gap PRESS vol.183
2025.05.03.
Posted on 05.03.25
gap PRESSの最新号は、2025-26 Autumn & Winter MILAN/NY 特集号です。
表紙は、LVMHやケリングの二大グループが失速する中、MIU MIUと共にグループで絶好調のPRADAのコレクションのものです。
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PRADA
上記のモード界の二大グループが大きく売り上げを伸ばして成長していた頃(数年前)、PRADAグループは苦戦を強いられていました。
その頃は、コロナもあってモード界はベーシック回帰の大人っぽい服作りがトレンドでした。
ミウッチャ・プラダは長年、PRADAとMIU MIUというふたつのブランドを手掛けていましたが、そのふたつのブランドでもPRADAは大人女性の為のトラッドで本質的な服作り、対してMIU MIUは若い世代を意識したフレッシュでキャッチーな服作りと棲み分けがされていました。
ですが、大人びたスタイリングが主流となる時期が長くなると、MIU MIUも戸惑いながら大人びたデザインのコレクションを発表していくようになり、次第にPRADAとの距離が近くなってしまうことで、それぞれのブランドの魅力が伝わりにくい悪循環に陥っていきました。
そんな窮地のプラダグループに救世主となったのがラフ・シモンズの加入です。
PRADAにラフが加入したことで、今度は上品で大人なPRADAにデザイナーズブランド仕込みのカッティングエッジなデザイン性とユースカルチャーなアプローチが入って、とても新鮮な風が吹き込みました。
大人びたエレガンスとストリートの感性がハイブリットされ、PRADA自体も若返り、一気にトレンドセッターのポジションを奪います。
そしてラフに大いに刺激を受けたであろうミウッチャの手掛けるもうひとつのブランドMIU MIUも、その頃から一時の迷いから解き放たれたようにデザインに革新性が戻り、スマッシュヒットを連発していきました。
なぜ今回、PRADAの近況を改めて振り返るようなことを書いたかというと、MIU MIUとプラダグループの快進撃にはもう一人の重要人物がいたからです。
その人物のことは次のVERSACEのところに書きます。
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VERSACE
ブランドの創設者ジャンニ・ヴェルサーチェの妹で、ジャンニの死後20年にわたりVERSACEをデザイナーとして牽引してきたドナテラ・ヴェルサーチェの退任が先日発表されました。
その水面下では、いくつかの戦略的な動きがありました。
まず、ドナテラ・ヴェルサーチェの退任が発表され、それとほぼ同時に後任デザイナーにダリオ・ヴィターレという人物が就任することが発表されました。
このダリオ・ヴィターレは、直前までMIU MIUのデザイン・ディレクターを務めていました。
当店には、ヨーロッパのモードの最前線で仕事されているお客様も何人かいらっしゃって、その方達からMIU MIUの快進撃の陰にはこのダリオがいるということを聞いていました。
以前こちらで、MIU MIUの躍進には天才スタイリストのロッタ・ヴォルコヴァの存在が大きいと書きましたが、このダリオはMIU MIUにとってロッタ以上の存在なのかも知れません。
そしてその後、プラダグループによるVERSACE買収のニュースが発表されました。
つまりプラダグループは、新しく傘下に入るヴェルサーチェに(ミウッチャとラフ以外で)一番信頼のおける人物であるダリオを送り込んだということになります。
ヴェルサーチェが来シーズンどんなコレクションを見せてくれるのか、今から非常に楽しみです。
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JIL SANDER
2017年4月から8年に渡ってジル・サンダーのクリエイティヴ・ディレクターを務めたルーシー&ルーク・メイヤー夫妻も、このコレクションを最後に退任することが発表されました。
二人のクリエイションは相変わらず素晴らしいですが、他のメゾンのデザイナー交代劇の多くと同じく売り上げの低迷も今回の退任の背景にあったと噂されています。
JIL SANDERは、創業者のジル・サンダー自身もブランドから追放された歴史があります。
柳井社長、もしくはその側近の方々、もし万が一このブログを目にされたら、ぜひルーシー&ルークにユニクロコラボのオファーを出してみてください。
ルメール、クレアに加えてルーシー&ルークまで手駒にできれば、ベーシックファッションにおいては(それでもモード界には敵わないと思いますが)ユニクロが最強になる時代が本当に来るかも知れません。
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という感じのコレクション雑感でした。
本誌はお店に置いていますので、ご興味のある方は待ち時間などにぜひご覧くださいませ!