Posted on 01.15.12

Chanel「J12」シリーズ誕生10周年を記念して、2010年に限定モデルとして発売された『J12 レトログラード ミステリユーズ』

“ミステリアス”な外観と仕掛けを持つ、シャネルならではのトゥールビヨンモデル。

人間はおろか、時間の神であるクロノスでさえも、この時計の針の動きを見たときの衝撃は一生忘れないでしょう。

開発・製造をともに行ったのは、スイスの時計作りの頂点の名門であるオーデマ ピゲ傘下の複雑時計開発製作工房、「ルノー・エ・パピ」。

シャネルはこのモデルで「ケースの完璧なる丸型」に取り組んだのである。

しかし、ケースサイドにリューズがある限り、それは不可能なワケで、ここからが職人によるミッション・インポッシブルを超越する腕のみせどころなのです。

結果、ネックとなってたリューズを文字盤に配置!しかし、当然ながらリューズが邪魔をして分針が前に進めない。ならば分針を2時~4時位置の10分間だけ逆回転させてリューズを回避してしまおう、という大胆不敵な発想を採用。

なんと、その10分間の間に、反時計方向に10分の位置から20分の位置まで300度もゆっくりと移動、つまり逆回転(レトログラード運針)をして20分の位置に移動し、それ以降の分表示に備えるという「時計じかけのオレンジ」でお馴染みのスタンリー・キューブリックもビックリな仕掛け!

複雑極まりない機構開発力も凄いですが、己の時計美学を貫く姿勢が何よりも素晴らしい。

傑作です。