YVES SAINT LAURENT
2014.09.09.
Posted on 09.09.14
早速、観てきました!
“モードの帝王”と謳われたデザイナー,イヴ・サンローランの伝記映画『YVES SAINT LAURENT』
本作は、サンローランのディオール時代~自身のメゾンの最盛期を中心に構成されています。
僕は、この映画をとても楽しみにしていたのですが、その理由は最も好きなデザイナーがイヴ・サンローランだからです。
イヴ・サンローランという人は、ファッションのデザイナーの中でも最も芸術性に優れたデザイナーの一人です。
彼のデザインする洋服は、気品に満ちています。否、サンローラン本人が気品に満ちあふれているのです。
この映画でサンローラン役を演じたピエール・ニネは、見た目も本人にソックリですが、それ以上に彼の仕草や繊細な立ち振る舞いがサンローラン本人を彷彿とさせます。
彼なしにこの映画の成功はなかったと思える程に、その演技は素晴らしかったです。
そして、この映画のもうひとつの不可欠な要素が、イヴ・サンローラン財団の全面協力のもと使用された過去のアーカイヴ作品群です。
当時の様子を再現したコレクションのシーンは、YSLの衣装提供によって目を見張るほどの美しさをもたらしています。
冒頭にも書きましたが、イヴ・サンローランの洋服の魅力は、パリジャンよりも(サンローランはアルジェリア人)“パリ・シック”であり、何よりもエレガントで気品に溢れているところです。
それはサンローラン自身の魅力でもあり、何よりもこの才能は天性のものであり、決して他人に真似できるものではないのです。
目立つことを好まない姿も、彼の大きな魅力のひとつでしょう。
現在、サンローランのデザイナーを務めているエディ・スリマンも素晴らしいデザイナーですが、イヴ・サンローランの気品はやはりイヴ・サンローラン本人にしか作りえません。
メゾンが、イヴ・サンローランのオートクチュール部門を彼の引退と共に閉鎖したのは、そういった理由からです。
映画では、サンローランの仕事ぶりというよりは、プライベートな部分に重きを置いて作られています。
それ故に、生涯のパートナーであるピエール・ベルジェとの関係性がわかりやすく描かれています。
ガラス細工のように繊細で不安定な心を持つイヴ・サンローランと、そんな彼を経済的にも精神的にも支えたピエール・ベルジェ。
服をデザインすること以外は何も出来ない(小切手を切ることもやっと)サンローランのそれ以外のことをベルジェは一手に引き受けました。
ベルジェなしにサンローランのここまでの成功はあり得ませんでした。
そんなベルジェ役を演じたギョーム・ガリエンヌの演技もまた見事でした。
サンローランが心から笑うのは、年に2回でした。
春と秋のコレクションが終わった直後だけ。
また次の日から新たなクリエーションの苦悩に悩まされ続けるのです。
しかし、無情にもその苦悩が大きくなるほどに、サンローランの洋服はさらに輝きを増し、そして、更なる苦しみが彼を襲うのです。
自分は自分で思うに、ファッションでオシャレをするのが好きというよりは、ファッションが創り出すその芸術性そのものに惹かれているのだと思います。
そして、イヴ・サンローラン本人こそ、メゾンが産み出した究極の芸術品だと僕は思ってます。
ファッションが好きな方だけではなく、芸術がお好きな方も、絶対に観た方が良い映画だと思いました。