年度代表盤 2021
2021.12.24.
Posted on 12.24.21
今年も早いもので一年が終わろうとしています。
去年から続くコロナ禍において、今年も音楽は変わらず世界中の音楽ファン達を楽しませ、その心を癒してくれました。
自分自身の毎年のルーティーンのひとつとなっている年度代表盤(年間ベストアルバム)の発表を今年も記しておこうと思います。
今年は並々ならぬ気合を入れて15枚ご紹介します。
ご興味のある方は、よろしければ見ていってください。
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15th/ The Goon Sax – Mirror II
James Harrisonを中心とするブリスベンの男女トリオ、Goon Sax。
性格に似合わずポップも大好き美容師の僕は、アルバムを再生して一曲目の“In the Stone”のイントロが流れた瞬間にレコードに“いいね!”ボタンが付いていたら激押ししていたと思います。
(逆にSNSでは“いいね!”ボタンは絶対に押さないという独自のルールを採用しています。フォロワーの皆さまにはスミマセンの気持ちと、ご理解をお願いいたします)
タワレコの試聴機とかにもそんな機能をつけたらいいのに。
日本の灰野敬二や裸のラリーズにも影響を受けたらしいですが、僕には影響受けたバンド聴かれてカッコつけてそう答えて、裏ではこっそりThe Vaselines聴きまくってる奴としか思えません。
そして、そういう奴ほど最高な音を作ります。
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14th/ Pavel Milyakov & Yana Pavlova – Blue
Buttechno名義でも活躍するロシア地下テクノシーンの中心人物, Pavel Milyakovとウクライナ・キエフ在住の女性アーティスト,Yana Pavlovaによる共作。
アンビエント, バレアリック, ジャズ, サイケデリック, ブルースなどのエッセンスを織り混ぜ、Yana Pavlovaの妖艶で幽玄的なヴォーカルで昇華する。
Buttechno作品も毎回楽しみにしていますが、それらとは趣向の違う本作もとても良かったです。
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13th/ 박혜진 Park Hye Jin – Before I Die
韓国出身、メルボルンとロンドンを経て、現在はLAを拠点に活動するPark Hye Jinのデビュー作。
BTSやBLACKPINKのことは名前だけギリ知ってますが曲は一曲も知らないしそもそもあまり興味が湧きませんが、韓国のアンダーグラウンド・シーンにはこのPark Hye Jin以外にもYeajiやPeggy Gouなど良いアーティストがたくさん出てきていて、僕はそっちの方が断然興味があります。
本作も素晴らしいデビュー作でした。
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12th/ Andy Stott – Never the Right Time
Andy Stottは、作品を全部レコードで買ってるくらい大好きなアーティストの一人です。
本作では、長年のコラボレーターであるAlison Skidmoreがヴォーカルとリリックで参加。
Andy Stottらしい退廃的でエレガントな音に、アリソンの美しく儚いヴォーカルが溶け合い、これまでの作品の世界観を損なうことなく、また新しい形を提示してくれました。
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11th/ The War on Drugs – I Don’t Live Here Anymore
僕はコロナの少し前あたりから、今まで観てこなかった昔の映画とかをよく観るようになったのですが、今では昔の映画監督の方が断然好きな監督が多くて、それらの監督の多くはもう既に亡くなっていたりするので、残された作品を一つずつ大事に噛み締めるように観ているのですが、同じ監督の作品をいくつか観ているとその監督らしさというものがわかってきて、それくらいまで(と言っても最低限ですが)監督のことが理解できるようになってからまた次の作品を観ると、映画が始まったあたりで「やはりこの監督の作品だな」と不思議な安心感を覚えるようになってきます。
なんでそんなことを書いたかと言うと、このThe War on Drugsの新作を聴いた時にも似たような安心感を覚えるからです。
それって作り手が凄いレベルにあるから、そう思わせることができるんだと思います。
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10th/ DARKSIDE – Spiral
エレクトロニック界の重要人物の一人,Nicolas Jaarとマルチ奏者のDave Harringtonによるユニット,DARKSIDEの8年ぶりにリリースされた新作。
ニコラス・ジャーの高音だけど時折かすれ声のようなハスキーさも感じさせるヴォーカルに、デイヴ・ハリントンの色気あるギター。(わざと出しているであろう)コードチェンジの際の不協和音のような音さえも魅力的。
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9th/ Shame – Drunk Tank Pink
今年もキラ星の如く出てきたサウス・ロンドンを中心とする新たなロックシーンから、今年の幕開けを飾ったようなShameのデビュー作。
Shameの他にもBlack Country, New Road、Dry Cleaning、Black Midiなど、他にも素晴らしいロックバンドがたくさんデビューした年でした。
コロナが明けたら、これらのバンドもいつか生で観てみたいです。
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8th/ Smerz – Believer
Shameに続き、こちらもデビュー作。
こちらは近年盛り上がりをみせてるノルウェーの地下シーンから。
民族音楽、オペラ、ミュージカル、クラシックなどをハイブリットさせ、次世代の音へと昇華させています。
一部でポスト・ビョークとの声もありますが、ビョークには「全然違うし!」とか言われそうです。
でも、ビョークみたいになれなくても、十分に将来を期待できるアーティストです。
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7th/ Jeff Parker – Forfolks
TortoiseやChicago Underground Quartetなどでも活躍するギタリスト, Jeff Parker の新たなソロ作。
これがまたミニマルなアンビエント・ジャズで、とても良いんです。
雪が降るくらい寒さが厳しい日の夜に、暖房の効いた家で食べるクリームシチューくらい暖かいです。
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6th/ Grouper – Shade
ポートランド生まれのシンガー, Grouperの15年にわたる楽曲のコレクション。
今年も続くコロナ禍において、気づけばアンビエント系の音楽を聴くことが多かったように思います。
Grouper曰く、本作は「休息と海岸についてのアルバムだ」ということです。
来年は、静かに海を眺めに行こう。
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5th/ Snail Mail – Valentine
U.S.インディからのネクストブレイク筆頭株,Snail Mailの新作。
Haimが去年『Women In Music Pt. III』をリリースした時、相撲の幕内力士が三役に上がった時のような貫禄が出たように感じたのですが、Snail Mailの本作にも早くも同じ雰囲気が出てきているように感じました。
少ししゃがれた声も魅力的。
まだ若干22歳にして、この大人びたムード。
どこまで成長していくのか楽しみです。
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4th/ SAULT – NINE
UKの覆面ユニットSAULT(ソーと読むらしい)の最新作。
本作は、99日間限定のストリーミング、同期間のみ購入可能なアルバムとしてリリースされました。
『5』『7』『UNTITLED (RISE)』『UNTITLED (BLACK IS)』ときての本作『NINE』
どれも外しません。
近年、UKのエレクトロニック・シーンでもジャズやファンクを軸とするような作品が最新トレンドのひとつとなっています。
SAULTはそれらの新進気鋭のアーティスト達の中でも、新時代の旗手となり得る存在だと思います。
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3rd/ Space Afrika – Honest Labour
UKはマンチェスターの音響デュオ, Space Afrikaの19トラックに及ぶ新作。
ひとつ前に紹介したSAULTもそうですが(これがギャグっぽく思えるようにわざわざ上でSAULTの発音の仕方まで書きました)、Burial以降のUK地下エレクトロニック・シーンの最新形を体現する作品のひとつだと思います。
と書いて今回のランキングにDean Bluntの新作を入れるのを忘れてしまってることに今気付きました。
この年末の忙しい中、今更直すのは心と魂が折れて年を越せなくなるので、瞬時に諦めることにしました。(他に忘れている作品もあるかも)
入れるならトップ3に入ってるかも知れません。大失態です。
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2nd/ His Name Is Alive – Hope Is A Candle
このアルバムは今年よく聴きました。
His Name Is AliveことWarren Defeverによる初期未発表音源集3部作の3作目。
静かで美しいアンビエント作品。
本作は1985 – 1990の間にレコーディングされた楽曲,13曲から成ります。
こういった当時の時代には斬新過ぎて、気付かれずに取り残されていた楽曲が近年コアな音楽愛好家達に発掘され再評価されています。
まだまだ出会えていない古い時代の良きものは音楽だけでなく、この世にはたくさんあるのでしょう。
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1st/ Arca – 『KICK ii』『KicK iii』『kick iiii』『kiCK iiiii』
ベネズエラ出身ロンドン在住の奇才,Arcaことアレハンドロ・ゲルシによる、年末に怒涛のようにリリースされた4連作を少しズルいですがまとめて今年の年度代表盤に選びたいと思います。
正直、こんな忙しい時期に一気に4枚もリリースするので、まだまだ聴きこめてないのですが、なんか聴くアルバム全部良いし、何より新作アルバム一気に4枚なんてまるでサンタが大きな袋にプレゼントをギュウギュウ詰めにしてくれたみたいな気分で、年甲斐もなく少年のようにテンションが上がりました。
そう、少年のように…
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年齢を重ねてきても、音楽や映画,ファッションなど、未だに少年のようにときめくことができている自分は幸せ者だと思います。
そして、プライベートでは自分の趣味を共有できるような友達は半生を通してもかなり少なかった(元々の友達もかなり少ない)ですが、独立してV:oltaをオープンさせてから今日に至るまで、お店を自分の趣味全開にしたことで、同様の趣味を共有できるたくさんのお客様と出会うことができ、大好きな趣味の話を仕事しながらできているという現状が本当に幸せでなりません。
また来年も素晴らしい音楽に巡り合えることを期待しています。
メリー・クリスマス!