賦の才を持った正真正銘のデザイナーだと思います。

 

最近の僕は、日本でマルジェラがタピオカみたいな流行り方をしてるのを見て、過去に買って所有しているマルジェラの洋服を着ることも気が進まないくらいでしたが、このガリアーノのコレクションを観ると、マルジェラの洋服のひとつでも買ってリスペクトの気持ちを示したい気分になりました。

 

コロナで「今は洋服なんて」という方も多いかと思いますが、デザイナーが魂を込めて作ったような洋服にはそういう時にこそ気持ちを前向きにさせてくれる魔力のようなものがあるように感じています。

 

こういう時だからこそ、ファッションを楽しんで、前を向いて日々を歩んでいきたい気持ちです。