ノンシリコン再考
2012.07.06.
Posted on 07.06.12
いつも悪ふざけが過ぎるブログばっかなので、今回はマジメに普段はみせていない美容師らしいところを見せつけてやろうと、鼻息をフンフンさせて意気込んでおります!
ということで、タイトルにある通り、今回はノンシリコンシャンプーについて考えを述べたいと考えております。
ここ数年で日本でもシャンプーは「オーガニック」「ナチュラル」「ノンシリコン」というジャンルのものを選ぶという方がかなり増えたな、という感じがあります。
巷のドラッグストアなんかでも、それらのフレーズが店内を踊り、お客様にアピールしています。
その言葉から「安全」「安心」「髪の毛に優しい」といった類いのイメージを持つ方は多いのではないでしょうか?
しかし実際は、「オーガニックだから安心」だとか「ノンシリコンだからこだわってる」と、そう単純にはいかない現実があります。
もちろんそれらのシャンプーも髪の毛のことを考えて作られているのは間違いないのですが、そのことを詳しく知るには、そもそもシリコンはなぜシャンプーに配合されるようになったか?というところから紐解く必要があります。
今回の記事を書くにあたって間違った事を伝えるわけにはいかないので、自分自身詳しくシリコン事情を把握するべく、いつもお世話になってる美容メーカーの科学者(開発者)さんに特別にお時間を作ってもらいました。
なので、以下の内容は「安全」「安心」「髪の毛に優しい」…たぶん。。
まず、ヘアケア製品におけるシリコンの役割とは何か?
シリコンは毛髪表面をコーティングし、疑似キューティクルとして働き、毛髪の絡まりを防ぐ役割があります。
そのおかげで指通りのいい、なめらかな髪が実現するのです。
ゆえにシリコンは元来、トリートメントやコンディショナーに配合されるものです。
シリコンがシャンプーにも配合されるようになったのは、シャンプー後の洗い上がりの「ゴワつき」「パサつき」「キシみ」を気にする女性が増えたからです。
「シャンプーだけでもツルッとなって欲しい…」
シャンプーにシリコン配合を要求したのは、消費者でした。
シリコン配合のシャンプーは飛ぶように売れ、使われるシリコンの種類も多様化しました。
シャンプーにシリコンを配合するというのは、化粧品でいうと、洗顔料にファンデーションを配合するようなもの。
汚れを落とす役割の製品に、コーティング剤を配合してしまっているのです。
シリコン配合のヘアケア製品における弊害としては、
「毛穴がつまる」「カラーやパーマに影響がある」
このあたりがノンシリコンへの移行の主だった原因です。
しかし、シリコン配合シャンプーの全てが上記のようになるわけではありません。
シリコンの種類の中でも、特に残留性が強く、サッと洗い流すだけでは頭皮や髪の毛に残ってしまうような、一部の強力なシリコンが原因でした。
厄介なのが、こういった種類のシリコンの方が、ダメージ毛にも効果的で、質感の違いを実感しやすく、商品も売れやすいのです。
毎日のシャンプーやリンスでこの残留が何層にも重なることで、“ビルドアップ”という現象を引き起こします。
こうなると、カラーやパーマの浸透が悪くなり、美容室での施術に影響が出ます。
「シリコンは悪だ」と唱えたのは美容師でした。
しかし、髪の毛のダメージ度合いに対して適正な配合のシリコンは“ビルドアップ”することなく、キューティクル上に皮膜を作るので、シャンプーやブラッシング時の摩擦やドライヤーの熱から髪を守り、乾燥を防いでくれるメリットもあります。
薬理作用も少なく、多少の落とし残しは問題ありません。
トリートメントを頭皮につけるのは問題ですが、シャンプーでシリコンが毛穴に詰まって髪が生えなくなることはありません。
研究者のトップの方でも、「シリコン以外で、安全で効果の出る成分はない」と言います。
たんぱく質を含まないシリコンは、たんぱくアレルギーを起こしません。
つまり、シリコンが全て悪いというわけではないのです。
そして、世間のオーガニックブームとも重なり、シャンプーはノンシリコンやオーガニックが求められていきます。
肝心なのは、ノンシリコンやオーガニックという表記は“成分表示”ではないということ。
これらのシャンプーには、シリコンを使わずにツルッとさせるために何か「ツルッとさせるもの」を配合しているのです。
それが髪の毛にとって“良いもの”なのか“悪いもの”なのか…
そこが肝心です。
オーガニックシャンプーにしてもそうです。
オーガニック認証を取っている成分を少しでも配合していれば、オーガニックシャンプーと呼べるのですから…
専門家によると、某有名メーカーから出てるオーガニックシャンプーの成分にも、肌に良いものを追求してオーガニック成分を使っている人なら絶対に使用しないような肌に良くない成分がたくさん含まれている、と言います。
オーガニックと謳ってる商品には、かなりグレーなものも多数存在します。
それは、オーガニックにおける基準が、オーガニック認証団体によっても異なるから生じている問題です。
このあたりの問題は、世界基準で厳しく統一させようとした動きがあるみたいなので、今出てる“オーガニックシャンプー”は、近い将来ネーミングの変更を余儀なくされる商品も少なくないでしょう。
また、オーガニックの成分であるハーブも天然のものですので、収穫時期や気候などの影響を受けやすく、実際にオーガニック成分が原因でアレルギー反応が出たこともあります。
長々と書かせていただきましたが、大切なのは「ノンシリコン」だからいい、「オーガニック」だから安心、ではないのです。
これらは単に商品を売る為の「マーケティング用語」なのです。
それらの言葉に踊らされることなく、「なぜその成分が入っているのか?」を一度立ち止まってよく考えることが、本当に自分に合ったものかを判断でき、“安心”してその製品を使う為の近道ではないかと思います。
どんなシャンプーを使っていいかわからない、という方はスタッフにお尋ねください。
本来、そのアドバイスをすることは美容師の役目なのですから。
きっと自分に合ったシャンプーが見つかる筈です。
追記:
日本でのオーガニック製品の捉えられ方は、本文中にも書きましたが「安心感」や「肌や髪に対する優しさ」をニーズにされている場合がかなり多くを占めています。ヨーロッパなどの海外でもオーガニック製品は人気ですが、使っている方の意識は日本とはまた別のところにあると聞きました。
シリコンは、生分解性が悪く、環境に少なからず悪影響を与えます。
その点、ちゃんとしたオーガニックやノンシリコンのシャンプーは、土の上に撒いても、そのほとんどが地球に還ります。
このような理由で、環境への配慮でノンシリコンのシャンプーを使用している外国人の割合は、日本人のそれより圧倒的に多いです。
環境に良いなら髪の毛がパサパサでも構わない。
日本人も見習わなければなりません。
heal the world!!!
ご拝聴ありがとうございました!
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Micheal Jackson—Heal The World