gap PRESS MEN vol.79
2025.04.04.
Posted on 04.04.25
gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter MILAN/LONDON/NEW YORK メンズコレクション特集号です。
表紙は、イラストレーター出身というキャリアを持つファッションデザイナー,Pierre-Louis Mascia(ピエール=ルイ・マシア)のコレクションのものです。
スカーフから始まったコレクションはライフスタイルブランドへと成長、そして24年ピッティ・ウオモの招待デザイナーとして初のランウェイショーを行ったことをきっかけにミラノの舞台でコレクションを発表するようになりました。
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Pierre-Louis Mascia
モード界からは最近、ドリス・ヴァン・ノッテンという巨星が表舞台から去りました。
ドリスは折衷主義なクリエイションを得意とするデザイナーでしたが、このピエール=ルイ・マシアの折衷主義のデザイン性とバランス感覚にも目を見張るものがあります。
東洋と西洋、そして時にエスニックな要素も感じさせつつ、世界観の異なるアイテム同士を上手くスタイリングしています。
テキスタイルのハイセンスな組み合わせのバランス感覚は、ドリスにも負けていないかも知れません。
生地感とかも実際に見てみたいですが、今こういうブランドを取り扱ってくれるセレクトショップが日本にどれだけ存在するのか…
コレクションのスタイリングは、古着好きの方にも参考になるものだと思いますので、ご興味のある方はぜひ全てのルックをチェックしてみてください。
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GUCCI
当時低迷していたGUCCIを一躍トレンドセッターの座に復興させたアレッサンドロ・ミケーレが退任した後、“GUCCI Ancora”の合言葉のもとサバト・デ・サルノが就任したGUCCIは装飾主義だったミケーレ時代から一気に削ぎ落とされ、俗に言う「クワイエット・ラグジュアリー」(なんじゃそれ)というモード界の新トレンドを生み出しました。
個人的にサバトのGUCCIは、洗練されたデザインでとても素晴らしいなと思って見ていましたが、今はそういうベーシックの革新性が売れる時代じゃないんですね…
サバト就任から売上はガクッと下がっていき、GUCCI経営陣は2年と経たない任期でサバトの解任を決断しました。
ここから少し余談になるし長くなってしまいますが、先日メゾン・マルジェラのデザイナーを退任したジョン・ガリアーノのドキュメンタリー映画を観ました。
ガリアーノは若い頃、その抜群のセンスと独創的な服作りでロンドンコレクションに登場すると瞬く間にモード界から大きな注目を集めました。
彼のコレクションを見たいという業界人は多くいましたが、“普段着”として着用するには難しそうなガリアーノの服の売れ行きは業界の評価とは対照的に芳しくないものでした。
ガリアーノは資金難の為、コレクションを発表することを諦めたシーズンがありましたが、アナ・ウィンターなどモード界きっての有志達が彼のコレクションをバックアップすることを表明し、ガリアーノはそのお陰でなんとか服作りができたという状態でした。
そんな「売れる服」を作ることや「お金儲け」に興味のないガリアーノをジバンシィのデザイナーに抜擢したのは現LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン グループ)会長兼CEOのベルナール・アルノー氏でした。
LVMHも今は「お金儲け」のイメージが強いですが、当時はこういった人選もしてきたんです。
ガリアーノはジバンシィのデザイナーに就任した1年後、矢継ぎ早にディオールのクリエイティヴ・ディレクターに昇格しました。
ガリアーノが本格的にモード界で名声を確率させたのはこの頃です。
今のモード界には、今一度、売り上げを最重要視してデザイナーの進退を判断するのではなく、高い力量や創造性を持ったデザイナーを重要視した人選をしていただきたいです。
でも、実績のあるデザイナーの代わりにまだ一般的には無名に若いデザイナーが起用されている交代劇も一方ではあるので、グループの中でもある程度バランスを取っているのかも知れませんね。
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Jil Sander
ジル・サンダーにおいてルーシー&ルーク・メイヤー夫妻が成し遂げた功績も素晴らしいものだったと思います。
二人が現職に就任した2017年は、モード界ではストリート旋風が吹き荒れている時期でした。
ヴェトモンやオフホワイトなど、ストリート直系のスタイルでモード界に殴り込みをかけてくるブランドが大きな注目を集める中で、ジル・サンダーはDiorなどラグジュアリー畑出身のルーシーとSupremeでキャリアを積んだストリート畑のルークという、両輪を持ったデザイナー夫婦に白羽の矢を立てました。
二人によるジル・サンダーは、ほぼ同時期にセリーヌのデザイナーを退任したフィービー・ファイロから、モードにおいて行き場を失った“ニュー・ベーシック”愛好者層の受け皿のような役割も果たしていました。
今回のジル・サンダー退任は、フィービー期のセリーヌの最後のように売り上げの伸び代に見切りをつけられてのものなのかどうなのかは分かりませんが、他のメゾンでまだまだ彼らのクリエイションを見たいです。
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という感じで今回のコレクション雑感とさせていただきます。
本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧くださいませ!