Posted on 07.18.24

アメリカの写真家, Saul Leiterの写真集『The Centennial Retrospective』をお店の本棚に加えました。

 

 

本書は、ソール・ライター生誕100年を記念して、ソール・ライター財団が管理する膨大なアーカイブから編集した作品集となっています。

 

 

 

実は最近ソール・ライターのドキュメンタリー映画を観て、それで写真集が欲しくなったという経緯があります。

本当は、ドイツのシュタイデル社から出版された『EarlyColor』という写真集が欲しかったのですが、かなりのプレ値になっていたのでそちらは諦めました。

 

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ソール・ライターはもともと絵を描いていましたが、その後写真も撮り始めました。

彼がカメラマンを職業に選んだのは、単純に生計を立てるためでした。

 

生活の為に商業写真を撮り始めたところ、ファッション編集者から高く評価され、ファッション写真家として『Esquire』や『Harper’s Bazaar』などの雑誌でキャリアを重ねることになります。

しかし、彼は次第にファッション写真から距離を取るようになり、表舞台から彼の名前も消えていきました。

 

「有名人の写真よりも、雨粒に包まれた窓の方が余程面白い」

 

これがソール・ライターの生き方でした。

僕はその考え方と生き方に感動しました。

 

ソール・ライターは、ファッション写真を撮っているキャリアの間でも、その傍らでストリート写真を撮り続けました。

 

彼の撮った(商業的に撮られたものではない)個人的な写真は、彼が人生の晩年に差し掛かるまで長年日の目を見ることはありませんでしたが、2006年にシュタイデル社から最初の写真集『Early Color』が出版されると、1940年代後半にしてすでにカラー写真を極めていたその才能に広く注目が集まるようになりました。

ライターは再評価が高まるなか、2013年ニューヨークで死去します。

 

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人の人生において、何を成功とするかは人それぞれだと思います。

お金をたくさん増やすことを成功と感じる人もきっとたくさんいるし、多くの人の役に立つようなことができる人生もとても魅力的でしょう。

 

ですが、例え誰からも注目されずに質素に暮らしていたとしても、自分自身が納得し満足のいく生き方ができていれば、それも立派な成功なのだと思います。

そこには、ヴィム・ヴェンダース監督の映画『PERFECT DAYS』の主人公,平山(成功をおさめた父の後を継ぐ人生を選ばず、トイレ清掃員として質素に生きる)のような、自身が選択した生き方に対する葛藤のようなものが長い人生の中においては出てくることもあるのだろうと思いますが、それが人間らしさであり、その人間味がその人の魅力として滲み出てきます。

 

ソール・ライターは、自身の作品が周囲から評価されたり名声を得ることに関して、重要なことではないと歳をとるまで本当に興味を持たなかったのか、本当は心のどこかで自身の作品が世に出て評価されることを望んでいたのか、これは本人にしかわからないことです。

 

しかし彼の遺した作品を見ることが、ドキュメンタリー映画を観るよりも彼自身を知る一番の近道になるかも知れません。

 

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どれも本当に素敵で、本当に素晴らしい作品です。

こんな写真を撮れたら、どんなに幸せな気分になるでしょうか…

 

 

本書はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ!