『流転する街』
2024.12.13.
Posted on 12.13.24
お客様からご自身で作られたという写真集をいただきました。
タイトルは『流転する街』
1982年にゴッドフリー・レッジョという映像作家が『コヤニスカッツィ』という映画を作りました。
「コヤニスカッツィ」とは、ホピの言葉で「常軌を逸し、混乱した生活。平衡を失った世界」を指します。
このタイトルを見た時、その映画のことを少し思い浮かべました。
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こちらのお客様は、高校生から当店に通ってくださってて、当時から芸術やファッション,音楽などに強い興味を抱いている方でした。
写真も趣味にされてて、当店にカットしにいらしてくださる際もよくカメラを首からぶら下げてご来店くださっていました。
この写真集に収められている写真の中にも、もしかしたらその行き帰りに撮った写真もあるかも知れません。
そんな彼が、自費で初めて作った写真集です。
まだバリバリの20代でこの感性、素晴らしいと思います。
この写真集を持ってきてくださって、その後カットしてる時に、これまでは自分の感覚だけで撮ることが多かったけど、これからはもっと色々インプットの幅を増やしたいと言っていました。
でも、彼は川久保玲展がニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された時、それを見るためにわざわざNYまで旅行したり、まだ若いのに興味のあることはかなり掘り下げて調べていたりと、これまでももちろんインプットは十分にしている様子でした。
おそらく、これからは視覚的なインプットよりも史学や美学、哲学などの芸術教養的なインプットを重視したいという意味だと解釈しました。
それでも、現時点でも全く無知な感じはしないし、むしろタイトルと内容に込められた色んな感情の奥深ささえ感じます。
僕はこの一冊をぜひ購入させてほしいと言ったのですが、僕に渡したくて持ってきたから貰ってほしいと言われたので、そのお言葉に甘えさせていただくことにしました。
(それでも何度か食い下がったのですよ)
いつもカットしに来てくれて感謝してるのは、僕の方なのに。
せめてものお礼に少しは美容師らしく、スタイリング剤をプレゼントさせていただきました。
美容師という仕事が素晴らしいと思えるところのひとつに、美容師という関係性を通じて顧客様の人生と長期間に渡って交差できるところがあるということがあります。
若い頃、こんなことを話していた子が、今はこんなふうな考えを持った大人になっている。
そういう成長を傍らで見ることができるのはとても面白いですし、その成長が自分のことのように嬉しかったりします。
これらの写真を見て、素敵だなって思う人はたくさんいると思いますが、僕はそれだけじゃなくて彼とこれまで会話してきた思い出もあるので、とても感慨深い気持ちにもなります。
彼の作った写真集を見てて、目から涙が、鼻から鼻水までもが溢れ出てきそうになるのを歯を食いしばって必死に我慢しながら鑑賞させていただいています。
彼にはこれからも更に素晴らしい活躍を期待しています。
当店のお客様がたにもぜひ見ていただきたいと思っているので、ご興味のある方はご来店時にぜひご覧になってみてください!